↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/38

15 広場の騒動2


 エメリナは自警団の黒いベストを着て、今日もふわふわした金髪を結い上げていた。

 愛らしい目をきりっと吊り上げて、乱闘している二人に近づいて行く。軽やかな足取りに、見ている私が不安になっちゃったわ。


 だってエメリナはまだ見習いよ。見習いが一人で見回りをしているはずがないの。

 それなのにぐるっと見て見ても自警団の人が他にいない……という事は、エメリナは見回りじゃなくて偶然広場に来たってこと。


 いくら町の人たち全員が顔見知りでも、暴れている筋肉質な男性をエメリナ一人が止めるのは危ないわ。

 私はそっと近くにいた子供に、自警団へお遣いを頼んだ。お駄賃に今朝焼いたクッキーをあげたら、歓声を上げて走って行ってくれた。


「えっ、えめりな……!」


 ……ああ、でも相手はロドルフォだから、大丈夫かしら。


 つかつか近寄って来たエメリナに気付いたロドルフォが、顔を真っ赤にして動きを止める。巨体をひゅんっと飛び上がらせて、叱られる手前の犬のように縮こまった。暴れていたもう一人も、エメリナを見てぽうっと頬を染めている。


 あらまあ、大丈夫かもしれないわ。


「またアンタなの? よその人に暴力を振るっちゃいけないって何度も言っているじゃない」

「だ、だってこいつ初期装備で自殺願望者な初心者なんだぜ……このまま見送れば死んじまうよ。俺は親切心から言ってやったんだぜ!?」

「初心者じゃねぇっつってんだろやんのかコノヤ」

「俺とエメリナの会話を邪魔すんなコラァ!!」

「ゴボコラァッ」

「こらロドルフォ!」


 初心者さんが地面に沈んじゃったわ。


 あの様子だと、やっぱり山に行くのは無理ね。

 ロドルフォの言うとおり、自殺行為だわ。戦う術のない私でもわかっちゃう。

 何より、許可も貰えないと思うわ。


 山に入るには、騎士団の許可がいる。もちろんこれも、無闇に死者を出さないための処置よ。山の幸の採取じゃなくて強い魔物を求めるなら、難易度も目的もまったく違うから、より厳しい条件になるわ。


 無許可で無理やり推し入る様な輩の場合、その場で拘束される決まりよ。

 その場合、駐屯所で拘束されて、隣町に送り返されるわ。

 ちなみに町内で問題を起こした場合、宿泊先は駐屯所から自警団本部になるわ。町内は自警団で取り締まる決まりだもの。


 今回は町内で気絶させてしまったから、自警団本部に引き取られるはず。

 乱暴してしまったのはロドルフォだけど、明らかに経験値が足りないから、自警団に注意されて前の町に戻されるわね。多分。

 明らかに経験値が足りない状態の人は、その人の命を守るためにも、そういった扱いが許されているの。

 人命のためは勿論だけれど……その人が魔物に食べられて、それを被害者の知人が町の所為だと言い出したら大変だから。


 ……とりあえず、命知らずさんが気絶したから、この騒動も終わりかしら。

 これ以上騒ぎが拡大するのはよくないわ。そろそろ声を掛けましょう。


 そう思ったのだけれど。


「いったい何の騒ぎですの」

「あ、プリシラ」


 あら、ちょっと遅かったわ。


 堂々と胸を張って現れたのは、町長の娘のプリシラちゃん。

 くるくる巻き毛の金髪に、キリッとした青い目をした、この町のお姫様よ。


 私と同い年の十八歳で、彼女も幼馴染みの一人。昔は立場も関係なかったから良く一緒に遊んだわ。

 今は、身分差……というか、プリシラちゃんの複雑な心境から、あまり一緒にいられないのだけれど。

 プリシラちゃんは周囲を見渡して、倒れている初心者さんを見て……キッとエメリナを睨んだ。


「騒がしいと思ったらまたあなたですの? もっと落ち着いて行動出来ませんの?」

「これは私じゃなくてロドルフォが……」

「その男はあなたの手下みたいなものでしょう。もっとしっかり躾けておいてくださいな」

「私の手下じゃないんだけど……」

「エメリナの手下……てへへ」

「なんでまんざらでもなさそうなの」


 それはロドルフォがエメリナを大好きだからね。

 わかっていないのはエメリナだけね。周囲の視線はとっても生暖かいわ。


「ふん、貴方にはその男みたいなのがお似合いですわ。セリオより絶対そっちがお似合いよ」

「なんでセリオが出てきたの?」


 あ、いけないわ。

 とても不思議そうに首を傾げるエメリナに、プリシラちゃんがむぎぎっと拳を握った。


「素知らぬ顔をして……わたくしがセリオに声をかけるといつもいつも邪魔をするのはあなたでしょう!」

「邪魔ってなにかしたっけ?」

「しています! 昔からわたくしがセリオに話しかけようとする度、あなたが間に割って入って……! おかげさまで、わたくしセリオとまともに話せたことがありませんわぁ!」

「えー、そうかな……?」


 逆なのよねぇ。

 エメリナが間に割って入るのではなくて、セリオがエメリナの方に移動しちゃうの。


 私達の世代で、有望なお(・)婿(・)さ(・)ん(・)候補は、セリオくらいよ。

 セリオは長男だけれど、継ぐような家業もないので、家持ちの女性……私とか、プリシラちゃんのお婿さんにはとても都合が良い。セリオ以外だと、年上を狙うならとても年が離れちゃう。もしくは年下ね。

 お婿さん探しに必死なプリシラちゃんはセリオ狙いなのだけど、相手が悪いと思うわ。


 だってセリオが誰に片想いしているかなんて、見ていれば分かるもの。

 プリシラちゃんも本当はわかっているけれど、納得いかないのよね。

 当の本人、エメリナがまったくわかっていないから。


 これでエメリナとセリオが想い合っているなら納得できたけれど、セリオの一方通行だから、プリシラちゃんはチャンスがあるのではと思ってしまうのよね。

 プリシラちゃんはツンツンしているけれど、この町が大好きな優しい子。

 次期町長として、できれば町の中からお婿さんを見つけたいのに、条件に合ったセリオはエメリナに夢中。


 理不尽ですわーって嘆いているの、大人なら知っているわ。

 若い子達はわかっていないけれど、大人達がこの子達を見守る視線、とても生暖かいもの。

 私? 私は若者だけれど、中身はおばあちゃんだから。見守る方ねぇ。


 本当に可愛くて、困った子達だわ。


むぎむぎ地団駄踏んでいるプリシラちゃん。

プリシラは幼馴染みでお友達だと思っているエメリナ。

友情もちゃんとあるから余計素直になれないのねと見守るアニシア。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。