10 自警団団長
現れたのはがっちりとした長身で、自警団を表す真っ黒いベストを着ている男性。
刈り上げられた青い髪に、切れ長の水色の瞳。
鋭く冷たい色彩の厳しい顔立ちの男性だけど、目が合うとニカリと人懐っこく笑ってくれた。
テオさんはトリスの自警団団長。エメリナやセリオがいつも大変お世話になっています。
勿論、トリス在住の人たちはみんなお世話になっているのだけれど。
彼は五年ほど前に、訳あってトリスに移り住んだ移住者よ。その頃から自警団に入り、あっという間に彼らをまとめ上げたの。過ごした年数は少ないけれど、今ではしっかり町の一員として、自警団団長として、敬われているわ。
「おう、お疲れさん。こいつと同じのと、ビール頼む」
「はい。オスワルド先生はビールどうします?」
「今日はやめとくよ」
「わかりました」
ああ、テオさんにもお茶を持ってこないと。
注文を調理場に伝えて、お茶とビールを持ってカウンターへ。氷室があるから、冷えたビールもすぐ出せる。
残念ながら、水よりお酒の方が優先度高いのよね。サービスと有料の差ね。
お茶とビールを渡せば、真っ先にビールを飲み干す。ぷはぁっと、小気味いい音がした。
世界共通なのかしらこの動作。
「あ~~~生き返る!」
世界共通なのかしらこの反応。
「お忙しそうだねぇ団長殿」
「他人事かよ医者モドキ。はずれだったらお前も大忙しだからな」
「こればかりは相性だからどうしようもないねぇ」
そうね、相性だから仕方がないわ。
テオさんが忙しいのは、新しい巡回騎士たちを迎え入れる準備のため。
勿論現在駐屯中の騎士たちが中心に引き継ぎを行うけれど、町の中の決まりや自警団との連携を説明しなくてはならない。一年という短い期間だけれど、田舎町だけど、不備があれば騒動の種になるもの。
騎士の役目は魔物の討伐。町の安全の為、自警団も同じく討伐を行う……結果、連携が必要になる、のだけれど。
必要なのだけれど、よそ者だという意識が抜けきれなくて、巡回騎士と自警団の中は微妙に悪いわ。
巡回騎士の役割の一つ、町の情報収集……不穏な影が無いか監視するという意味合いがあるのが不和の原因の一つね。
巡回騎士は各地を回るから、血気盛んな若手が多いのも一つ。
人柄によっては自警団を騎士崩れと侮ることがもう一つよ。
どんな騎士が配属されるかわからないから、その時にならないと上手く連携できるかわからない……それを、当たり外れという。
ちなみに、去年は当たり年。
班長は生真面目で、副班長は剽軽で、自警団を侮る様な人もいなかったわ。
だけど、今年の人たちもそうだとは限らない。
騎士と自警団の仲が悪いと血を見る喧嘩になるから、その場合はオスワルド先生が大忙しになるの。
「エメリナもいるからな。変な奴らが来ないことを願うぜ」
「そうだね。まあ何があっても彼女を優先して治療するから安心してくれ。勿論君が大怪我をしていても彼女を優先するよ」
「安心出来ねぇ」
自警団見習いのエメリナ。
女の子の自警団員は、きっと目立ってしまう。
マルコスさんたちはエメリナを可愛がってくれたけど、やっぱり心配は尽きないわね。
お互いを小突き合う仲良しな大人の会話を聞きながら、生姜焼き定食を二つ、両手に持つ。
町の為に頑張っている彼らの為に、美味しい夕飯を速やかに届けるわ。
「お待たせしました。生姜焼き定食です」
こちらを見た二人が待ってましたと笑う。
その笑顔に、私もにっこり笑った。
一年毎恒例の、平和な田舎町の環境変化。
まさか今年が―――平和な町に大きな変化を持ってくるとは、思ってもみなかったの。
のんびり過ぎる日々、じわじわやって来る何か




