第四話 《呼ばれる名前》
レオンの容体が再び落ち着いたのは、収容から七時間ほどが過ぎた頃だった。
胸腔へ入れた管から新たな出血はなく、押し潰されていた肺も少しずつ広がっている。右脚の腫れは依然として強かったが、足先への血流は途切れていなかった。
診工守の観測板には注意を促す表示が残っている。それでも、収容された直後のように、わずかな処置の遅れが命へ直結する状態ではなくなっていた。
《患者識別名:レオン・アルヴェイン》
《生命反応:安定傾向》
《胸腔内出血:再発なし》
《肺膨張:回復継続》
《右下肢末端血流:低下・維持》
《深界瘴気汚染:許容範囲まで低下》
私は医療台の横へ置いた椅子に座り、レオンの呼吸を見守っていた。
この施設で目を覚ましてから、誰かの寝息を聞くのは初めてだった。
縫工守たちも音は立てる。駆動部が回り、金属の脚が床へ触れ、作業中には小さな振動も伝わってくる。しかし、あれは呼吸ではない。
眠りが深くなって息がゆっくりになることもなければ、痛みに眉を寄せることもない。命令された作業を終えれば、決められた場所へ戻って静かに停止する。
灰角兎にも呼吸はあった。治療している間、小さな胸が上下していることを何度も確認したが、あれは言葉を話さず、傷が治れば森へ帰っていった。
目の前にいるのは人間だった。
私が人間だった頃と同じように名前を持ち、仲間を心配し、怖ければ怯え、分からないことがあれば質問する。助けられたことを理解し、私へ礼まで言った。
記憶の中には大勢の人間が残っている。
家族の顔も覚えている。大学の講義室で隣に座っていた学生の声も、駅のホームに流れていた案内も、店員との短いやり取りも思い出せる。
けれど、それらはすでに遠かった。
石棺の中で目を覚ましてから私が見てきたのは、洞窟の壁と灰色の森、魔獣、それから壊れた施設だけだった。誰にも名前を呼ばれず、必要な言葉を交わす相手さえいなかった。
独り言は増えた。作業個体へ話しかけることも増えた。それでも、返事をしてくれる者はいなかった。
レオンの瞼がわずかに動いた。
私は椅子から身体を起こした。
「起きる?」
閉じていた目がゆっくり開く。
視線はしばらく白い天井をさまよい、天井から伸びる透明な管と、傍らで待機している診工守を追ったあと、私の顔へ向いた。
焦点が合う。
誰かの目が、はっきりと私を見ていた。
それだけのことなのに、少し落ち着かなかった。
「まだ同じ場所か」
レオンの声は掠れていたが、最初に目を覚ました時より聞き取りやすい。
「うん」
「夢ではなかったらしいな」
「夢なら怪我もないと思う」
「それもそうか」
レオンは右脚を見ようとして身体を動かした。胸へ痛みが走ったらしく、すぐに息を止めて顔を歪める。
私は肩へ手を置いた。
「動かないで」
「前にも聞いた」
「守ってない」
「自分の身体を確認したいだけだ」
私は医療台の角度を少し上げた。
胸の管へ負担がかからない位置で止め、背中へ畳んだ布を挟む。レオンはようやく、固定された右脚を見られるようになった。
膝から下は厚い固定具で覆われ、腫れた足先だけが外へ出ている。
「脚は残っているんだな」
「切ってない」
「感覚は?」
「私に聞かれても分からない」
レオンはわずかに笑った。
「確かにそうだ」
私は足先へ指を当てた。
「ここ、分かる?」
「分かる」
指を少し横へ移す。
「ここは?」
「触られているのは分かる。ただ、左脚より遠い感じがする」
感覚は残っている。診工守の表示と同じ結果だった。
「悪くなってない」
「良くなっているのか?」
「少しずつ」
「歩けるかは?」
「まだ分からない」
私は期待させるようなことを言わなかった。
骨の位置は戻した。足先へも血は流れている。それでも、押し潰された筋肉と神経がどれほど回復するかは、今の私にも診工守にも断定できない。
レオンは固定具を見たまま、静かに息を吐いた。
「切断を免れただけでも十分だ」
「歩けるようにもする」
「言い切るんだな」
「するつもり」
「できるとは言わないのか」
「分からないから」
レオンは私を見た。
「正直だな」
「嘘、苦手」
「それは前にも聞いた気がする」
会話が続き、返事が返ってくる。
一人でいた頃は、どれほど広い部屋を見つけても、自分が使う場所だけを決めればよかった。椅子も机も一つで足りたし、食器を二つ並べる意味もなかった。
今は医療台の上に人間がいる。
私が言葉を発すれば、考えたあとで別の言葉が返ってくる。
少し嬉しかった。
ただ、どう振る舞えばいいのかは分からなかった。
「お腹、空いた?」
「少し」
「作る」
椅子から立ち上がった時、レオンの視線が一瞬だけ下へ動いた。
私はその動きを追い、自分の服装を見た。
着ているのは白いシャツ一枚だけだった。丈は太腿の上までしかなく、椅子へ座っていたせいで裾が少し上がっている。下着も着けていない。
一人で暮らしている間は、気にしたことがなかった。
作業個体は私の身体を見ても反応しない。灰の森では枝や汚れを防ぐために服を着ていたが、家の中で身体を隠す理由はなかった。
むしろ、下着や身体を覆う服を着れば《裸族》の効果が止まり、身体と魔力の操作にわずかな違和感が出る。
今まで問題になる相手がいなかっただけだった。
私はシャツの裾を引いた。
「見た?」
レオンはすぐ天井へ視線を戻した。
「見ていない」
「見た顔してる」
「見えてしまっただけだ」
「同じ」
「怪我人を問い詰める話ではないと思うが」
私は裾を押さえたまま、少し考えた。
見られたこと自体を嫌だとは感じない。ただ、レオンが困っていることは分かった。
「気になる?」
「俺が気にするというより、君が気にした方がいい」
「一人だったから」
「今は一人ではない」
その言葉で、裾を押さえていた指が止まった。
今は一人ではない。
治療室に患者がいる。私を見て、言葉を返し、服装まで気にする人間がいる。
それは少し面倒で、同時に悪くなかった。
「何か着る」
「助かる」
「そんなに?」
「目のやり場に困る」
「赤い目だから?」
「脚の話だ」
「脚は普通」
「そういう問題ではない」
レオンは顔を背けていた。
日に焼けた頬が、失血とは別の理由で少し赤く見える。
私は自分の脚を見た。
白く、細く、長い。
施設の水面や磨いた金属へ映した時にも、今の身体が綺麗であることは分かっていた。人間だった頃の自分とは比べられないほど整っている。
けれど、他人から見られるのは初めてだった。
「綺麗?」
レオンがこちらを見る。
「何が」
「脚」
「なぜ俺に聞く」
「自分しか見たことないから」
レオンはすぐには答えなかった。
視線を合わせたまま数秒黙り、最後には諦めたように息を吐く。
「綺麗だと思う」
「そう」
「それだけか?」
「確認したかった」
「確認できたなら、隠してくれ」
「分かった」
私は《影蔵》から薄い外套を取り出し、腰へ巻いた。
その瞬間、身体がわずかに重くなる。
《裸族 Lv.1》
《発動条件を満たしていません》
《効果停止》
私は眉を寄せた。
「やっぱり嫌」
「何がだ」
「服を増やすと弱くなる」
「服装で能力が変わるのか?」
「《裸族》」
レオンは黙った。
「聞かなかったことにしてもいいか」
「駄目?」
「名前からして、説明を受けるのが怖い」
「服を着てないと強くなる」
「説明されると余計に困るな」
「便利なのに」
レオンの口元がわずかに緩んでいる。
笑われている気がした。
「何」
「吸血鬼にも変な技能があるんだなと思っただけだ」
「勝手に生えた」
「ますます怖い」
吸血鬼という言葉が、少し引っかかった。
レオンが目を覚ました時、私を見て明らかに怯えていた。赤い目と血糸を見ただけで、何者なのかを察したようにも見えた。
「吸血鬼、見たことある?」
レオンの表情から笑みが消えた。
「ない」
「知ってるのに?」
「探索者向けの記録や、神殿の講義で聞いたことがあるだけだ。本物を見た人間は少ない」
「何て書いてある?」
レオンは私を見たまま、少し答えを迷った。
「聞きたいのか?」
「うん」
「気分のいい話ではない」
「知らない方が困る」
レオンは小さく息を吐いた。
「人間の姿をした魔物だと教えられる」
予想していた言葉だった。
「人間の集落へ紛れ込み、油断した相手から血を奪う。傷を負っても短時間で再生し、血を使う術や、人の心を惑わせる力を持つ個体もいるらしい」
「惑わせる?」
「魅了だ。見た目や声で警戒を解かせるとも、魔術で意思を奪うとも言われている」
レオンの視線が、私の顔へ向けられる。
「血を与えた人間を眷属へ変え、自分に従わせるという記録もある」
「私の血は入れてない」
「分かっている」
「人間の血も飲んでない」
「それも聞いた」
レオンは一度言葉を切った。
「探索者組合では、吸血鬼らしき存在へ遭遇した場合、単独で交戦するなと教えられる。距離を取り、可能なら逃げ、組合と神殿へ報告する」
「見つけたら殺す?」
「人を襲った個体なら、討伐対象になる」
「襲ってなくても?」
「街の近くに潜んでいれば、危険視はされるだろう。吸血鬼が人間を襲わずに暮らしているという記録は、少なくとも俺は読んだことがない」
それなら、地上へ出たところで歓迎されることはない。
赤い目も白い肌も隠しにくい。牙を見られれば、言い逃れもできない。
「私を見たら?」
「多くの人間は、先に武器を抜くと思う」
「レオンも?」
レオンはすぐには答えなかった。
医療台の上にいる今は、武器を持っていない。持っていた短剣も折れ、防具も外されている。
「最初に目を覚ました時、剣が手元にあれば抜こうとしたかもしれない」
「今は?」
「抜かない」
「なんで?」
「君が俺を助けたからだ」
レオンは私の指先を見た。
「吸血鬼の記録には、人間の胸へ管を入れて呼吸を戻し、潰れた脚を残そうとした個体の話はない。自分の血を使って傷を縫い、患者へ食事を作ろうとする話も聞いたことがない」
「普通と違う?」
「少なくとも、俺が知っている吸血鬼とは違う」
「でも怖い?」
レオンは少し考えた。
「怖くないと言えば嘘になる」
「そう」
「ただ、何をするか分からないから怖いというより、知っている話と君の行動が合わないから戸惑っている」
「私も分からない」
「既存の吸血種とは一致しないと言っていたな」
「うん」
施設は私を吸血鬼として認識しながら、既存の吸血種とは一致しないと判定している。何が違うのかは、まだ分からない。
「目を覚ました時、食べられると思った?」
「助けられたのか、後で食べるために保存されたのか判断できなかった」
「保存」
少し嫌だった。
「患者なのに」
「今は分かっている」
「本当に?」
「食料へ名前を聞き、仲間の安否を伝え、脚を残す約束までする必要はないだろう」
「約束はしてない。するつもりって言った」
「そこは正確なんだな」
レオンの表情がわずかに緩んだ。
私は外套の結び目へ触れた。
地上へ出れば、レオン以外の人間にも同じ説明をしなければならないのかもしれない。それでも、治療する前に襲われれば、話すことさえできない。
「地上、行かない方がいい?」
「一人で出れば危険だと思う」
「人間が?」
「君にとっても、人間にとってもだ」
レオンはしばらく考えてから続けた。
「君を助けた存在だと説明しても、すぐには信じない者が多い。俺が魅了されていると疑う者もいるだろう」
「レオン、魅了されてる?」
「自分では違うと思っている」
「分からないの?」
「魅了された人間が、自分は魅了されていると気づけるのか知らない」
「してない」
「分かっている」
「今は信じてる?」
「今は、君が俺を助けたという事実を信じている」
完全に安心したわけではない。
それでも、私が何者かという記録より、ここで見た行動を信じると言っている。
悪い気はしなかった。
「ならいい」
私は外套の結び目を直した。
少なくとも、レオンの前ではこれでいい。
あとで縫工守へ、動きを邪魔せずに身体を隠せるものを作らせる必要がありそうだった。
人間が一人来ただけで、今まで問題にならなかったことが次々に増える。
服装も、食事も、会話も、外の世界へ出る時の危険も、一人だった頃には考える必要がなかった。
面倒ではある。
けれど、少し楽しかった。
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レオンへ食事を運ぶ前に、私は隣の調理区画へ向かった。
自分が食べる料理なら、焼けていて毒がなければ大きな問題はない。味が薄くても、自分で作ったものならそのまま食べる。
患者へ出すものは違う。
弱った身体でも食べられ、傷の回復を邪魔せず、できれば味も悪くない方がいい。
薬工守へ条件を確認し、脂身を取り除いた魔獣肉と、灰の森で採った根菜を細かく切る。水を多めに入れ、炉工守へ弱い加熱を命じた。
鍋が温まる間も、レオンの呼吸は《血液感知》で追っていた。
壁を挟んだ向こうに、人間の心臓がある。
一定の間隔で血を送り、傷ついた身体を生かし続けている。
魔獣の生命反応とは違う。
人間だった頃、自分の胸の中にも同じものがあったはずなのに、今は他人の心音としてしか感じられない。
スープを味見する。
薄い。
少しだけ塩を足そうとすると、薬工守から警告が出た。
《患者状態を考慮し、追加塩分は非推奨です》
「おいしくない」
《生命維持を優先します》
「厳しい」
薬工守は当然、何も答えない。
返事がないことに、以前なら何も思わなかった。
今は治療室へ戻れば、何かを言う相手がいる。
私は器へスープを移した。
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治療室へ戻ると、レオンは目を閉じていた。
眠っているのかと思ったが、私の足音で目を開く。
「まだ巻いていたのか」
腰の外套を見ている。
「気になるって言ったから」
「聞き入れてくれるとは思わなかった」
「患者だから」
「患者でなければ聞かないのか?」
「考える」
「それは不安になる答えだな」
医療台の角度を調整し、レオンの背中を支える。
近づいた時、レオンの体温が伝わってきた。
温かい。
人間はこんなに温かかったのかと思う。
自分の肌はもっと冷たい。
レオンの肩へ腕を回し、布を挟み直した時、彼の身体がわずかに強張った。
「痛い?」
「いや」
「なら何」
「近い」
「支えないと起きられない」
「分かっている」
私の髪がレオンの胸元へ落ちていた。
後ろで結んでいたはずだが、動いた拍子に一部がほどけたらしい。黒い髪が白いシャツの上を滑り、レオンの腕へ触れている。
顔も近い。
赤い瞳も、唇の奥へ隠した牙も、よく見える距離だった。
レオンは私の目を見たあと、わずかに口元へ視線を落とした。
私は反射的に唇を閉じた。
「噛まない」
「分かっている」
「本当に?」
「今は信じている」
先ほどより、答えが少し早かった。
私はレオンを起こし終え、身体を離した。
胸の奥が少し落ち着かない。
人間の血の匂いが近かったからなのか、別の理由なのかは分からなかった。
器を持ち上げる。
「食べて」
「自分では持てないか?」
「胸が開いたら困る」
「子どもではない」
「患者」
匙ですくい、冷ましてから口元へ運ぶ。
レオンは諦めたように口を開けた。
一口目を飲み込むと、表情がわずかに止まった。
「どう?」
「身体には良さそうだ」
「味は?」
「身体には良さそうだ」
「おいしくない?」
「塩が欲しい」
「薬工守が駄目って言った」
「なら仕方ない」
文句を言いながらも、レオンは次の一口を受け入れた。
誰かへ食事を作り、口へ運び、味を尋ねる。一人だった頃にはできなかったことだった。
「明日はもっとおいしくする」
「明日もいる前提か」
「すぐ帰るの?」
尋ねた瞬間、レオンの表情からわずかな緩みが消えた。
「帰れるなら帰りたい」
予想していた答えだった。
仲間がいる。
帰る場所がある。
レオンは私の家で生き続けたいわけではない。
私は匙を器へ戻した。
「分かった」
引き止める理由はない。寂しいと感じても、患者を家へ閉じ込めることはできない。
ただし、今すぐ転送していい状態でもなかった。
「帰れるか調べる。でも、傷次第」
「任意で帰れるのか?」
「帰りたいって言えば、施設が判断する」
「治っていなくても?」
「転送に耐えられるなら帰れる。危ない時は、危ないって出る」
「待つ時間は決まっているのか?」
「怪我と治り方で変わると思う」
胸の再出血、肺の状態、失血、右脚の血流。転送そのものへ耐えられても、その直後に悪化するなら安全な帰還とは言えない。
「今はまだ調べないで」
レオンが怪訝そうに私を見る。
「なぜだ」
「食事中」
「それだけか?」
「冷める」
私はもう一度、匙を口元へ運んだ。
レオンは何か言いたそうだったが、最後には口を開いた。
帰りたいという意思は分かった。
それでも、今はここにいる。
私が作った食事を食べ、私の声を聞き、同じ部屋で呼吸している。
初めて出会った人間が、あとどれほどこの家にいるのかは分からない。
だからこそ、食事が終わるまでは帰還の話を進めたくなかった。
「食べたら、名前考える」
「まだ決めていないのか」
「うん」
「帰る前に決めてくれ。呼びにくい」
「帰る前?」
「少なくとも、礼を言う相手の名前くらいは知りたい」
私はレオンを見た。
誰かが私を呼ぶために、名前を必要としている。
一人で暮らしていた時には、考えたこともなかった。
施設には《マスターユーザー》と登録されている。作業個体は命令を認識するため、名前などなくても困らない。
けれど、レオンは困ると言った。
それなら、今の私にも名前が必要なのかもしれない。
「分かった」
「決めるのか?」
「探す」
「施設に残っているかもしれないのか」
「少し調べる」
レオンは小さく頷いた。
「見つからなければ、自分で決めればいい」
「勝手に?」
「今の君の名前だろう」
昔の私には名前があった。
けれど、それは人間の男だった私を呼ぶ名前だった。今の身体でその名を呼ばれることには、どうしても違和感がある。
私は器の底に残った最後のスープをすくった。
「呼ばれて変じゃない名前がいい」
「それは呼んでみなければ分からないな」
「レオンが呼ぶ?」
「決まったら」
「分かった」
最後の一口を食べさせる。
レオンは飲み込んだあと、空になった器を見た。
「味は薄かったが、全部食べられた」
「おいしかった?」
「明日に期待している」
「逃げた」
「名前を決める時の君と同じだ」
私は器を下ろした。
初めての人間。
初めて会話をする患者。
初めて自分の料理を食べた相手。
そして、今の私を初めて名前で呼ぼうとしている人。
レオンが帰るまでに、今の自分へ合う名前を見つけようと思った。




