お客様
「後、最後にお前に関することだ。」
とカイは言い続けて。
「噂が広がってる、色々混じってな。」
「国民の間で声が上がってるんだ、お前についての事で。」
1拍置いてから。
「良い意味じゃあ、ない方でな。」
「……。」
「まあ、そういう事だ」
そう言ってカイは椅子から立ち上がった。
「これ、お茶代」
と言うと机の上に数枚の硬貨を置く。
「じゃあな」
とひらひらと片手を振りながら、カイは店を後にした。
私はその背中を見送る。
相変わらず掴みどころのない男だな。
嘘か真実か。
だが、今日聞いた話はどれも軽く流せるものではなかった。
王。
ユイト。
鴻。
そしてミア。
頭の中で様々な情報が絡まり合う。
(何かもう嫌だ)
私は小さく息を吐くと、カフェを後にした。
屋敷へ戻った後も、私は自室で考え続けていた。
窓の外では夕日が落ち始めていた。
だが私の頭の中では、カイから聞いた話がぐるぐると回っていた。
(それにしても王はどこにいるんだろう)
舞踏会で王を見たが本人かが分からない。
人々の証言も不自然なほどに揃っている。
それなのに王の印章が押された手紙は存在する。
まるで王だけが、陰(霧)になってしまったような気がした。
考えていると。
コンコン。
と不意に扉が叩かれる。
私は顔を上げた。
「どうぞ」
扉が開く。
そこに立っていたのはシオだった。
「失礼します、玲様」
「シオ?」
珍しい。
シオの方から私の部屋へ来ることはあまりない。
特に最近は、避けられていると思っていたのに。
「何かあったの?」
と、そう尋ねると、シオは少しだけ言いにくそうな表情を浮かべながら言う。
「先程、お客様がお見えになりました」
「お客様?」
「はい」
そう言ってからシオは小さく息を吐いて、一拍置いた。
そして静かに告げた。
「王宮からの使者です」
私は思わず立ち上がった。




