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黒猫のマーチ  作者: 傘ゆき
第一章 『始まりの森』
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魔石の洞窟

-side 猫人間アーチ-

 しばらく待っていると黒猫さんが戻ってきた。僕は黒猫さんが帰ってきてくれて安堵した。

 僕が板に文字を書こうとする暇もくれず、黒猫さんは「ついてこい」とでも言っているか「ニャー」と泣き、森の中へと歩き始めた。

 僕はそれについていこうと森の中へと入っていった。


 純白の吸魔石はガハトという街の鉱山で手に入れている。残るは深黒の魔導石のみだ。

 ……正直、最初はこの「魔の大森林」に来るかは悩んだ。

 ここにきたのも、とある噂を聞いてここにきたのだ。この「魔の大森林」に魔導石のある洞窟がある、という噂だ。

 「魔の大森林」といえば魔獣が跋扈する危険な森だ。噂の出どころが不明確だったし、「魔の大森林」は広大でどこにあるかも定かではない。つまり根も葉もない噂で、どうも胡散臭かった。

 さらに、その洞窟に深黒の魔導石があるなんて確証はない。

 しかし、街で探したものの、王都でさえ売っていないのにあるわけがない。それに売っていたとしても僕の所持金じゃあ一欠片も買えないだろう。

 僕は藁を掴む気持ちでこの森に来ることを決意したわけだ。


 そして「魔の大森林」に入って僕はすぐにクマに襲われ、そのまま一日中逃げ回り、黒猫さんに助けてもらって今に至るわけだ。でも、冒険者に護衛を依頼するとかやりようがあったと今更ながらに思う。

 いや、結果的にこうして黒猫さんに会えて案内してもらえているから良かったのかな?だってこうして黒猫さんに案内してもらわなければ見つけられなかったかもしれないし。

 ともかく、「終わり良ければすべて良し」だ。ここからが本番だ。

 約束の日まで残り七日。ここからファリス王国の王都には早くても六日ほどかかる。つまり、今日見つけられなければ明日には職がなくなるわけだ。

 今日見つからなかったらどうしようか?どこかで雇ってもらえるだろうか?旅に出るのも悪くないかもしれない……

 いや、「見つからなかったら」とかはやめよう。

 今日、見つけるんだ。




※ ※ ※




 しばらく歩いていると洞口が見えてきた。


「ニャー」


 どうやらここらしい。

 一見するとただの洞窟のようにしか見えないけど……

 というか、まず入り口が狭い。僕が少し屈んでやっと入れるほどの大きさだ。頭をぶつけそうだ。

 僕はかがみながら腰のカバンから魔光石を取り出してあたりを照らす。

 魔光石というのは魔導石や吸魔石と同じ魔石の一種で、魔力を流すと発光する性質がある。

 火の魔術で照らすこともできるが密室で火を使うと毒が蔓延するから使うなとガハトのとある魔法使いに言われた。

 何があるかわからないから魔力はなるべく温存しよう。

 僕は魔光石に流す魔力を少なくして魔光石の光も弱めて、洞窟の中へと入っていく。


 それからいくつか分かれ道があったけど、黒猫さんは迷わずに進んでいる。僕もそのあとを壁を片手で探りながら跡をついていく。

 それにしても魔石すら見当たらない。かなり歩いたと思うけれど、ずっとゴツゴツした岩や土の壁ばかりだ。

 正直、道らしい道じゃないところもあった。あちこちつっかえたり、ぶつけたりするし、結構痛い。それに、屈んだまま進んでいくのは結構辛い。

 まだかまだかと焦って不安になっていると、


「あ、あれは……」


 細い洞窟の先に光が見え始めてきた。


「あ、待って!」


 黒猫さんはその光の方向へと駆け足で進んでいく。

 僕も黒猫さんの影を追いかけて駆けていくと、


「うっ…眩しい…」


 その光の中に入ると眩しくて目を瞑った。

 そして視界が開けてきて周りを見渡すと、


「わぁ…綺麗…」


 僕は声を漏らした。

 そこは広い空間で、洞窟というには明るかった。

 魔石がたくさん壁に埋め込まれていて、光っているものもあれば、その光を反射して光っているものあった。

 まるでこの世界のものでないような景色だ。


「リアンにも見せたいな…..」


 リアンのことを思うとすぐにでも会いたくなる。

 僕は彼女のことをまだ友達のように接したことがない。「リアン」と呼び捨てで読んだこともない。僕は彼女ともっと話したい。そう思うと胸が熱くなる。

 そのためにも、深黒の魔導石を手に入れないといけない。

 僕は眩い光の中で探し始める。


 周りを見渡しても、どの魔石も水色に光るものばかりだ。見渡す限り黒色なのは黒猫さんぐらいだ。

 この旅に出る前、魔石について多少は勉強したから簡単なことはわかる。

 この洞窟で水色に発光しているものは魔光石。よく見られる魔石といえばこれだと思う。

 魔導石には赤、青、紫、黒の種類がある。赤、青、紫、黒の順で、魔力の通しやすさ、「魔力伝導率」が高く、扱いが難しくなり貴重になる。

 また、白か灰色のものは大抵は吸魔石だ。吸魔石には「魔力伝導率」だけでなく、魔力の吸収のしやすさ、「魔力吸収率」というものもあって、より白に近いものが高く、貴重だ。

 他にも魔力を流すと発火する魔燃石だったり、魔力を流すと帯電する魔電石だったりといろいろある。


 そして、これらの魔石には共通点がある。どの魔石も「魔力伝導率」というものを持ち、その色が濃ければ濃いほど「魔力伝導率」が高い。「深黒の魔導石」や「純白の吸魔石」が貴重なのもそれが理由だ。そして、濃い色の魔石は魔力がより濃く流れる場所に生成される。

 この洞窟には眩しすぎるくらいに魔光石が輝いている。

 つまり、この洞窟には「深黒の魔導石」がある可能性は高い。

 希望は見えてきた。




※ ※ ※




 黒猫さんもキョロキョロしながらついてきている。探すのを手伝ってくれているのだろうか?

 なんだか色々と助けてもらってしまって申し訳なくなる。何かお礼をしたいな……


 それにしてもどれくらい時間が経っただろうか。洞窟の中だと時間の感覚が狂う。太陽の位置で時間を把握することができないからだろうか。

 流石に一日はたっていないだろうけど、半日は経ったかもしれない。とはいえ、進まなきゃ見つかるものも見つからない。

 時々休憩を挟んで持ってきた水と干し肉を黒猫さんと分け合いながら探索を続けた。


 僕は一歩一歩洞窟の奥へと進み、そのたびになる足音と共に少しずつ不安が募る。

 溜まっていく疲労と刻々と過ぎていく時間、どこにもない深黒の魔導石。少しずつ心に憂鬱が影をさしていく。自分の心に何度も勇気の言葉をかけても心は一向に晴れない。

 でも、リアンに会うためにはこれしか方法がない。


 側から見たらなぜここまでするのかわからないだろう。

 でも、僕の口からも説明できないほど僕はリアンに感謝しているのだ。

 母を失ってただ無心で仕事をしていた僕に、

 ライラン様の仕打ちで疲れきっていた僕に、

 分かり合えないとリアンを避けていた僕に、

 傷つけるようなことを言って、突き放そうとした僕に、

 彼女は何度も話しかけてくれた。側に居てくれた。僕を知ろうとしてくれた。

 それがどれだけ嬉しかったことか。


 リアンと会ってもっと話したい。

 もっと話を聞いていたい。

 笑い合いたい。

 想いを伝えたい。

 感謝を言いたい。

 ずっと一緒にいたい。

 ずっと隣にいたい。

 せめて……せめてもう一度だけ、

 リアンに会いたい……


 目頭が熱い。

 顔が熱い。

 涙が溢れ出しそうだ。


「ニャーオ」


 静まり返っていた中に、一匹の猫の鳴き声が響く。

 黒猫さんの鳴き声だ。

 気づくとさっきまで目の前にいたはずの黒猫さんがいない。

 周りを見渡して黒猫さんを探す。

 すると黒猫さんがひょこっと水色の魔石の隙間から顔を出す。僕は涙を腕で拭って黒猫さんのところに駆け寄った。

 すると、黒猫さんは「こっちに来い」とでもいうかのようにその狭い隙間の中に入って行く。

 僕はそれについて行った。

 体を縦にして黒猫さんについていくと……


「あっ……」


 その隙間を抜けると広い空間に出た。

 水色に輝く魔光石の壁が、その空間を囲っている。

 しかし、その広い空間の真ん中に、黒い結晶があった。

 それは、キラキラと周りの魔光石の光を反射していた。

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