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黒猫のマーチ  作者: 傘ゆき
第一章 『始まりの森』
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深黒の魔導石

-side 猫人間アーチ-

 僕はアーチと一緒に深黒の魔導石を探した。

 僕なら帰りの案内もできるし、アイツらがいるかもしれないし……

 とにかくアーチを一人で行かせるのは危険だと思った。


 僕も一緒に魔導石を探していると、魔石の壁にひび割れてできたような狭い隙間を見つける。

 それだけなら今までもたくさん見たが、その隙間から不思議な魔力の流れを感じた。

 この洞窟に入ってから大量の魔力がこの洞窟中に流れているのは感じていたが、隙間から流れ出る魔力は他の魔力の流れとは異質だ。

 僕はその隙間の先がどうも気になってその隙間の中へと入っていった。


 隙間の中を進むと魔石の中に流れる魔力がだんだん濃くなっていく。

 やはりこの先に何かあるようだ。

 そして隙間を抜けると、そこには広い空間があった。

 壁は一面魔石で、水色にキラキラと輝いている。

 しかし、その水色に輝く空間の中心に大きな黒い塊があった。離れているここからでも見上げるほどに大きい。

 その塊に近づいてみると、それは黒く輝く石だった。

 だというのに、今まで見てきた魔石と違って透き通っていない。

 そして、この空間すべての魔力がこの塊に流れ込み、それが流れ出て、この空間の魔力を循環している。

 これが「深黒の魔導石」……

 「深黒の魔導石」だという根拠はなかったけれど、これだと何故か確信できる。


 僕は見つけたこの「深黒の魔導石」の塊をアーチに見せようと連れてきた。

 そうして連れてくると、アーチもこの魔導石を見ると驚いたようで目を大きく見開いて固まっていた。

 やはり人間も同じような反応をするのか。

 そこでキツネの言葉を思い出す。

 そして僕にふつふつと疑問が湧いてくる。

 人間はすぐに裏切るものなのか。そこまで関わらない方が良いものなのか。分かり合えないものなのか……

 僕はキツネに対して一度だが、確かに違う生物だと思った。

 僕にはキツネのそれがまるでキツネの言う「人間」とどうも同じように思える。


 それはともかく急がないと。


「ニャオ」


 僕はアーチを急かす。

 急かす理由はここにいる「あの魔獣」に出くわしたくないからだ。

 あまりここにいい思い出はないし。


「あ、そうだ、早く採らなきゃ」


 アーチにもそれが伝わったようで、アーチは持ってきた木の棒の先に鉄の棒がついているもので「深黒の魔導石」を叩き始めた。

 どうやらそれであの魔石を砕くようだ。


 僕はアーチがそれを砕こうとするのを見ながら思い悩む。

 これからどうしたものか。

 キツネのとこに帰ったところで門前払いだろう。いや、あの怒りようだし、もしかしたら僕を見た瞬間襲いかかるかもしれない……。

 ……いや、キツネとの約束がある。僕はキツネから学ぶ代わりに、キツネに餌を運ぶ約束をしている。でも、今キツネに追い出されているから約束は破棄されたのか?

 だとしても、戻る必要なんてない。あんな理不尽なキツネとなんてこれからやっていけない。僕は何も悪くないし。少なくとも僕は自分を悪いとは全く思わない。

 一人で生きていくのに必要なものはキツネから全て学んだ。クマみたいなのが相手じゃなきゃ勝てるだろうし、出くわしたら逃げれば良い。

 キツネなんて、どうだっていい。


 まぁ、とりあえずこの魔洞窟から外に出て……


「グオォォォ!」


 不穏な音が響き渡る。

 アーチも気がついたようで道具と魔導石のぶつかる音が止んでいる。

 この音……聴いたことがある。

 そうだ、前にキツネとここにきた時に襲ってきた……


「グオォォォ!」


 どうやら、あの穴の向こうからこの音が響いているようだ。


「グオォォォォォ!」


 さっきより音が大きくなっている。そしてドスドスと大きな足音も聞こえてきた。近づいている?!

 アーチもそれに気づいたようで急いで魔導石を砕こうとしている。


「グオォォォォォ!」


 くっ、早くしないとアイツが来る……!

 アーチはこの魔石を砕くのを諦めないだろうし、かと言って僕だけ隠れるわけにも……


「グオォォォォォォォォォォ!」


 考えている時間はない!

 早く魔石の塊の裏に……


「ニャッ……」

「グオォォォォォォォォォォ!」


 うっ、息が……


 僕はアーチに抱えられ、片手で僕は口を塞がれた。

 アーチのもう片方の手にはこの塊のかけらが握られている。どうやら目的のものは採れたらしい。


「グルルル」


 チラッと魔導石の影からアイツを見る。

 「アイツ」というのは、『アース・ドラゴ』だ。

 キツネと前にここにきた時にずっと追いかけ回してきた『アース・ドラゴ』。キツネ曰く、アース・ドラゴの皮膚は岩のように固く、簡単には傷をつけられない。

 そのくせしてそこそこ素早い。全力で走れば逃げれるだろうけど……

 アース・ドラゴはゆっくりと魔石の塊の周りを歩き始める。

 ここにいるままでは見つかってしまう。早く逃げなきゃ……

 出口は二つ。

 一方は僕とアーチが通った隙間だ。アース・ドラゴの大きさじゃ入れないから入れさえすれば逃げ切れる。しかし、その隙間に向かうにはアース・ドラゴに気づかれる可能性がある。

 もう一方はアース・ドラゴが出てきた穴だ。その向こうからの出口までの道順は知らない。それにこちらもアース・ドラゴに気づかれる可能性がある。

 だから前者の道を選びたいけど……


「グルルル」

 

 おいおいおい……うそでしょ?


 アース・ドラゴが出てき来た場所からもう一体のアース・ドラゴが出てきた。

 そして最悪なことに最初に来たのと反対側から魔導石の塊の周りを歩き始めた。これだと挟み撃ちされてしまう……

 やるしかない。

 僕はアーチの首にかけてある板に文字を書き始める。


 ”さっきここに入ってきた隙間へ走りましょう”


 アーチはそれを見て頷き、僕をそっと地面に下ろした。

 アーチと僕は全力で駆け出して、隙間の出口へと走り出した。


「グオォォォォォォォォォォ!」


 一体のアース・ドラゴは気づいたようで大きな鳴き声で吠えた。

 ドスドスと後ろから追いかけてきているのはわかる。

 振り返っている暇はない。

 とにかく全力で逃げないと!


「グオォォォォォォォォォォ!」


 あと少し!

 そして僕は隙間に入ろうとしたその時、アーチが隣にいないことに気づく。

 後ろを振り向くとアーチは青ざめた表情で必死に走っていて、今にもアース・ドラゴに追いつかれそうだ。

 さらに、その後ろからはもう一体のアース・ドラゴが追いかけてきている。

 僕は無意識に魔力で身体能力を強化していたけれど、アーチはそれができないことを忘れていた。

 さらに、アーチはさっきまで鉱石を砕こうとしていたからかなり疲れているはず。それも頭になかった。

 僕は体に魔力を流し、身体能力を大幅に強化する。

 そしてアース・ドラゴへと飛び出し、体当たりをした。


「ニャ!」(いって!)

「グオォォォォォ!」


 体がアース・ドラゴに激突した瞬間体に痛みが走る。

 アース・ドラゴの硬さがこれほどとは……!

 しかし、アース・ドラゴも今のは応えたようで少し怯んでいる。


 その間にアーチは僕を抱き上げて隙間へと向かって走り出す。

 そしてそのままその隙間の中に体を捩じ込んだ。

 捩じ込んだ次の瞬間ドンっと大きな衝撃が隙間の入り口から響く。

 隙間の方を見ると、アース・ドラゴの頭が捩じ込もうとしている。

 どうやら無理に入ろうとしてきているようだ。

 幸い、アース・ドラゴの体が大きいおかげで入ってこられないようだ。

 そしてアーチと僕はすぐにその隙間を抜け出した。


 抜け出すと僕もアーチもその場にへたり込んでしまった。

 本当にギリギリだった。

 まさかあんなところで出くわすとは……


「グオォォォ!」


 さっきの隙間からアース・ドラゴの鳴き声が反響する。

 まだ諦めていないようだ。

 とはいえ、流石にこの分厚い魔石の壁を突破することはないだろう。


「ハァ……ハァ……」


 アーチも無事なようだ。

 息は上がっているが、怪我はしていないようだ。


 僕は息を整えようとしていると、アーチが僕にそっと手を伸ばす。

 急に触れられてビクッとするも、その手に敵意がないと感じ取れた。

 そのまま僕はアーチの手に体を許す。


「あ、ありがとう……黒猫さん……」


 アーチは息を荒げながら僕に何かを語りかけた。顔は青ざめているが、とても優しい表情をしている。

 その手の温もり、その手の動きの優しさから、なんとなく言っていることがわかる気がした。

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