Parallel 君と二人で side真奈
昼休み後、生徒会室から別れた真奈の放課後です。
こんな天気の日は従兄に頼っちゃいます。
「あのね、相談しても…いい?」
「内容によるけどな。とりあえず言ってみな」
朝から降り始めた雪はあっという間に校庭を真っ白く染めてしまった。
私の母校は丘のてっぺんだから、こんな日は大抵早めに授業が打ち切られる。
当然今日も。明日は一日休校になった。
元々中等部の入試の準備の為、授業は午前中だけの予定だったし。
皆は連休になるから嬉しいだろうけど、私はそうでもない。
入試当日、生徒会役員は恒例のお手伝いがあるから。
今回は、学校に近い役員がほとんどいないから雪かきをやらされることはない。
多分…学校の近くに住む先生と寮生徒野球部がやってくれるんだろう。
ちいが、生徒会室にストックしておいたココアのパックと紙コップを差し入れとして太一に託すとあの後話をしていた。
太一は今度の生徒会長カノで、今後の事を考えてやっておいた方が得策だろうとちいは言う。
愛川ラスの気配りには頭が上がらない。
今は、放課後で私は物理の非常勤講師をしている従兄の恭一君の車の中。
最初はその事を隠していたのだけども。恭一君とあらぬ噂を立てられてしまい、結果的に公表することになった。
その方が立場的には楽になったけど、その事が原因なのか分からないけど、恭一君は春で学校を辞めると言う。
「ねぇ、私の…せいなんでしょう?」
「まな、俺はね、研究が認められて、少しだけども偉くなって、これからは大学の授業が増えるんだ。折角取った教育免許だからギリギリまで働いていただ絵k。それにここは俺の母校だから…さ」
「分かった。そう言う事にしておく。で、さっきの相談だけども、自分を犠牲にしてまで貫ける恋ってしたことある?」
「あると言えたら良かったんだろうな…。それだけ、相手を想っているって事はすごいな」
「そっか。でも、それって想い合っていたら…が前提でしょ。片想いの状態でソレはどう思う?」
私自身がそこまでの恋をしていないから、狂心めいた恋をする彼女が危なっかしくて見ていられない。
「彼女の中でのトラウマが克服されていないってことかな?それとも、それだけ自分をコントロールできる奴か。10代なんだから、そんな大人な対応をしなくてもいいだろうけどな。それって佐倉だろ?」
恭一君は、すぐに誰の事か分かった湯小田。相変わらずの観察眼の持ち主。
「うん…。私が知らない彼女の過去がね、あんまりにも重くって…」
私は大まかな話を彼に話す。
「成程。だから、あそこまでいつも警戒していたのか。ようやく分かったよ」
「えっ?ちいって…そんなに酷い?」
「ああ。野良猫みたいでさ。人恋しそうだから手を伸ばそうとすると逆毛をたてて威嚇しそうなさ…分かるだろ?」
恭一君の例えを想像してみる。あまりにも的確な例えなので思わず笑みがこぼれる。
確かに知り合った当初はそんな感じだった。それに今もいつも隅にちんまりとしていることが多い。
「あれだけ、かわいくて、賢いんだからもっとうまくやれるのに…って思ってたけど、そんな事があれば地味に立ちまわるのは筋ってもんか」
「でもね、なんで、ちいがあの子にそこまでされなきゃならないのかが、分からないの」
「本人が言わないと分からねえものな」
「うん。少なくてもちいには記憶がないって」
私はそう言って溜め息をついた。
「そう言えば、健があいつは私より不幸でいいって言い方をしたって言っていたな。前に」
「それは…佐倉を見下しているってことか。そこの基準は何だろうな」
「多分…生い立ち。あの子は両親を亡くしているからね。早く自立したいが口癖だし。だから大学に行かないで、専門学校に行って資格を取って…って言っていた。先生は凄く困っているみたい」
「そりゃそうだろうな。文系トップクラスで、更にクラスの中でもトップクラスだろ?あの子は1年で物理を見たけど、ちゃんと分かるまで聞く子だったな。理系も悪いわけじゃないからな…」
「うん。親がいたらって…私も思う時がある。なんか…不公平じゃない?それって」
「でも、本人はそれを受け入れている訳だから、決して不公平とは思ってないだろうな」
「…成程」
私は彼の言う事に納得してしまった。その環境が彼女にとっての普通なのだから…か。
だったら…・私は彼女に何をしてあげられる?どうしたら…いい?」
「まなはまなのまま」
「えっ?」
「俺の言った意味は分かるだろ?」
「うん。それでいいの?」
「ああ。きっとな。何かあれば、彼女から行ってくるから、信じて待ってろよ」
「うん」
「あの子の事だ。これで終わりにはしないだろう。あの子は本気怒らせたら…怖いぞ」
「…かもね、笑っているんだけども、怖い時あるもの」
「そりゃ、本物だ。まな…お前もマスターしたらどうだ?」
「五月蠅いなぁ。恭一君は。ごめん。コンビニに寄りたいからここでいいよ。ありがとね」
「分かった。気をつけて帰るんだよ」
「もう…子供じゃないって」
恭一君は、いつも私と子供扱いする。私だって、夏になれば18歳になると言えば…それでもお子様だよって笑うんだろうな。
ちょっと前までは恭一君に一人前として認めてほしかった。
気がついたら、そんな事は思わなくなっている自分がいる。
それは、多分。ちいの側で優しく見つめている太一を見ているせいだろうか・
太一が、ちいの事を想っている事は分かっている。そして、その思いは報われない事も。
ちいが誰を見ているのか…私は気がついてしまった。
その想いが彼に届くとするならば…12月だろう。その頃には卒業後の進路も確定しているだろう。
後10ヶ月、彼女の事だからそれなりに上手く隠すことだろう。今までがそうだったように。
私はどうしたい?どうしたら、誰もが幸せになれるのだろうか?」
家に着いた私は、自分の部屋に入った。制服を脱いでカジュアルな部屋着に着替える。
彼女はまだ…校内に残っているだろう。恐らく彼女の想い人と一緒に。
決して、その好意は見せずに弟のように可愛がっているといういつもの姿勢のままで。
早く彼女が望む幸せが来ますように。空から舞い落ちる雪に願いをかける。この雪が彼女の想いを凍らせないようにと。
いろんな思いが交錯しております。しかもそれに対して閉塞感を感じているまなでした。




