Parallel 君と二人で ver健&章代
太一とちいから真相を聞かされた後の放課後の二人です。
部活仲間として近い距離にいたはずの二人は自分たちの置かれていた状況を知ります。
真相を知った後の二人の答えは?
「どうする?」
「バスで帰るのが最短だろ」
「…だよねぇ」
「歩くには辛いぞ…アッキー」
ホームルームの後、当番の私達4人はいつものように掃除をしてからちいを含めて一緒に帰れると思っていた。
けれども、ちいは先約があって、まなは掃除当番じゃないからって先に帰っちゃうし。
太一は寮だから、寮の入り口まで…昇降口から30メートルまでしか一緒じゃない。
結果的に残ったのは私、石井章代と杉田健の二人。私達二人揃って小画工3年生の時に今の住宅地に引っ越してきた。
どちらかと言うと、人見知りがちな私とリーダー格の健。
小・中学校は話す事はなかったけれども、二人して偶然にも君塚高校に受からなくってS校に入ることになった。
1年生の時は、私は2組で健は5組。
健とは授業が一緒になる事はなかったけれども、帰宅部刷る位なら、お前英語が得意だったろ?とあり得ない位強引に、英語部に引き込まれた。
かなり無茶な入部だったけれども、活動自体は発音だったり、会話だったり、英検の対策だったりとごく普通の活動で、文化祭ではビデオで人形劇を録画して視聴覚室で放送した。
部員は、3年生の先輩と私達1年生。1年生は付属中出身のまなちゃんと私と健と3組の太一君。
部費がさほどかからないから、同好会にならないで卒業までは活動できるだろうと先輩達は言ったけれども、私達は同級生でもう一人って話になった。
そんな時に、白羽の矢が立ったのは太一君と同じクラスの佐倉さん。私は英語と数学の授業が一緒で面識があったし、まなちゃんとは生徒会役員で付き合いがあると言う。
健奈良誰とも付き合えるだろうと言う事で私達が勧誘して、彼女が入部して現在に至る。
私も最初は佐倉さんと呼んでいたけれども、部活に入ってからは、彼女の小学生時代からの呼び名の『ちい』を使っている。
いつもはニコニコしているちい。けれども、ときどき、凄く切ない表情をしたり、悔しそうな表情を浮かべる。
その表情をどうしてするのか、私はそれが分からなかった。
それと、部活の時に健がすごく冷ややかにちいを見ている事があった。
なぜ、彼がそんな目で彼女を見るのか分からなくって、ある日の放課後、私は健を問い正した。
健は、私が納得できるまでは話してはくれなかったけれども、たった一言
「どのちいが、本物なのか分からない」
「そんなの、自分の目で見たものが全てでしょうが、バカ」
その時の私は健を叱り飛ばした。そんなやり取りが1年の間は何度かあった。
私達はその時は全く何も知らなかった。
2年になると、文系と理系にクラスが別れる。理系志望のまなは8組に、文系志望の私達4人は4組になった。
今までも部活の時は、ほとんど一緒だったけれども、毎日一緒になると、今まで見えていなかったものが自然と見えてくる。
普通なら、同じ出身中学ならば、挨拶位はするはずなのに、ちいは一人だけは視線すら合わせない。
むしろ、その場にいるのに、見えていないかのようにその存在を排除しているかのように。
他の人とは、私達と同じように接しているから余計に不自然に見える。
ちい本人に聞くと、気のせいじゃない?考えすぎよと流されてしまう。
去年同じクラスだった太一に聞いても、気付かなかったと言われる始末。
余りにも埒が明かないので、彼女と同じ中学出身の子に話を聞いたら、二人揃って、本人が言うんだからそうなんでしょ…と歯切れの悪い返事が返ってきた。
私達が分かったのは、一人対三人という数で別れてて、互いに接触をしていないように見える。中学で何かがあったのかのように。
それと、もう一つ分かった事がある。多少ふざける事があっても、ちいは感情が表情に出る事がない。
いつも微笑んでいるのに、笑う事はない。カチンとする事があっても、表情が変わるのはほんの一瞬だけ。
それは、元からなのか…それとも何かがあるのか…。長い時間、一緒にいるようになって、彼女を良く見て、ようやく健が言う本物の彼女の意味が分かった。
「アッキーはどう思う?」
「どうって言っても、本人が着の生徒言ってるものを追求するのはどう?」
「でも、不自然だろ?絶対に。何かありましたって言っているだけだって」
「そうね、中学時代に大げんかをしたとか?」
「いいや、そんなかわいいものじゃないだろう。もう一人は、俺は去年、同じクラスだったんだよ…実は」
「ちょっ、それ早く言いなさいよ。バカ!!」
私は健を小突く。確かに学年360人全員を覚えていられる訳ではない。
「アッキーも知っていると思ってた。前半クラスだと…そっか。英語と数学が同じ位か」
「うん。それと部活を入れても…。私の知っているちいと今の地位は同じだわ」
私は私達の前にいる彼女は同じ人だと思っている。パーソナルスペースに簡単に入らせてはくれないけど、今の私と健なら入っていると思ってた。
「実はさ…そのも一人の同じ中学の女の子から聞いたのは、中学じゃ恋多き女だったって言っていた。その子の彼氏がかつての恋人って言っていたけど、ちいがこっぴどく振ったらしい…って言っててな…」
「うーん。ソレは今の彼女とはかけ離れているわね」
「それに、親しくしてても、酷い裏切りをするから、部活が一緒でも、信用するなって言ってた。俺はそうやって言われていたからさ、俺が見ているちいと聞いていた彼女との差があり過ぎて訳が分からなくなっている」
健はそう言うと、大きな溜め息をついた。
「ねぇ、太一には、その話をしたの?」
「ああ。したさ。ちいは人のプライバシーに触れるのを嫌がるタイプだし、人より打ち解けるには凄く時間がかかるだけだ。お前なりにちいの事は分かっているだろう…ってさ」
「太一らしいと言えば、そこまでだけども。まなも…同じ事を言ったとかないわよね?」
理系クラスにいるまなは、生徒会でも一緒だから、ひょっとしたらと思った。
「なにかあれば、あの子はちゃんと言うわ。言わないって事はそれは何もないのよ。人の過去を好奇心だけで関心を持つのはどうかな?私はちょっと…ね…だとさ」
まなの言う事も分かった。けれども逆に二人が同じような事を言うのに、不自然さが目立ってしまう。
「二人は、何かを知ってる…って事?」
「ああ。それに、おかしいと言えば、あいつ、夏休みの面談の時に親が来なかった」
健はそこまで知らなかったようだ。私は太一とクラス委員をしていたから、たまたま知ってしまった彼女の秘密がある。
「来なかった…じゃない。あの子の両親は…亡くなってるのよ。交通事故で」
「えっ?そうなのか?さっきの女の子から聞いたのは、親から相手にされない子って言ってたような」
「何それ?今はおばさん夫婦と一緒に住んでいて、姪っ子さんが小学生だからそっちが最優先って私は聞いたわよ」
「じゃあ、あいつは何かがあったらどうするつもりなんだ?」
「それは、高専にはとこがいるんだって。そっちの家に頼っているらしいよ。それに、いつもは会長兄弟と一緒じゃない>」
「あぁ。あの怖そうな会長に対して、かなり辛口だよな…あいつ」
「でも、広瀬会長は楽しそうじゃない?あの二人はそういうのが、コミュニケーションだと私は思ってた」
「広瀬先輩も千世さんも可愛がってたな」
「そうね、弟君も入れて広瀬兄弟って言うと自然かしら?」
「あぁ、あの弟、かっこいいからな。最初の頃付き合ってるのかって言われてたな」
「二人して、否定はしていたけどね。先輩よりは距離が近いよね」
「昔から良く一緒に遊んでたって言うから…そのせいだろ?」
やっぱり彼女には、ミステリアスは所が多い。
にこにこしているから犬の様にフレンドリーかと思いきや猫の様に素っ気ない事もある。
私達以外は、そんな彼女を普通に受け入れている。
「そう言えば、文化祭の時、ちいを探しに他校生の人が着たじゃない?」
「ああ、あったな。お前が連れて行ったんだっけ?」
「うん。連れて行ったらね。ちいの幼馴染と言って、紹介してくれたけどね…もう、平気なのに…って呟いたのよ。あの子」
「もう、平気なのに…か。それは気になるな」
「…で、その人、閉会式にまぎれていたの。うちの前の制服を着てね。会長と一緒に話をしていた。凄く険しい顔をして」
「ちいの幼馴染なら会長とも顔見知りか。会話位はするだろう?」
「その後、会長が太一に合わせていた。それで、話をしていたんだけも…最後に…あいつを頼みますって…」
「自分の学校をさぼってまで、来る位の何かがあの日はあったって事…か」
「うん。それとちいって泳げるのね。彼がまた、今年も教えてくれって言っていた。その時にね、ちょっとだけ笑ったの。凄く可愛かったの、ちいの笑顔が」
「可愛かった…か。今のちいのイメージの逆だな。泳ぎが出来るのは俺も知っている。あいつは人並って言ってたけど、本当は違うのかもな」
「そうかもね」
私達は、帰宅途中にそうやって話す事もあった。結局、自分達が見てるものが真実と捉えることにした。
人当たりが良くて、成績もトップクラスの生徒会役員。男子が憧れるのも分かる。昼休みとかに、呼び出されて告白されたりしているようだ。
けれども、今は勉強したいからという御断り文句で、誰とも付き合う事もない。
イベントになると、その光景は見慣れたものになり、彼女の表情が曇る事もあった。
勉強を理由にはしているけれど、恋に対して拒絶している様にもみえるし、本当は誰かを想ってるようにも見えた。
それと同時に、彼女に対して奇妙な噂も出始める。
思わせぶりな態度を取って、厳しく振っていくだったり、人気のある先生にアプローチをかけているとか、良く聞くとありえないのに、巧みに仕掛けられている気がした。
私達は誰が何のためか分からないが、ちい本人はどこか分かっているようだった。
なのに、何もしない。否定しかしない。相手が分かってて、なぜ、そんな事しかしないのか分からなかった。
「今日の太一の話で、全てが分かった気がする。今のあいつは、ああする事で、俺達もあの子から守って立って事なのね」
「ああ。去年、俺が聞かされてた事が全て計算された嘘だったとは…やられた」
「今は…理系クラスで…」
「言いたい放題だろうな。恐らくな」
「私達は、何をしてあげられるのかしら?」
「ちいが望む形でいてやる事じゃないのか」
「そうだね。それしかないね。声も立てないで泣くか…悲しいね。どうやって、その恋を…」
「思い出ごと…全てなかった事にか?」
「それはない。だって、過去はなかった事にしたくないって…あの子は言っていた事があるもの」
私は健を窘める。そう、ちいは彼に恋した事までなかった事には出来ない。そう言った事を私は思い出した。
「そうだな。勉強のせいにして断っても、本当は…誰も巻き込みたくないからだものな。好きな人がいても、卒業が決まるまでは言えない…違うな…言う意思がないって言った方が正解か。自分の想い人から告白されても断るだろうな」
「多分ね。それがあの子の今のポリシーだから。私、あんなに、強い子だとは思わなかった」
「あぁ。今までを考えると、それが…あいつの生き方だったからな」
「でも、それも間違ってる。もっと、子どもでもいいの。あの子は、もっと欲しがっていいのよ」
「その為に、広瀬兄弟や生徒会だったんだろう?太一が言ったろう?」
私達は太一から聞いた話を思い出す。
「ここが、お前の新しい家族だ…か。俺らも出来るかな?あいつの家族に」
「出来るわよ。じゃなきゃ、あんなにヘビーな話を言わないって」
私はそう言って、健の肩をはたく。
「相変わらず、力が強いな…いてぇだろ…全く」
「はいはい、ごめん。私達もなろう。あの子の家族に。そしてあの子を守ろう」
「そうだな。幸せは、皆に平等だものな。アッキー、しっかり頼むな」
「…あのね、それはあんたもよ。あんたは次で下りるんでしょ?」
「そうでした」
バスが止まると健は先に下りた。私の家の前はバスの終点だ。
私は、ちいの事を考える。もしも、自分が彼女だったら…彼女の身に起こったあらゆることを考えるとゾッとする。
どれだけ自分が守られていたのか痛感させられた。これからの自分も、彼女の様に強くありたいと思う自分がいたのだった。
同級生組はこれで終了です。
次は、生徒会組共通ルートになります。




