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Parallel 君と二人で ver太一

太一ルート。ごめんなさい。本編でできない上に、失恋確定です。


「ちい…あれで良かったのか」

「何が?それよりも、太一も飲むでしょう?生徒会室は寒いんだからストーブの前にいたら?」

「ありがとうな。それじゃあよろしく」

俺とちいは健達と別れてから、生徒会室にやってきた。

彼女はコーヒーメーカーをセットしてから、自分の定位置に座り、やりかけになっている作業を始める。

それはいつもの彼女がいる風景。そんな彼女を見ながら俺は彼女に尋ねる。



「ところで、俺は今度は何をすればいいんだ?」

「新会長さんとしては、予餞会の挨拶と高等部の入試のお手伝いと卒業式に参加と入学諸手続きのお手伝いと入学式?」

「お前…よくすらすらと言えるなぁ。直也先輩から聞いてないものがあるんだけど…」

「それがなお君だって。なお君が不安なら千世先輩に聞いた方が早いよ。連絡取れるでしょう?」

ちいは目線を上げずに、電卓を叩いている。何かの報告書なのだろうか?

「俺に務まるのか…生徒会長?」

「大丈夫よ。なお君だってできたんだから」

「俺…お前のその基準が分からない」

「だって、なお君はランドセル背負ってた時から知っているんだもの。しょうがないでしょ?」

「でも、家が近所じゃないんだろ?」

「うん。でもなお君は1年選手で一緒だったのもあるからね。実は選手としては私の方が先輩なんだ」

「それは…直也先輩的にはばらされたくない話だな」

「大したことじゃないのにね。私も話題が出ないと言わないから」

「そっか、それだけの歴史があるわけだ」

「そうよ。だから、広瀬兄弟と私に対しての噂は理絵には流せないのよ。コーヒー沸いたね。ブラックにする?」

「いや、俺自分でやるからいいよ。ありがと。ところで、その書類はすぐに出すものか?」

「違うよ。来年度予算案のベース。募集定員から生徒会費として徴収がいくら来るか分かるからね。それと在校生の数から来年度の収入ベースは分かるから、予算分配を簡単にしているの」

「本当に真面目だな。お前」

「直前にやるのが嫌なだけ。今は比較的に暇な時期じゃない?3学期って定期テストだけだし、検定もないでしょ?とりあえず、予定総収入が分かったからいいか」

私はコーヒーを片手に作業を止めて、引き出しに資料をしまう。



「ところで、会計監査は?」

「2学期の終わりにやっちゃったよ。基本的に変なお金の使いた方はないんだけども、テニス部の内訳の一部をこっちで訂正した位?」

「どれ?」

「ちょっと待って…」

私はテニス部の収支報告書を開いて太一に見せる。

「これは…ダメだろう」

「でも、これを交流会に書き替えたの。テニス部も了承してくれたから。もう今後はないと思う」

「ご苦労さん」

「でも、あいつ、どこからかその話を聞き付けて、生徒総会で噛みついたんだろう?」

「そうね。でも、その結果が写真部の会計に不備がある事に気がついたんだけども…来年度の監査できっちりと締めあげる」

「典型的な奴だな。自分がやってるからって…ヤツ?」

「そういうこと。写真部の件は、そのうち私から報告する。とりあえず真奈がカメラ専門店とかで調べてくれてる」

「相変わらず抜かりないな。俺に出来る事は?」

「そうね。何も言わない事…だけ」

鞄から、チョコレートを取り出して、ちいは俺に渡してくる。



「食べるでしょう?」

「サンキュー。そう言えば、英語部にも噛みつきやがったな」

「うち見たいな零細部に噛みつくなんてって言いたかったけど、章代がきっちりと言ってくれて助かったよ」

「本当だよな。うちは最低限しか要求していない訳だし。俺達の持ち出しでやってるようなものなのに」

「文化祭の費用と流用だと?ふざけんなっての。確かに文化祭で買った文房具ってその後も使うのはどこだって同じじゃない」

「まあな。そこは、他の美術部とかも反論してくれたけどな。うちの部が優遇されてるなんて噂があったみたいだし…」

「それをいうなら、冷遇でしょう?最低限の文具を買って、録画用のビデオテープ位しか買ってないのに」

俺は地位に貰ったチョコレートを口に放り込む。チョコの甘さが心地いいって事は、俺も疲れているってことか。

「そうだよな。肝心なビデオテープは部員の家から借りているってのに」

「私達が卒業したら、英語部終わりじゃない?1年生は幽霊だし…」

「確かにな。それはそれでいいんじゃないか?」

俺はあっさりと肯定する。

「千世先輩が言ってたけど、英語部の元は英検対策研究会だぜ?」

「成程ね。私達…皆2級取っちゃったものね。後は準1級か。そろそろ始めないとまずいね」

「本来の部活の原点に戻ってみないか?一年生が入ったら別にして」

「そうね。そうすれば、重箱の隅をつつかれる事もないしね。写真部と言えばさ、コンテストに出したってエントリー料を払っているんだけども、写真を出した形跡がないの。それと、写真部のカメラは個人なのに、なぜかレンズを購入している…何だろう?」

「レンズは、皆が機種を揃えれば買えなくはないけど、それはまずあり得ないな。真奈は知ってるか?」

「まだ…そこまでは。コーヒーのお代わりは?」

彼女は空になったマグカップに気がついたらしく聞いてくる。



「後は一人でやるさ。他に胡散臭いのは?」

「なくはないけど、野球部だから目をつぶってる」

「それは何?」

「ストップウォッチを12個買ってる事。陸上部じゃないから、そんなにいらない。しかも単価が高い」

「良く見ると分かるから、今度は部活を除きに行こうと思う。そうしたら本当か分かるから」

「悪いなぁ。そんな事させて」

「これが仕事でしょ?社会に出たらもっと嫌な事あるって」

彼女は屈託なく笑っている。俺は改めて入れたコーヒーを一口すする。

今まではそんなに飲まなかったのだが、生徒会に入ってからはのめるようになった。



初めて、ちいを見てからもうすぐ2年。俺達の距離はあり得ない位に近くなった。

ずっとそばにいるから、あいつが誰を追っているかなんて分かる。

徐々に心を開いていった切っ掛けが、俺なのか?あいつなのか?それだけが知りたかった。

「太一、さっき言ってた噂って…今度は何?」

「知りたいか?」

「私の事でしょ?もちろん当然でしょ」

他の奴なら、躊躇いもなく言えるのだが、今回はどうしても言いたくなかった。

言ったことでちいは傷つく。けど、俺以外の奴からは聞かれたくない。

俺は深呼吸をしてから、彼女を見た。

「ちい、今な、お前がすぐに男に抱かれるっていう噂が運動部を中心に回ってる。安心しろ、バスケ部が否定してるし、同時に出先を探ってくれてる」

彼女はショックを隠せない。今まで出た噂の中では一番悪質なものだ。もちろん、当の本人はそんなことをする訳がない事を俺は誰よりも知っている。



「ねぇ…それって、どうやって証明するのかな?やっぱり…病院…だよね」

ポツリと彼女は呟いた。何かの解決策を見つけたみたいだ。

「ちい…」

「太一、お願い。理事長に合えるように手配して。もう、一人では対抗できない。ごめん。太一…私…皆も太一のパパも巻き込む」

「分かった。帰りに理事長室に寄ってみる。その位構わないぜ、俺は。あいつらもだろうな。この話は、皆に話すのか?」

「まだ…いい。それより、早急に噂の否定を止めさせて。否定しているのは、とも君と山本君よね?違う?」

「その通り。…で、どうするんだよ?」

「一度、その噂を校内に蔓延させて、私を生徒指導部送りにして。私は身の潔白を証明するから」

「できるのか?」

「さあ?できたとして、その上で、私が大泣きして生徒指導部から飛び出して偶然を装った誰かに拾われて、更に事を大きくしてやるってのはどうかしら?」

「どうって…お前、捨て身すぎ」

「犯人が理絵と仮定しての話だけども…。あいつの目的は面白おかしく広げるのが目的でしょ。生徒指導部沙汰までは考えてないと思うんだ」

「今まではな」

「そこに私が仕組むシナリオが計算外な訳でしょ。だと、すれば今回の私の計画が成功したら、あいつも暫くは潜伏するわ」

「暫くでいいのか?徹底的に叩かなくても」

「けれども、私がそれを利用して仕掛ける事がばれてしまうリスクもあるの」

「お前が本気なら、俺に任せろ。もちろん、俺達がお前のバックにいることを悟られないようにこっちも仕掛けるさ」

「どうやって?」

「それはこれからさ。今は理系にしか回ってない。いつもと同じで」

「やっぱり…バレテルの気がついてないってことか」

ちいは大きな溜め息をついた。彼女の気持ちが分かる俺はとても切ない。



「で、親父は?」

「とりあえず、今までの事…確執の事から全て話すわ。すぐに処分して欲しいわけじゃないからあいつが18歳になるまで有責になる実績を積んで貰わないと。その時になってあいつを相手に損害賠償訴訟を起こそうかと思って。で、学校は一応ポーズで内容証明送らないとマズイよね。その事に対しての事前承認ってやつ?その時は太一もいてね」

「そう言う事か。分かりました。付き合いますよ。この話は誰までがいいんだ?」

「真奈はそのうち。あの二人は熱血だから、次にあいつが何かをやらかしたその時に」

「了解。先輩達は?」

「今はいい。何か疲れたわ」

「本当にな。それにしてもあいつ必死じゃないか?」

「うーん。やっぱりそう見える?」

「太田君に聞いてみたらどうだ?何か分かるかもしれないぞ」

俺は、彼女の地元で彼女を心配している幼馴染の名前を出す。

太田君も…彼女の事が好きなんだろう。学校をサボって俺らの学校の文化祭に毎年潜り込んでいるのだから。

「そうだね、創君に聞いてみるね」

「…で、お前は帰らないのか?」

「あのね、藤原先生が家まで来るまで送ってくれるっていうからここで待ってるの」

「ふうん。一人でか?」

「違うよ。とも君と私と伊藤君も一緒だよ」

伊藤?理系クラスにいる、ごつい男の事か。

「伊藤はなぜに?」

「藤原先生と伊藤君の家が近いんだって。私達は昼休みに帰りのバスの話をしてて…あんまりにもないのに驚いた先生が送ってくれるってなったの」

「で、広瀬はどうするんだよ。」

「とも君は、6時におじさんが家に帰ってから、家に迎えに来てくれるの」

「ところで、直也先輩は?」

「なお君は、有也先輩に家に泊まるんだって。二人とも自由登校になったでしょう?」

3年生は明日から卒業式1週間前まで自由登校になる。

「そうか。進路先が離れたんだっけ?」

「うん、だから、二人でどっかに行くんだって。行き先教えてくれなかった」

「お二人らしいと言えばらしいよな」

俺は彼女に聞きたい事があった。今それを聞いてもいいだろうか?



「ちい、聞きたい事があるんだけど」

「何?」

俺は、やっぱり聞くことにした。

「お前、広瀬の事…好きだよな」

「うん。そうね」

あっさりと肯定する。ちょっと拍子抜けしたが、もう一歩踏み込むことにする。

「お前はさ、広瀬に恋しているのか?」

「うーん、それはどうかな。ずっと側にいるし、見ているからね」

「ああ」

「だから、好意の延長なのか、恋なのか?恋をすっ飛ばして愛なのか分からない」

「分からないか。そりゃ…厄介だな」

「うん、今の私は、恋心を出しちゃいけないの…太一だって分かっているでしょう?」

「俺なりに分かってるつもりだけどな」

ちいは、溜め息をついてから、俺を見る。



「だったら…分かるんじゃない?答えが。今まで、私と広瀬兄弟がそういった話題にならないのは、なお君の事があったとしても、中学前からの私達の関係をそのままここに持ち込んできた事。とも君が弟キャラでいてくれるから、おふざけをしても、ハグをしても皆がじゃれてるとしか見られるような所でしかしてないから。それに対して、なお君が呆れながら止めてくれたから。なお君がいなくなることで、そのバランスが崩れる事が一番怖い。それだけ…私はなお君に甘えていたのね」

「そんなことないさ。お前なりに考え抜いた結論だろ?」

「うん」

「このままでいいのか?お前は?」

「じゃあ、太一は?どう思う?」

「俺が広瀬なら…ぶつかって欲しい。あいつはお前の事もちろん良くも悪くも分かっているよな?」

「うん」

「広瀬が、お前を丸ごと受け入れるだけの器があるかどうかじゃないのか?」

「そうかもしれないね。でも、今私が動いたら…とも君に迷惑かからない?」

「だったら、二人でいる時だけでいいんじゃないか?素直になってみたって」

「二人だけなら…理絵には知られない。お前の本音が分かれば広瀬だって…受け入れるんじゃないか」

「お前達には時間があるし、今まで側にいた時間がある。誰よりも互いの事を知っているんだから」

「太一…それって…」

「広瀬がどこまでせいちょうしているかが見ものかな。あいつもそれなりに鈍いからな」

俺はこれ以上、話すのが辛くて堪らなくなった。

やっぱり、この二人の絆を壊すのは困難だと悟ったからだ。

口に出さなくても確実に二人は想い合っている事だけは分かったから。

俺はゆっくりと立ちあがって、マグカップを流しに持っていく。



「私がやっておくよ。そのままにしておいて」

「なんだ?ここで待っているのか?」

「うん。だから、一人でも大丈夫よ。ありがとね、太一」

「いいや、俺は好きでやっているだけさ。俺もお前の泣き顔をもう見たくないだけさ」

俺はちいの頭を数回撫でる。一瞬、その殻を抱き寄せたい衝動に駆られるけど、そこは耐えないと。

ちいもそうだろうけど、俺の気持ちも知られたら困る。

「じゃあ、俺、帰るから。親父の件は任せてくれよ」

「うん、よろしくね。お疲れ様」



「らしくねぇな。俺…全く」

誰もいない事を確認したうえで、俺は昇降口で本音を呟く。上靴を外靴に履き替えて外に出る。

そして寮とは反対側の児離島に向かう本当は一般校舎からも入れるのだが他の生徒に知られる訳にはいかないので、理事棟の入り口から入ることにした。



「それじゃあ、近いうちに時間をくれよ」

「そうだな。土曜日の放課後に家に来て貰うか?それでいいか?」

「分かった。ありがとう。親父」

「それにしても、あのこにそんな過去があったなんて」

「公にしている分はともかく、そうじゃない部分は隠しておいてくれな」

「分かっているよ。太一。お前は、彼女の事を…」

「好きだよ。でも、彼女は他の奴を追っている」

「どうするんだ?お前は?」

親父は不安そうに俺を見ている。普段は厳しい理事長なのにな。

「今は…このままで。でも、降られてもいいから気持ちは伝える。こんなに人を好きになった事、今までなかったから」

「そっか。父さんは、佐倉さんに感謝しないとな。恋なんてくだらないなんて言っていたお前に初恋を教えてくれたんだものな」

「何言ってんだよ。そんな訳ねぇだろ。雪が降ってるから気をつけて帰れよ」

「気にしてくれてありがとな。生徒会長さん、お疲れ様でした」

「それでは、よろしくお願いします」

人の気配がしたので、慌てて俺達は話題を中断して俺は部屋を後にすることにした。

これだけ話せれば後は、土曜日でどうにかなるだろう。



親父達の離婚が、俺の恋愛観に影響があると思い込んでいたようだ。

絶対にないとは言えないけど、ちいに合わなければ恋をしなかったとも思える。

その事には本当に感謝している。

今まで、理絵にやられっぱなしの彼女が反撃すると言う。

その方法を聞いた俺は正直ゾッとした。

あいつのシナリオのラストは、理絵を学校から抹殺する事だった。

どこまで実効するかは分からない。理絵が起因となった事があまりに多くて普通なら…心が壊れてもおかしくない。

恐らくちい自身もぎりぎりなのだろう。



何とか掬ってやりたい。俺の恋は報われなくてもいいから。広瀬が見たと言うちいの笑顔を取り戻すために。

次は健&章代の二人の場合…秘密を知った二人は?

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