Parallel 君と二人で 幼馴染組1
雪をモチーフにしたパラレルシリーズ。
最初は幼馴染組の創。高校1年の冬の日の出来事です。
若干、今後の本編の流れをくんでおりますが、本編はそこまで進んでません。
今までの事がネタにもなってますので、不明な点は本編第1章をお読みください
side創
その日はいつになく寒い日で、いつものように朝の駅前で彼女を待っていた。
「おはよう。創くん。今年は本当に寒いわね」
俺の長年の片思いの相手のちいが白い息を吐きながらやってくる。
「ああ、おはよう。確かに寒いよな。この調子だと雪が降るかもな。
「えっ!!寒いじゃない。それは嫌だわ」
心底嫌そうな表情をして彼女は答える。
その顔さえ可愛いと思う俺は相当彼女に惚れているようだ。
「今日は自転車?」
「そうだけども、雪が降ったら、歩いて帰るよ」
「そっか。だったら、俺、駅で待ってるから一緒に帰ろう。こんな日にちいを一人にはできないしな」
俺はニヤリと笑う。
ちいは頬をぷぅと膨らませて俺を軽く睨む。怖いよりも抱きしめたい位に可愛い。
「どうせ。すぐに転ぶとか言いたいんでしょ?ひっどいなぁ」
「そこまで言ってないし。それよりも良く膨らむ頬だな。お前の前世はシマリスか?」
俺はそんな彼女の頭を数回撫でた。細くてサラサラな彼女の髪の毛が俺の指を擽るように通り過ぎる。
「とにかく、待ってるから、ゆっくり戻ってこいよ。ちいは時間だろ?行って来いよ」
「うん、わかった。創くん。行ってくるね」
彼女の乗る電車の時間が近付いたので、俺は彼女にホームに行くように促す。
彼女はにっこりと笑ってからホームに向かって歩き出した。
無事にホームについア彼女を見て、ホッと息をつく。
こないだはつい話をしすぎて1本電車の見逃してしまったからだ。
君塚に向かう電車は俺達が使う千葉方向と違って本数が少ない。
ぼんやりと俺は彼女を見つめる。
見ている俺に気がついたのか、ちいが俺に向かって大きく手をぶんぶんと降っていた。
俺も彼女が分かるように大きく手を振っていた。
やがて、ゆっくりと電車がホームに入り込み、彼女の姿が見えなくなる。
「おはよう。創少年。青春してますなぁ。甘酸っぱい事」
「本当に。朝からご馳走様:
気がつくと、俺の両側を静香と雅子に囲まれる。
「はあ?いつも、俺らはああだけど?」
「あっ、そう。で、ちいからの返事はどうなのよ?」
「ない。この距離感が俺達にはちょうどいいんだよ」
「辛くないの?幼馴染以上恋人未満」
それでも、こうしていられるんだから…俺はそれでもいいと思ってた。
彼女に告白してから、もうすぐ1年。
告白の返事と言うよりは、彼女の本音は聞いている。
『あいつが私の側にいる限り、私が誰かを選ぶことで不幸の連鎖が続くと思うと、怖くて選べない』
俺は彼女が言いたい事が良く分かった。
もう、誰も傷つけたくない。
俺は彼女の気持ちを優先して、今の曖昧な関係を続けている。
「で、彼と理絵はどうな訳?」
「さあ?別れたとは聞いていないから。それとあいつに言ってどうなるか?」
「それこそ…傷口に塩を塗る気なの?」
「…だよねぇ。私達の望みは一つだけ。違う?」
「あぁ。ちいの笑顔を守る事…だろう?」
「分かっていればいいの。私達もいい加減に学校に行きましょう」
静かに促されて、俺達も駅の中に入るのだった。
学校に着いてもドンドン冷え込む天気は憂鬱なものでしかなく、昼休みの頃にはチラチラと雪が降り出した。
俺は駅でちいを待っていればいいかとぼんやりと思っていた。
「太田。俺、帰る」
富田がデイパックを手にして俺に告げる。授業をサボってどこに行くんだか。
「ふうん、どこまで?」
「君塚まで。雪が降ったら二人でサボる約束していたからさ」
「へぇ。また明日な」
俺は富田に手を振って答える。
「太田、お前…あいつとは…?」
「富田。お前らと同じ関係じゃねぇよ。一緒にすんな」
「あぁ。分かったよ。悪かったな」
俺がキツイ口調で、なおかつ睨んだのを見て、富田はそそくさと逃げ出した。
「そんな事を聞く位なら最初から聞くなって言うの」
俺は一人ごちる。あいつの行動は、地味に俺の心を傷つける。
なんだかんだ言っても、あいつら二人が幸せなのが、俺としては気に食わないんだろうな。
理絵が何をしたを知っている俺としては。
「太田君…大丈夫?」
「俺は、何も」
「私も知ってるから。彼と理絵が付き合っているの。ちいの前の彼氏な事も」
同じクラスの智子に言われて、俺は唖然としていた。
これ以上、あいつを傷つけたくなくて、中学の連中には極力知られない様に俺たちなりに気を配っていたのに。
俺達が漏らすはずがない。どこから情報が漏れたのだろうか?
「こないだの同窓会。大和田君もちいも時間できっちりと帰ったでしょう?」
「ああ。そうだな。行かないってのも不自然だから時間だけいるって事で参加したんだから」
「その後に、富田君が理絵を迎えに来てね。嫌味な位にいちゃついてくれてさ。しかも富田君ったらちいは?って聞いたものだから」
「もちろん、私が帰ったって言ったら、理絵が、今のあの子は気に行った男に対しては態度が違うって皆の前で言い捨ててから帰ったの」
「そんな訳ないだろう。何を考えているんだ?あいつは?」
「さあ?でも、クラスの皆はそんな話は信じていない。去年の事があるからね」
「当然。あいつは理絵の存在を問題視していて、高校の間は理絵に好きな人を悟られないようにしないとが口癖な位だぜ」
「そうなんだ。ねぇ、謝恩会でちいが泣きながら歌った、あの歌の相手は本当は富田君なんでしょ?違うの?」
こうなると、智子には隠せない。俺が知っている範囲で去年あった事を智子に簡潔に話した。
「って事は何?理絵の策略に皆が乗っかって、踊らされて、あの二人は引き裂かれたって事?」
「智子、確実な証拠がないんだよ。でも、あいつの本性を知った俺らはそう思ってる」
俺は悔しくて、握った手が白くなっていた事に今になって気がついた。
「その上、空いた彼女の座を…か。怖いや。ちいは…あの子は今…どうなの?」
「クラス編成的には一緒になってないし、理絵だけがクラスが違うらしい。やりたかった写真は理絵と部活見学であったからって結果的に入部していない。いつもは、広瀬先輩達と生徒会役員をしていて、役員の先輩から誘われて英語部に入ったって聞いてる」
「ふぅん、ちいも必死になって逃げている訳ね。だったら、なぜそこまで執拗に追いかけるの?」
「自分の悪事が完全に露呈しない為だろ。あいつらしいと思うけどな」
俺は呆れながら持論だけどなと前置きをしてから言う。真実は理絵しか分からない。
「でも、ちいは元気なのね」
「見た目はな。本当の所は分からない。あの日からほとんど本音を言わなくなってるからな」
俺がそう言うと、智子は深い溜め息をついた。
「太田君…辛くない?そんなちいを見てて…」
「俺は、あいつを側で守るって決めた。それだけだ。授業が始まるぞ」
俺は智子に席に戻る事を促した。
俺だって、十分な程分かってる。
こんな状態がいいはずないって頃。
でも、この状況を望んでいるのは他ならないちい自身だから。
俺達は、その希望に従うだけだ。
外の雪はドンドン深くなっている。
肯定もうっすらと白くなっている。
窓際の俺は、授業を聞かずにぼんやりと外を眺めていた。
放課後、いつもはする寄り道をしないで、俺は真っすぐ地元駅まで帰ることにした。
富田と理絵は何をしているのか分からないけど、こんな寒い日位は彼女を一人にしたくなかった。
多分、家に戻っても広い家に一人だろう。
ソレはあまりにもかわいそう過ぎる。
こんな日位、彼氏ではないけれども、ちい…君と二人でいたい。側にいたい。
地元駅に着くと、他校に通っている同級生に会った。
皆、聞いてくる事は一つだけ。同窓会での理絵の態度と行動について。
本人達が幸せなら別にいいのではないのか?と切り捨てる。
ちいはこの事を知っているのか?とも聞かれたので、知っているからそっとしてやってくれよと答えるのがやっとだった。
一通り答え終わった俺は、駅舎内のベンチに座って宿題をこなしながら彼女を待つことにした。
雪で冷えるからだろうか?いつもはないストーブの温もりが心地よい。
ストーブの火が、ささくれた心を癒してくれるようだった。
「創君、ごめん。待たせたよね。これでも、急行になって急いで来たんだ」
少し息が切れている彼女の荷物を持ってやる。学生鞄のはずなのに軽い。
「ちい?」
「いつもはちゃんと持って帰るよ。けれども今日は宿題以外置いて帰ってきちゃった」
「そっか。それじゃあ帰るか」
俺達はゆっくりと歩き出す。
バスを待っていても時間通りには来ないだろうから、歩いて帰ろうという彼女と一緒にうっすらと積もった雪道を歩く、
サクッ、サクッといつもよりは人通りの少ない通りでは俺達の歩く音だけが優しく響く。
「積もるかな?」
「どうかな?無理じゃないか?明日は学校か?」
「私の方は…休校になった。元々明日は午前中だったしね」
「なんで?」
「明後日が付属中の入試日なのね。当日は私は役員の仕事で学校に午前中は行かないといけないの」
「ふうん、俺らも、明日は休校だからさ、あいつ等が休みなら遊ぶか?」
俺はちいに聞いてみる。ちいは目を輝かせる。
「うん。皆に会いたい。いいの?創君も休みなのに」
俺の事を心配して彼女も俺に聞いてくる。
丁度赤信号で止まった俺達は見つめ合う。
意識したくないのに、嫌でも意識してしまう。
「ちいは気にしすぎ。…隙あり」
俺はちいの額にデコピンをする。
「いったぁーい」
「俺がいいって言ってるんだから、甘えなさい。いい?」
「はい、ありがとう」
はにかむように俺を見る。今の俺達の立ち位置がもどかしい。
まだ距離を近づけるときではない。やがて信号が青に変わる。
「とにかく、帰ろうぜ。寒いから、俺の家に寄って行くんだろう?」
「多分…靴も靴下も濡れちゃうよね。やんなるなぁ」
「だったらさ、母さんので良ければ借りて帰ればいいんじゃないか?明日は家に来るんだからさ」
「そうだね。それじゃあ、早く帰ろう」
「ほら、もっと通路沿いを歩けよ…危ないだろう?」
俺は道路沿いを歩こうとする彼女を引っ張る。
「確かに危ないね。私ってダメね。ありがと」
「大した事ねえよ。雪が小ぶりなうちに帰りたいだろ?」
俺達は雪の降る中、二人で並んで帰るのだった。
今度、君と二人で帰る時があったのなら、その時は距離を詰めるからなと、俺は決意を固めるのだった。
本当は、一番好きなキャラは彼なんだけどね…。
本命ではありません。結果的に途中でフェードアウトします。
最終的には違う人と歩みますが、彼女のことを最後まで守ろうとします。
創の名字が違っていたので訂正しました。




