番外 偶然は必然の始まり
本編のK学園で大泣きだったちいを見た第三者視線。
第2章からの登場人物太一とちいのファーストコンタクトです。
…とは言っても、ちいはまだそのことを知りません。
時期は、高校1年入学して10日位後のことです。
「あの子…どうしたんだろうな?」
「さあな?ただ、側にいる奴も迷惑だよな」
「確かに、緊張で泣いたのなら分かるけど、帰りの方が激しかったな」
「あぁ。声を出さなくても涙って出るのが分かったよ」
「すごく悲しい顔をしていたな」
「同じ学校になるんだろうか?」
「さあ?私立校だからな。必ず同じになるとは限らないだろ?」
「そう言われたらそうだな」
滑り止めの受験帰り。受験校に行く途中で、声を出さないで悲しげに涙をこぼしている子がいた。
受験が終わってからの電車でも、その子と同じ電車になった。
その時もやはり彼女は泣いていたが、朝よりも激しく泣いていた。
声を出す事もなく、ポロポロ零れおちる涙。
何が原因で泣いているのか、同じ学校だと思われる集団も分からず途方に暮れていた。
千葉に着いて、俺達は方向が違って電車を乗り換えたようだ。
で、俺の友達が思い出したように彼女の話題を始めた。
「ああいうのを儚げっていうのだろうか?」
「そうかもな。でも俺は蜻蛉のように思えた。歩いているのに揺らいでいる感じがしたな」
「だけど…本当の彼女はどんなひとなんだろうか?」
「泣いていない時ってことだよな…気になるな」
俺達は顔を見合わせた。
俺達が見たのは、儚げな頼りないちょっと小さな女の子。
普通の男だったら、守ってやりたくなる衝動に駆られるだろう。
「そういえば、彼女の知り合いの男に抱きしめられてたな」
「そうだったな。でも…彼氏じゃないみたいだな」
「そうだな。もしかして魔性の女系?」
「どうなんだろうかね。そうは見えなかったが」
俺達は何も知らない彼女の事をかなり長い間話していた。
「もしも…同じ学校になったら、見守ってやりたいんだろう?太一?」
「えっ?」
「多分…お前の好みになるんだろうなって気がしたからさ」
「何を言っているんだよ。俺の好みははっきりとした子で、ああいう子ではないぞ」
「でもさ。俺の戯言だ。忘れてくれ」
「あぁ。そうしてくれ」
俺らを乗せて電車は揺れている。
彼女は涙を目に溜めたまま同じように電車に乗っているのだろうか?
確かに気にはなった。
あんなにきれいな泣き顔を俺は見た事がなかった。
俺の覚えている範囲の女の泣き顔は醜く歪んでいるように見えた。
どうして?何があったのか?
初めて見た彼女にとても関心があった。
友が言っていたように、同じ学校になったら彼女に近づくだろう。
そして…彼女を見守る…そんな気がした。
それから2カ月後、離婚した父が理事長をしている高校でその彼女と再会し、しかも同じクラスになったのは偶然ではなく必然と思いたい。
彼女はあの日泣いていた事を俺に見られた事を知らない。親しい友人も出来たようだが、自分のパーソナルスペースに踏み込ませない。
っていうか、その事に関しては、何重にもめぐらせた有刺鉄線で拒絶しているようにも見える。
やはり、あの涙の件でそうなってしまったのだと考えた方がいいと思う。
文化祭実行委員に立候補して、今はクラス委員になった俺と一緒にクラス企画を一緒に考えている。
「綾瀬君…おーい、どうしたの?」
俺はどうやらあの日の彼女を思い出していたようだ。
「悪い。ちょっと考え事」
「珍しいのね。綾瀬君が呆けているなんて」
「そんなことないさ。俺が完璧な人だと思っているのかい?」
「そんな事は思っていない。どんなに完璧な人だって、何かが足りない。だから誰かを求めるんでしょ?」
「お前がそんな事を言うと凄く深いな。お前の方が完璧な気がしたぞ」
「そんなことありません。白鳥の様に水面下では必死だもの」
俺は彼女の言った言葉の意味が分からなかった。
その言葉の本当の意味を知るのは、もっと先の話…。
第2章を始める予定でしたが、本編にプロローグ的なエピを差し込んだら…なんか違和感を感じているので現在修正中です。
なので、先行として一話載せておきます。




