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番外編 君は誰のもの? 後編

3人の本音が分かります。


side創



「俺が、彼女を意識したのは…多分2年生の頃。授業中に怪我をして、秋の遠足に行けなかっただろ?あの時にいないのが寂しいなって思ったのがきっかけだと思う」

「へぇ…そんな頃からなんだ。初耳だな」

義人は俺の話し始めた話に興味津津らしい。

俺自身、自分自身の事をあまり人に話さないからな。

「怪我の時にとかに手伝ったりするだろ?そうするとすぐにごめんね、でも助かった。ありがとうって満面の笑みで言ってくれるんだ。それを一人占めしたくなった」

「ちいの満面の笑みは…破壊力抜群だものな」

「そう。それにクラス替えがあってもずっと一緒なんだから…運命だとか思いたくなるだろ?女の子っぽい話になるけどさ。そんな話も二人でしたときにさ…」

「ちいちゃん…なんて言ったんですか?」

「それがな…創君がずっといっしょで良かったわって言ったんだよ。こっちの気持ちも知らないで」

俺はそう言うと溜め息をついた。

「ちいが、計算でそう言うことは言わないだけに…」

「性質が悪い。けれども、言われた俺は嬉しい。そんなことがずっと続いているのが今の俺達な」



「…過程は分かりました。創先輩は、ちいを…彼女をどうしたいんですか?」

広瀬は確信をついてくる。そこが…今、一番の問題なのに。

「俺は…手を繋いでいたい。今のあいつは迷子になって見つかってすぐの子供の様だ」

「何となく…分かるけどな」

「ってことは、創先輩は甘やかしたいってことですか?それだと、彼女らしさがなくなりますよ。それを望んでいるんでしたら別にいいんですけど」

広瀬は意味深な事を言ってくる。

確かに彼女を甘やかしたい気持ちはある。

今まではずっと一人で頑張ってきたんだ。

そろそろ誰かと手を取ってもいいと思ってる。

それが俺ならそれが一番嬉しい。

彼女の笑顔を一人占めしたい…そこが俺の本音だろう。



side義人



「ふぅん、創ってそう思ってたんだ。知らなかったぜ」

「だったら、義人はどうなんだよ。言って貰おうか」

「俺はお前たちからしたら、役得なポジションだよな。絶対に」

創の告白を聞いて、感想をつい言ってしまった俺はとんだ藪蛇をつついたようだ。

俺は観念してあいつへの思いを口にするのだった。

「俺達…生まれてすぐからずっとそばにいたんだよ。互いの従姉妹の子としてな」

「あんまり言ってないよな」

「言う必要がないと俺達が思っていたからな。だから、一緒の布団で寝た事もあるし、お風呂も一緒に入ったし、いろんなところに行ったぜ」

「子供のころは…もういいさ」

「あいつの家の事はもう知ってるよな?本当な俺の両親が一緒に育てようとしたんだ。それをおばさんたちが強引に決めてしまったんだ」

俺は炭酸の入ったコップを飲む。

「ふぅ。おばたちはあまりいい話を聞いていなかったから俺達も警戒していたんだけど、気がついた時には遅かった。おばさん達と住んではいるけど、ちいの事は放棄している」

「放棄って?」

広瀬はそこまで彼女の事を知らなかったらしい。

「そう、彼女の面倒を一切していない。互いに単なる同居人位な感覚じゃないか?あいつの必要なお金は全て彼女の遺産からだ。金額的にはあるのは事実だが、それが遺産って思うとどうだろうな?」

「あるお金だからって簡単には使えないよな」

「そうだろ?創。でも、そのお金をおばさん達に狙われて、一部使われたんだよ。かなりの額になってて今度親族会議をすることになってる」

創も広瀬もハッとした顔をしていた。



「身内でもトラブルで、学校でも…だなんて」

「そうさ。理絵がどこからちいの遺産の話を嗅ぎつけたのかは不明だが、おばさん同士が繋がっている恐れはある」

「まさか…」

「分からない。ただ、理絵の家もちょっと複雑だから…な」

「そうだな。あいつの家も大変だからな」

「それってアレですか?弟さんにかかりきりってことですよね」

広瀬も大まかに知っているようだ。理絵の家は、長男である弟に親がかかりきりになっている。

その事は幅広く知られているようだ。

「そこのところも原因になっている気がするんだけども…分からねぇ」

俺は溜め息をついた。



「義人、お前はあいつとどうしたいんだよ?」

「俺か?俺は…あいつの隣で寄りそっていたい。辛い時は抱きよせられる距離感で」

「お前のそれって…役得だよな。意外に腹黒いんだな」

「今まで…騙されてたかもしれません。いきなり抱きよせても、警戒されなそうだし…ムカつく」

俺の本音を明かしたら、創と広瀬は言いたい放題悪く言う。

本音を明かすことって事前に決めたのにそれは…ねぇわ。



side智



「さあ、広瀬?」

「俺たちは本音を明かしたんだからな?分かってるよな?」

俺は義人先輩と創先輩に無言の圧力を受けた。

自分達がさっさとちいちゃんの思いを明かして、俺に対しては脅すのかよ。

それって…ちょっとあんまりじゃねぇの?

「俺は・・・ちいちゃんの眼が好きです。一度決めたら曲げない意思の強い所も好きです。俺もちいちゃんみたいにもっと強くなりたい」

俺は今まで誰にも話した事がない事を話す。

こんなこと兄貴でさえも知らない。

「けれども…先輩達の話を聞いて納得できました。今のちいちゃんは全てを拒絶している。何も望んでいない。気持ちは今は分かるよ」

俺は買ってきたポテトを口に頬張る。

「でもさ…いつまでも、それじゃ駄目だと思う。一人で歩けないんだったら、俺は背中を押して進めてあげたい。戸惑っているのなら一緒に考えてあげたい。それで一緒に歩きたい」

「ひ…ろせ…」

「お前…」

先輩達は俺を見ているだけだった。

「俺はやっぱり、弱いちいちゃんでも強いちいちゃんでもいい。ちいちゃんが本当のちいちゃんだったらそれでいい。どんなちいちゃんでも俺は受け入れる。俺なりに守ってやる」



「ふぅん、興味本意ではないんだな」

「今日もあんなにスル―されてるのにな」

「もう…いいじゃないですか。その話は」

謝恩会前の話を蒸し返されて俺は気分が良くない。

「でも…あいつ…待ってると思う」

「義人…なぜ?」

「あいつ、興味がないことに対しては、そっけないけど、お前には来れたらおいでって言ったろ?」

「あぁ、そうだったな」

「あいつ、本当は嬉しかったかもしれないな。最大のライバルかもな」

義人先輩に言われて、俺は少し嬉しかった。

少しは意識して貰えてるという事実が嬉しかった。



side創

「まぁ、本音は分かったぜ。今はあいつが回復するのを待とうぜ」

「そうだな」

「そうですね」

俺達は無言でうなずく。今の彼女に必要なものは忘れるための時間。

「あいつに笑顔が戻ったら…その時は勝負しよう」

「分かったよ」

「いいですよ。それまでは?」

広瀬は俺を真っすぐ見る。強い眼の力は俺をたじろがせるのには十分だった。

「お姫様を守るナイトだな。分かったか?」

「そうだな。了解」

「それでいいですよ。抜け駆けなしですからね」

広瀬はしつこい位に確認をしてくる。気持ちは分かるけどな。

「とにかく、兄貴の代わりで一緒に出かけるんだろう?抜け駆け禁止な?」

「えぇ?それもなんですか?」

「あぁ。だから休み中に俺も義人もあいつと二人で出掛けるからな。文句はないよな」

外は夕闇が迫っていた。そろそろ家に戻った方がいいだろう?

「何かあったら、連絡しろよ?いいか?」

俺は二人に告げてから椅子をずらして席を立つ。

「創?帰るのか?」

「あぁ。今夜は祖母が来るからさ、じゃあな」

俺はそう言って、二人を店内に置き去りをした。



今のところ、お姫様を取り合う椅子取りゲームは始まったばかり。

表向きは紳士的に行動するとは言ったが、二人とも申し訳ないが曲者に近い。

「俺のペースで振り向かせて見せるさ。あいつ等には負けられん」

俺は夕日を見て思うのだった。

絶対の俺のモノにしてみせる…と。





お姫様は最後に誰を選ぶのかな?

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