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番外編 君は誰のもの? 前編

本編のI will graduate something? 何をそつぎょうするんだろう? 20と21が前提の話です。

謝恩会後の夕方、マックに集まる男子三人(創・義人・智)。

彼女に対する想いと語っております。

原則は創の目線で進んでいきます

「とりあえず、何か食おうぜ」

謝恩会が終わったとの俺と義人はマックの前で呼び出したあいつを待っている。

「あいつ…来るかな?」

「来るだろう。絶対にな。俺はちいのことで話があるって誘いだしたから」

謝恩会の途中で自宅に戻ったちい。俺の予想では彼女はあの男と一緒に帰ったはずだ。

「義人…お前があいつの事が好きなことは薄々感付いていたけど…な」

「俺はお前が強かに伺っていたのは知ってたぜ。似た者同士ってことでな」

待ち合わせの時間は16時。今は約10分前。

早めに着いておこうと思ったら…既に義人がいた。



「…で、義人ってただの幼馴染…じゃねぇよな?」

「なんでだよ?」

「同じ幼稚園ってお前達以外にもいるのに、お前だけ義人君だろ?」

俺は今まで疑問に思っていたけど聞いたことないから聞いてみることにした。

誰が俺の最大のライバルになるのか分からないが、敵の持っているカードは知っていて損はない。

「俺達か…。俺達の母親同士が従姉妹なんだよ。あっ、亡くなったおばさんのほうな」

義人はあっけらかんと俺に応える。

中学2年で引っ越したけれども、その前は彼女と同じ町内に住んでいた。

親ぐるみ、親が亡くなってからは親身になっていたことは容易に想像できた。

義人の彼女への想いが、同情から転じたものか、本心なのか分からない。



「そうなんだ」

「あぁ、あいつはそう言った事を言わないからな。俺もお前に聞きたい事がある」

「あいつも何でお前の事を名前で呼ぶんだよ」

「俺の方も似たようなもんだな。俺達9年間ずっと同じクラスだったんだよ。で、小3の時に名前で呼んでって頼んでから現在に至るって訳だ」

「ふぅん。ってことは、恋と自覚して呼び方を変えさせたって事か?」

義人の質問に俺はぎくりとなる。こいつ…変な勘は鋭いんだよな…気付かなくってもいいのに。

「どうだろうな。お前だって、特別に呼ばれることで優越感を持ってたんだろ?」

「否定はしないし、肯定もしない。ただ、その頃には秀紀がいたけどな」

「…らしいな。ってことは俺達は報われない片思いをしている訳だ」

「そうなるな。しかも同じ相手に。…なんだかなぁ」

俺達は顔を見合わせて溜め息をついた。



「遅くなりました」

息を切らせながら広瀬がやってきた。

「まぁ、お前は学区の端から来るんだからしかたねぇよ。とりあえず入ろうぜ」

俺達はマックの店内に入った。

無事に頼んだものを各自で持ちながらテーブル席を確保する。

夕方のマックは俺達の年代のグループがいて騒がしい。

その方が俺にとっては好都合だ。

「広瀬、お前…俺らに聞きたい事があるんだろう?」

俺は早速本題を切り出した。

「そうですね。ちいちゃん、彼氏と別れたんですか?」

「っていうか、こいつ知ってんじゃん。創?」

広瀬はあっさりと別れた男の事を口にした。

疑問形ということは別れた事までは理解していないってことか。

じゃあ、彼氏がいた事を知っているってことだから説明は簡単に済む。

俺は頼んだコーラを一口飲んだ。



「あぁ、二人は別れている。しかも、彼の方から一方的に別れを告げられたそうだ。K学園の受験の前の日の夜にな」

俺は現実として淡々と説明する。今は変な私情挟む必要はない。

「嘘…だろ?俺が見た時はすっげぇいちゃついていたのに…」

広瀬はそう言った途端、言葉を失くした。

「とにかく、俺は別れた翌日のあいつを見ている。とにかくあの日は何があったのか分からなかったからな。それにあんなに壊れてたあいつは初めて見た」

「義人…そんなに壊れてたのか?俺はK学園は受けてないから知らないが」

「あぁ、あの男を見た途端に両目から滝の様に涙を流したんだよ…あいつ」

俺は声も出さずに静かに泣く彼女を想像してみた。

その姿はあまりにも悲しげで、どうしてその場に自分がいてやれなかったのか後悔した。

「それでも、あいつ試験を受けて結果的に受かってるんだからまた凄いよな」

「そうですね。ちいちゃんは有言実行な人だから」

広瀬は言葉を選んで答えている。確かに今までの彼女は有言実行だ。

これからは…どうだろう?



「ところで、お前謝恩会の前に言った意味は?」

俺は広瀬の一番気になったことを聞いてみた。

「意味?意味ですか?そのまんまですよ。お二人は今からS高に進路変更できますか?」

広瀬は力強い眼で俺達を見る。その目には意思が込められている事は分かった。

「今更…無理だな」

「あぁ、君塚までは行けるけどな」

「俺には兄貴がいます。この話は兄貴に言ってもいいですか?」

「なぜ?先輩が?」

「兄貴は生徒会副会長だそうです。生徒会の後ろ盾があれば下手に手を出されないでしょう」

俺達は広瀬が隠し持っていたカードに驚いた。

ってことは、広瀬先輩もあいつを守るって事になるのか。面倒くさいな。

「大丈夫ですよ。先輩方、兄貴には生徒会長の彼女がいますから。ちいちゃんにとっては最大のガード役ですよ」

俺は義人と顔を合わせた。

義人は頷いている。仕方ないか。

俺らで守ると言っても…正直に言うと限界がある。



「で、先輩達は、ちいちゃんのことどう思ってるんですか?俺は好きです。最初の大げんかの後から」

いきなり広瀬が切り出してきた。最初の大げんかというのは俺達は詳しく知らない。

「それって、静香達のいうプールの大げんかか?いったい何があったんだ?」

俺は広瀬に大げんかの真実を聞いてみた。

「アレは…勝ちに取りにいこうとしたちいちゃんの狙いを先生が潰そうとしたから」

「成程…な」

「あの頃のちいの泳ぎは市内で勝てたのは3人だけだからな」

「ちいより早いのは3人いたのか」

「もっといたかもしれないけど、真っ向勝負をかけるのが3人ってことさ」

「うち一人は7月の市民大会で競り勝っているし、記録更新があったから種目が被らなかった」

「ふぅん、一人は恵理先輩でしょ?平泳ぎだけは勝てないってちいちゃんから聞いたことがある」

「そうだ。一人は恵理。でも恵理は同じ学校だから被るなんてありえない。問題は最後さ」

義人はそう言うと溜め息をついた。

「もう一人はクラブ時代の同期のかおり。5年のレースでは被って負けてるし、かおりだけはどうしてもあいつは勝てないんだ」

「…思い出しました。ちいちゃん、あの時かおりに勝つには種目変更しかないし、市内で私より早い人はいないって言ってた」

「7月の市民大会で結果的にレースで泳いだ競技の優勝者だからな…ちいは。でも、先生は種目変更を認めてくれなかった」

「エントリーできないなら、ボイコットする。学校のプライドなんて知らないって所で…お前が噛みついたんだよ。広瀬」



義人はそう言ってから俺達を見ていた。

「そこまでは知らなかった。ちいちゃんはそこまでは言ってくれなかった」

「そりゃそうだろ?人によれば、市民大会の結果は知らないし、ちいは市内の記録には興味なかったからな」

義人の話す彼女は俺の知らない彼女だ。そんな彼女を知っている義人と広瀬に俺はいい気がしない。

「…で、どうやって想い通りにしたんだ?」

「あいつは、正木を犠牲にしたんだよ。ちいの背泳ぎと正木のクロールのベストがほとんど同じだからって。本気でレースをしたんだよ」

あの当時の彼女を覚えている俺は納得できる。やりかねない。

「その後に大げんかをしたのはお前。あの時のあいつはなんて啖呵を切ったか忘れてないよな?」

「私は勝てる勝負にしかこだわらない…何で勝てるレースと勝ちにいかないの?正木にだって…負けない」

「そう。あの時は正木もスランプ気味だったから突破口を見出したかったんだろう」

「…で、結果は義人?」

「もちろん、ちいの読みの通り。学校としては大成功だった訳さ」

「ちいはその分、プレッシャーを感じてたと思うけどな。あいつそう言うこと口にしないから。ま、あの喧嘩の真実さ」



俺は今更だろうけど、その事が聞けて良かったと思っている。

確かに6年生の夏休みごろは、とにかくピリピリしていた記憶がある。

ちゃんと説明したらそんなことにはならなかっただろうに。

きっと、一番言わないとならない事を敢えて言ってなかったんだろう。

周りを把握しての彼女なりの行動はやっぱり凄いなぁと感心する。

俺の好きな女は…やっぱりデカイ。

でも…今の彼女は、イメージにすると迷子の幼子だ。

今は手を繋いで側にいてやりたい。手を話したらバラバラになってしまいそうだ。



「じゃあ、お前達とちいの係り合いは分かったよ。そろそろ牽制するのは止めようぜ。本音で話そうか」

俺はこいつらとダラダラを話をするつもりはなかった。

俺たちなりに、彼女を守っていきたいし、いずれは戦わなければならない相手だ。

一度本音で語ってみたいと思っていた。

「うぇ…マジッすか」

「あぁ、ちゃんといて貰うからな?とりあえず、あいつの事を今は守ってやらないとならないだろ?」

「確かにそうだな」

「そうですね」

「もちろん、創先輩から話してくれるんでしょう?」

広瀬は意地悪く俺を見て微笑むんでいた。

年下のいいように扱われている様な気がするんだが…深く追求するのは止めておこう。

「分かったよ。今まで誰にも話した事がないんだからな」

そういうと、俺は残っていたポテトを全部食べるのだった。



すみません、残りは後篇に持ち越しです。まずはあの日の大ゲンカの話です。

智との第一印象が最悪だった理由が分かってもらえたら幸いです。

ただ、事件を通しての彼女への印象が各自違うんです。

分かってもらえると幸いです。


赤裸々トークは後編で明らかになる…といいね…。

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