Parallel キラキラヒカル with義人
ちいは高校を卒業後、専門学校に進学します。
高専に通学している義人は君塚と駅で別れる生活をしています。
会う時はもっぱら、義人の実家からほど近いちいの家。
夏休みはほとんどちいの家に住み着いている…らしい。
天体観測はちいの家の庭で行うみたいですよ。
「たっだいま」
「お帰り。車は駐車場に止めた?」
「あぁ、止めたよ。今夜は何?」
「定番なんだけども、夏野菜カレーにしてみたの」
「おぉ。旨そうだな。後で貯金箱に入れておくな」
「ありがとね。溜まったら何を買おうか」
「俺は決めてるものがあるから…その時まで待ってて…ほらっ、眼を閉じろよ」
私は彼に促されて、お帰りなさいのキスを受ける。
これは私達の約束。おはようのキスは私からする。お帰りのキスは彼から。
幼馴染で、ずっと私を見守ってくれた彼の気持ちを受け入れたのは進路が確定した1月の末。
センター試験の結果が思わしくなくって、急遽専門学校に進路変更したのだ。
進路が決まると自由登校になって学校に通わなくても良くなったんだけども、
朝は一緒に彼と電車に乗って、再び戻ってビリーと暮らす家を探して、彼が帰ってくる時間に駅前で待つ生活。
部屋が無事に決まって、私はすぐに自宅を出てビリーと暮らし始めた。
高校の同級生の家で、住みたいと思っていた地域に親戚が不動産業をしている人がいたので紹介して貰った。
猫を連れていくという事が障害になっていたけれども、ファミリータイプのテラスハウスのこの部屋に決めた。ちょっと…家賃が高いんだけども、長期間住むにはいいかと思ったから。
今住んでいる家は、かつては地元の学区になっていたが、新興住宅地化で学区から切り離された。
電車とかはバスに乗って移動しないとないけれども、いずれは私鉄が乗り入れる事が決まっている。
彼も、私が受験に集中している間に車の免許を取得していて、この春からは学校へは車通学に切り替えた。
たまに電車を使う時もあるみたいだけど。
彼の家から自宅までは車で5分。私の家からは彼の家の明かりが見える。
私達の家は丘の上にあって、直線にすると少ししか離れていない。彼の家から私の家に来るには、車だと一方通行の道が最短になるので、回り道しないとならない。
最短だと、自転車でも3分で来れる。
「ところで、今夜泊めてくれよな」
「いつもはそんなこと言わなくても泊まるのに。そろそろ着替えを家にも置いたら?」
「そうだな。今度持ってこようかな。ありがとな」
カレーを食べた後、デザートのアイスを二人で食べる。
今日はカレーを食べたのでさっぱりとしたレモンのシャーベットにした。
「甘酸っぱいの…苦手…」
「ごめん、義人。じゃあ…甘くしてみる?」
私は横に座っている彼にキスをする。
いつもよりちょっとだけ長いキスをする。
「うん。甘い。だから…もっとしたい。キス以上も…したい」
「アイス…」
「冷凍庫にしまって、また食べよう…な?」
彼はそういうと、すぐに冷凍庫にアイスを仕舞ってしまった。
普段は比較的のんびりとしているのに、自分の意思が強い時は行動が早い。
これは褒めていいんだか、諌めた方がいいんだか…少しだけ悩む。
「お前は、耳元にキスをすると感じるよな…」
そう耳元で囁いてから、耳を食むようなキスを仕掛けてくる。
クチャッって音を耳で感じ、当時にゾクリとして体がピクリと跳ねる。
「もっと…して欲しいか?だったら…お願い。もっと感じて。俺の事」
耳からうなじに唇を這わせていた彼が再び耳元で囁く。
彼の方に振り向いて、唇を合わせる。角度を変えて合わせていく唇。
徐々に湿度を帯びて深くなっていく。
そうして私達は体を合わせていくのだった。
「ほらっ、ちい。起きて」
彼に優しく起こされる。体がけだるくて私はゆっくりと眼を開けた。
「悪い。つい…激しくしすぎた。起きれるか?部屋着なら何でもいいか?」
彼はチェストから私の部屋着を取り出す。
「今…何時?」
「11時だよ。流星群は12時頃からがいいから、一度起きて。おはよう」
そう言うと彼はチュッと音を立てて小さくキスをする。
彼はテキパキと衣類を着て、リビングで何かの作業をしていた。
「ゆっくり支度していいから。俺は庭で見れるようにするから。蚊取り線香あったよな?」
「うん。リビングにあるから。使っていいよ」
私はベッドの中で大きく伸びをしてからゆっくり起きだした。
「お待たせ。凄い。大変だったんじゃない?」
「そんなことないさ。ビリーこっちにおいで」
彼の準備を邪魔しているビリーを彼は抱きあげた。
ビリーとしては手伝っているつもりなんだろうけどね。
彼はレジャーシートの上に長座布団を敷きつめていた。
レジャー用のテーブルの上には、ペットボトルのお茶が用意されている。
「ほらっ、寝転んで。星をみるぞ。方角的には間違いないからゆっくり待っていよう」
彼はそう言うと、長座布団に寝転んだ。
「どうだ?今夜の天体観測は?」
「家で見るのも新鮮でいいね。まさか庭で寝転ぶとは思わなかった」
「だからいいんだって…ほらっ、流れている」
彼は星の流れを指差して教えてくれる。
「お願い事するのか?」
「こないだの七夕でお願いしたから…しない」
「そっか。もっと貪欲になったらいいのにな」
「私なりに…貪欲だよ?義人の夜を独占しているもの」
「バカ。そんなのは貪欲じゃない。もっと…欲しがってくれよ」
「前向きに努力します」
私がそう答えると私を抱きよせる。
彼の体温がひんやりした夜には暖かくて気持ちがいい。
「なぁ?俺が学校を卒業したら、大学に編入する」
「うん、知ってるよ。言っていたじゃない?」
「そうだな。それで…編入が決まったら…籍を入れよう」
「それって…義人…」
「結婚したい。泊まったりしていて、もっと一緒にいたいんだ。だから俺なりのけじめのつもり」
「おばさん達は?大丈夫なの?」
「今、籍入れてもいいって。相手がお前だからだろう?」
「そうなんだ。部屋はどうするの?大学に通うにはここは遠いわよ」
「そうなんだよな。でも、通えなくないからここから通う。駅前の駐車場を借りればいいだろう?」
彼なりに私の事を考えてくれていたみたいだ。
寂しがる私に、猫がいたらいいだろうとビリーを会わせてくれた義人。
一人暮らしを始めたころ、慣れるまでといって週末は泊まりに来てくれた。
こんなに彼に愛されてて、私はなんて幸せなんだろう。
「ちい…どうした?」
私は彼に言われるまで気がつかなかった。
私が涙を流している事を。
「幸せなの。幸せすぎるの」
「そっか。お前のその幸せ、俺にも教えて?俺もその幸せ共有してもいい?」
「うん。だったら、私も義人の幸せも悲しみも全て共有したい」
「いいよ。俺の全部あげる。だから、お前の全部も俺に任せてくれないか?」
彼は真剣なまなざしで私を見つめる。
そんな答え…私は一つしかない。
「バカね…義人ってば。私は全部あなたに委ねているわよ」
私はそう答えて、彼の頬にキスをした。
「ありがとう。ありがとう…ちい。なぁ、俺この休みが終わったら、一緒に暮らしてもいいか?」
「部屋は余ってるから…いつでもいいけど。ベッドが狭くない?買い替えないとだめだね」
「ベッド…もし良ければ、妹に出せるか?そうすれば、親たちから少し援助して貰えるかも」
彼は私と暮らす事を考えていたらしい。
確かに週の半分を私の家で過ごしていたんだから。
私の家で食べていた食事代貯金も…かなり重くなっている。
「後で、貯金箱開けてみようっと。いくらになってるかな?」
「何に使うつもりだったの?義人?」
「お前と寝るベッドを買うためさ。今度家具屋さんに行こうな」
彼の宣言で私は頬を赤くする。一緒に暮らすとなると不動産屋さんに報告しないといけないなぁ。
「分かった。じゃあ、明日起きたら必要なものを買いに行こうね」
「それって…」
「今すぐでもいいから、一緒に暮らしたい。一人の夜は寂しいの。ねぇ…責任とってね」
私は彼に微笑む。彼は私に微笑み返した。
「あぁ。責任は取るさ。じゃあ、すこしずつ荷物を運ぶからな。よろしくな」
空に流れている星を私達は手を絡めて寝転んで見ている。
流れて来る星達が、結婚式で見るライスシャワーのように祝福されてるようにも思えた。
「義人」
「何?」
「もっともっと、幸せになろう?」
「そうだな。明日の墓参りは一緒に行こうな。おじさん達に報告しないと」
「えっ?」
「そこが一番重要だろう?俺がちいを貰いますってさ」
「うん、そうだね。明日からお盆だったのにね」
「そうさ。一緒に歩いていこう」
彼は私と繋いだ手に少しだけ力を込めた。
その気持ちは痛い位分かり、私は再び涙があふれる。
優しく降り積もる星達の祝福を私達は体中で感じるのだった。




