Parallel さみしいなんて ver智
最後は智。前提としては兄貴が玉砕したことをしています。
時間的には7月の期末テスト前位と思ってもらえると…。
「ちいちゃん、テスト前なんだけども、勉強教えて」
「手数料は高くつくからね」
「分かった。スーパーでアイス買ってあげるから。5時ごろにスーパーの前で待ってるね」
「はいはい。分かったわよ。明日の5時ね」
私はそう言ってとも君からの電話を切った。
全く…。中学生がテスト前なら高校生もテスト前なんですけど。
私達の初日と最終日が被るって言っていたような気がする。
教えてあげられるのかが不安だけども…まぁいいか。
そうなると、夕御飯の支度もちゃんとしないとな。
とも君はなお君に筒抜けで、結果的に私の幼馴染にも知られてしまうから。
「明日のご飯は…簡単にとんかつにしようかな。すぐに食べられるもの」
私はお財布にとんかつと書いたメモを入れて学校の宿題と始める。
この宿題、テストにリンクしている課題だから、しっかりと提出期限には出さないと。
来年には文系か理系に別れないといけないから今回のテストの結果で決めようと思っていた。
とにかく卒業後に家を出て独立することは決めていたから、進学校だけども、大学進学しないといけないと
いう考えは持っていない。
高卒で働こうとは考えてなかったけど、資格は取っておかないと考えていたから専門学校に進学を考えていた。資格の方もこないだ受けた英検の面接試験の受験票がきたところだ。
先生に直前対策の補習をお願いしてみたら、学年全体で希望者に補習をすることで決まったそうだ。
勉強しておけば、どうにかなるはず…そう私は考えていた。
「ちい、今日は智の事頼むな」
「いいですよ。頼まれましたから」
朝の電車でなお君に言われる。
「広瀬弟がどうしたって?」
「数学教えて…だって」
「ふぅん、数学だったら俺の方ができるのにな」
義人君が意味ありげに答える。私と広瀬が一緒なのが気になるのかな?
「義人君の方ができることを教えておくね」
「義人…がんばれぇ」
なお君はヘラヘラ笑いながら私達を見ていた。
放課後。いつもならのんびりと帰るんだけども、とも君との約束があったから私は急いで帰る。
途中でスーパーによって、とんかつ用のお肉とキャベツとトマトを買う。
自宅に戻って、制服からシンプルな服に着替えてからお肉の下味をつけておく。
時計を見るとちょうど約束の時間に近づいたので、私はスーパーに向かった。
「お待たせ…先にご飯の支度をしながら宿題見ても…いいかな?」
「えっ?ちいちゃんのご飯?食べさせてくれるの?いいの?」
「別に一人も二人も一緒だし、少し下拵えしてあるんだ」
「ちいちゃんの家から電話借りてもいい?」
「いいよ。けれども、お菓子はないから食べたいものを買ってね」
「やったぁ。アイスは何がいい?俺、ガリガリ君食べたい」
「私…アイスよりもジュースがいいな」
「何?それ?」
「忘れてない?私さ、アイスって1個全部食べられないんだよね」
私は申し訳なく思ってとも君に言う。
アイスは嫌いじゃないんだけども、一人で全部は食べられない。
「そうだったね。忘れてた。だったら…ちいちゃんは一口あげるね。俺にもジュースくれる?」
「いいよ。それじゃあ、急いでアイス買って帰ろうか?」
私達は欲しいものを買って自宅に戻った。
「ちいちゃん、俺、先にアイス食べたい」
自宅に戻って廊下にテーブルを出して座っているとも君は買った袋をガサガサを音と立ててアイスを食べ始めた。
「先に食べてて。ご飯の支度をしちゃうから」
私は急いでとんかつの支度を始めた。
ちょうど炊飯器がご飯が炊けたことを教えてくれる。
油の温度を確かめて、ゆっくりととんかつをあげはじめる。
漕げない様に見ながら、急いでキャベツを刻み始めた。
「ちいちゃん…アイスとけちゃうよ。今夜…とんかつなの?」
「あれ?とんかつ嫌い?豚肉ってね、疲れている時に食べた方がいいのよ」
とりあえず、刻んだキャベツをお皿に盛って、きつね色に上がったとんかつの油を切る。
「嫌いじゃないけど、家に帰ってから何て言おう」
「いいじゃない。ちゃんと言っても」
「兄貴が文句言いそうな気がする」
なお君は私に頼んだぞって言ったから、多分文句は言わないと思うよ。
「とにかく、ご飯は炊けたけど、おみそ汁はインスタントで…許してね」
「その位の文句は言わないし。なんか新婚さんみたいでどきどきする」
「何言ってるの?この子は?」
「だって…よそのお宅の台所って普通行かないでしょ?」
「冷めないうちに食べましょう。運んでね」
私はとも君に促して応接間に運んで言った。
「そうそう、ちいちゃんはご飯の前にアイス。まだ残ってるから」
とも君は残っているガリガリ君を渡してくれた。
「それじゃ貰うね。うーん、久し振りのソーダバー。おいしいね」
私は一口かじってとも君に返した。
「俺残り食べるまで待っててくれるの?なんか嬉しいな」
「落とさない様にね」
私は急いで食べているとも君をからかった。
「ちいちゃんってご飯作れるんだ」
「出来ないと困るでしょう?本当は…知ってて来たんでしょう?」
「あれっ?バレてる」
「そんなものだと思ってましたよ。創君も義人君も似たことしてるから」
「なんだ、俺ってあの人たちと変わらないんだ」
そう言うととも君はむくれてしまった。
「でも、創君のお家でご飯食べて、義人君とはポテトチップス食べただけよ」
「ちいちゃんの料理を食べた人って…」
「いないんじゃない?家庭科の授業以外は」
「やった」
とも君は小さくガッツポーズをしている。
それよりもやったって…なんですか?そっちの方が気になるんだけども。
「ちいちゃん…さみしい?」
「どうして?」
「こんなに広い家に一人でしょう?ご飯だってさみしくない?」
「さみしくないって言ったら嘘になる。けれども、私はそれを受け入れないといけないの。私にはそれを拒絶する権利は持ち合わせていないの」
とも君は私を気にしてくれているのか聞いてくるけど、私はあっさりと答える。
「おば達がいたから、両親が残してくれたこの家に住めるんだもの。この家を守るためなら、さみしくても我慢する。それが私の生き方だから。ごちそうさまでした」
私は自分用に作ったとんかつを結局食べきれなかった。
残りは…明日のお昼にしてもいいなぁと考えていた。
「残りはどうするの?」
「食べたいなら…食べてもいいけど。家に戻ってもご飯あるんでしょう?」
私はとも君に問いかける。私と食べても夕飯があるはず。
「そうだった。だったら…また今度食べようね」
「はいはい。そのうちにね」
「ちいちゃん、俺と一緒にいたら…さみしくならない?」
「どうだろう?今日はさみしくないよ」
私はとも君を見て微笑む。
「少しは笑えるようになったんだね。それは…皆の力?それとも…」
「分からない。でも…私一人じゃここまで復活出来なかったと思う。ありがとうね」
「俺…年下でガキだけど…」
「それ以上はダメ。今の私は、とも君を受け止められない。とも君も支えきれない。だったら…今のままで私はいたいの。それじゃだめ?」
彼の好意を受け入れるのは簡単だ。
けれども…その事があいつに知られて、結果的にとも君を傷つけるのだとしたら…私は自分を一生許さないかもしれない。
「今までのちいちゃんを見てきたから、言いたい事は分かるよ。俺だって…そこまで馬鹿じゃない。だったら、俺が背中を押してあげる。手を引っ張って進んであげる。それならいいでしょ?いいよな?」
そう言うと、とも君は私の左手に自分の右手を重ねる。
緊張しているのか、とも君の手は心なしか冷たかった。
「分かった。じゃあ、私を引っ張ってくれる?そこまでなら…受け入れられるから」
「やった。それでもいい。だって、ちいちゃんと一緒にいられるんでしょう?そう言う意味ならあいつらと同じ条件だもんな。絶対すぐに追いついてやるから…ちいちゃんが元のちいちゃんに戻れるように俺なりに頑張るから」
「いや…そこは頑張らなくていいから。これは私自身の問題だからね」
「分かった。人生まだこれからだものね。急ぐことないか」
「そうそう。それでいいと思うよ。そろそろ宿題をやりましょう」
私達は食器を片づけて彼の勉強を見るという本来の目的を果たすのだった。
「じゃあね。今日はありがとうね。今日の約束…忘れないでね」
「忘れないよ」
「それじゃあ…おやすみ」
彼の顔が急に近付いてきて、私は慌てて目を閉じたが、頬に彼の唇が当たった。
「くすくす…お休みのキスしただけなのに…」
私は起こった事が理解できなくて口をパクパクするしかできない。
「そんなことすると…唇にキスしても…いい?」
「…結構です」
「なあんだ。つまんねぇの。だったら、ちいちゃんもお休みのキスして?」
可愛らしくおねだりしているつもりだけども、すごくむかつく。
何で…こんなことになっているわけ?唇にはさすがにしたくない。
「お休みなさい…チュッ」
私は彼の右手を取ってキスを落とした。間違っていないよね。
「俺はどこにって言ったわけじゃねぇもんな。仕方ないか」
「それよりも…おでこだったら届きません。背…伸びすぎ」
「まだまだ成長しますよ。俺成長期だから。ちいちゃんは…こっちが成長しないとね」
私の貧弱な胸元を見てとも君が言う。
そんなことくらい…私が一番よく知ってる。
静香に起こっている私に気がついたのか、とも君は慌てて玄関に向かった。
「ごめんね。そんなつもりで言ったわけじゃないよ。なんだったらさ…」
「何よ」
「将来彼氏になるから、大きくしてあげましょう。だからそのままでいいですよ」
「もう!!馬鹿!!」
「殴られたら怖いから、もう帰るね。ちいちゃん…おいで」
急に呼ばれて私は素直に彼の元に近づく。
「これでさみしくないよね?」
ほんの一瞬だったけど、とも君に抱きしめられた。
「しっかり勉強しないと怖いお姉さんに怒られそうだから…じゃね」
そう言って、彼は帰って言った。
私は何が起こったのか理解できなくて、立ちつくしたままだった。
暫く呆然としていたけど、私も課題があるのだから、食事の後片付けをしてから課題を解きはじめる。
私の知らない所で、何かがゆっくりと動いている。
それに合わせて、私自身も動きはじめたような気がする。
とりあえず…分かったことは一つだけある。
一人じゃないってこと。さみしい私に気付いてくれる…あの人がいること。
あの人だけには甘えてもいいってこと。
さみしいなんて言えないけど…ごめんね、少しだけ甘えさせて。
hs_title's様 ヒトリの夜に10のお題より
無事に完結です。少しだけ本編に沿った人がいても…そこは御愛嬌(笑)
(下書きで書いている時間はまだ高1の4月なんですよ)




