Parallel さみしいなんて ver創
見守ることに決めた直也の次は創。
彼はどうする?
「なぁ、宿題教えて貰ってもいいか?お前の方が進んでるからさ」
珍しく義人君が風邪を引いて休んだ日の放課後。
学校帰りに私を待っていた創君から宿題を教えて欲しいと相談を受けた。
「いいけれども…どこで?」
「そうだな。俺の家に来るか?終わったら家でご飯を食べて行けばいい」
「それはちょっと…」
いくら、今まで何度か遊びに行ったことがあるとは言えども、夕御飯を一緒に食べるというのは図々しいと思う。
「お前…夕飯食べてないんだって?」
家に戻ってから、一人で食事をするのがさみしくて週に数回程度しか食べたいない事を一体誰に聞いたんだろう?
「それって…誰に聞いたの?」
「直也先輩。文化祭の時に聞いた。違うのか?」
…まさしくその通り。反論の余地すらない。
今までとの経験から…こうなった創君には素直に従った方がいい。
「おばさんがいいって言ったらね。ダメなら私の家にしようね。その代わりにご飯一緒に食べてくれる?
大したものは用意できないけどね」
「俺…お前と夕御飯の方がいいな。新婚みたいだし」
創君が何か小声で言ったみたいだけども、よく聞き取れない。
「何?何か言った?」
「何もいってません。とにかく俺の家に行こうな」
創君は私に自転車の後ろに乗るように言う。
「ごめんね。今日はバスで駅まで来たんだ」
「どうした?」
「昨日、自転車のタイヤが…ちょっとね。帰りに自転車屋さんに置いたんだけども、今日は休みでしょ?自転車屋さん」
昨日の帰り、自転車のタイヤが刃物できっちりと切られていた。乗って帰るには難しいから、自転車を買った店に電話をして引き取ってもらって修理をして貰っている。
「ふぅん、変な話だな」
創君は気にかかる言い方とをする。
「そうだけども、自転車は直るからいいって」
「じゃあ、帰るぞ」
創君の後ろに横向きに乗っかって、ゆっくりと進んでいく。
「重くない?」
「大丈夫だけども。それよりもお前…文化祭で痩せただろ?」
「なんで?」
「制服のスカートがブカブカ…だろ?」
確かに文化祭の準備で食事が不規則になったせいか多少痩せたかもしれない。
「かもね。そのうち…元にもどるでしょう」
「痩せてようが、太ってようが俺はお前が健康ならそれが一番だ」
「そっか…そうだね。気をつけるね」
「そういえば、文化祭に優君来てたみたいだね。私達会えなかったけど」
「そっ、そうか。お前は会いたかったか?」
「うーん。どうかな?会いたいような会いたくないような。だから良かった」
そう言って、私はそれ以上の言葉が続かなかった。
今の私の想いは絶対口にしてはいけないこと。
だって…創君がうちの学校にいたのは、あの日だけ。
気が抜けると探してしまうのはいけないこと。
そのさみしさを彼に伝えることは絶対にしてはいけない。
私は無意識に彼の背中に顔を埋めた。
「どっ、どうした?俺、汗臭いぞ」
「…ごめん、自転車が気持ちよくって眠くなっちゃった」
「お前…ちゃんと休めよな?でも…本当にそれだけか?」
創君は私に聞いてくる。
創君のその気配りができることはすごくいいことだけども、私にとっては気が重い。
言いたくないけど、気付かれたい時は素直に嬉しいくせに、知られたくないときはそっとして欲しい。
どうしてこんなに、人間って我ままなんだろう?
「ちょっとだけ…さみしかっただけ」
私はポツリと呟いた。
「さみしい…か。俺は又…見逃すところだったのか?」
「違う。見逃して欲しかった。今回は、完全に私のエゴだもの」
創君の漕ぐ自転車は、創君の家に着いて止まる。
「その話は俺の部屋でな。とにかく入れよ」
自転車をガレージに置いてきた創君に促されて私は玄関に向かうのだった。
「良かったな。今夜がカレーだったから…な」
コップに麦茶とお菓子の載せたお盆を持って創君が戻ってきた。
「今度は…食事を用意するから…家でやろう?」
「さっきの続き…。何がさみしかったんだ?」
創君のベッドを背もたれにして座っている私の横に座って創君が聞く。
「あの日が楽しくって…創君がもういないのがさみしい」
「それはどうにもならないな。確かに我ままだな。でも…それだけお前が回復してくれたことが俺は嬉しい」
「本当に?」
「あぁ、本当だ」
そう言うと創君は私の頭を優しく撫でながら、私の顔を覗き込む。
「だったら…俺からの質問。あの時、俺じゃなくて優や義人だったら…お前は寂しかったか?」
覗き込むその目に力があって、私は目を反らすことができない。
「…考えたこと…なかった。だから創君だから、さみしかった」
「俺の事…好きか?」
「嫌いだったら、ここにいない。それに我ままなんて言えない」
「そうだな。お前は我まま言う相手は選んでるものな。ってことは…俺は選ばれたってことか?」
「多分…。それでいいと思う」
「だったら…俺の我ままを言ってもいいか?」
「うん…いいよ」
私がそう言うと、創君は大きな深呼吸をした。
「俺…ちいが好きだ。だからもう少しだけでいいから近づきたい。いいか?」
「近付くって…?」
「心も体も今よりも近付きたいんだが…ダメか」
「ダメ…じゃない。私が隣にいてもいいの?」
「俺はちいが隣がいい。ずっと…俺は好きだったんだから。俺の初恋の人」
そういうと、創君は私の手を握る。緊張しているせいか、創君の手はひんやりとしている。
「約束してくれる?創君…手を放す時は、いきなり放さないで」
「俺は…もう放すつもりはないんだけどなぁ…仕方ないよな。お前がそう思うのも」
創君は苦笑いをしながら、左腕で私の肩を抱いて、引き寄せた。
創君の脇にぴったりとくっつく。
「人間って寄り添うようにできてるんだな。初めて知った」
「私も…初めて知った。ねぇ?これからも増えるのかな?」
「何がだ?」
「うんとね、私達二人で知る初めて。何か…嬉しいね」
「そうだな。でもすげえドキドキする」
「私も同じだよ。だったら二人でドキドキしよう」
「そうだな。それもいいな。ちいは俺の…だよな?」
「うん。これからはお願いします」
そういうと、私は火照る顔が恥ずかしくって俯いた。
「これからはいろんな顔が見れるんだから、今日は我慢してやるよ」
彼は引き寄せた左腕に力を入れた。
さみしいなら、さみしいって言っていいなんて…今まで知らなかった。
そんな私に、彼がこれからはいろんなことを教えてくれるだろう。
これからは彼に寄りそって行こう。
hs_title's様 ヒトリの夜に10のお題より
この二人だと…お釈迦さまと孫悟空がイメージされます。
創の掌で転がされるの(笑)




