Parallel ふぅん、ヤキモチっておいしくないんだ ver智
ヤキモチって何?
ひょんな所から出来上がったプチ企画です。
いつも以上にキャラが壊れてます。
まずは智の場合
side倫子
「中間テストが終わったら、デートするんだよ…ちいちゃん」
「はいはい。予定を開けておきますよ。分からない問題は大丈夫?」
「バッチリ分かったよ。ありがとね」
とも君からの電話が切れる。授業で分からないとすぐにかかってくる。
塾に通っているんだから…塾の先生に聞けばいいのにね。
私だって、中間テスト前なんだから。
電話に費やしてしまった時間を取り戻したくて、私はクッキーを咥えながら
机に向かう。
高校に入ってからの科目数の増加は1年生の私にとっては
面食らうものでしかなかった。
とも君の兄で先輩でもあるなお君がいるから、私はまだ楽ちんだ。
だって、去年の中間テストの問題を持っているから。
満点を取る必要はない。自分が分かる場所だけしっかりできていればいい。
「テストの最終日にデートするって言っていたっけ」
私はふと手を止めて壁に貼ってあるカレンダーに目を向けた。
話の流れ的に決まってしまったデートの約束。春休みに偶々一緒に出かけてから
時間が合えば、とも君と出かけることが多くなった。
ゴールデンウィークは…何でか東京タワーに行ったっけ。
今回はどこに行きたいだろう?当日少し多めにお金を持っていればいいか…
そんな事をぼんやりと考えていた。
「ワリぃな…ちい」
「いいんですよ。直君らしい話ですから。後何ページですか?」
「そうだな。後5ページだな」
「良かったですね。同じ先生で偶然レポートの範囲が同じで」
カリキュラムの変更があって、2年生のなお君と1年生の私が同じ授業を受けている。
しかも、同じお題のレポート課題があるのだが、直君はノートが真っ白でレポートが
できないと言って、私に泣きついてきた。提出期限は中間テストの前まで。
正確には土曜日までだから後2日しかない。
「お願いですから、授業はちゃんと受けて下さいね?」
「すまねぇ」
「たまたま同じ先生だからこうやってサポート出来るんですよ。分かってます?」
「…分かります」
いつもなら、俺様ななお君に振り回されるのがお約束だが、今日は珍しく私のターンがずっと続いている。
それはそれで怖いんだけども、ちゃんと反省して欲しいのよ。
「これで終わりですから、レポートは自分で作成して下さいね。私はもう提出済みですからね…なお君?」
「はい…自分で頑張ります」
なお君は力が抜けたようになっていた。
もしかして…レポートも私にやらせる気だったのかしら?
先輩として…かなり駄目な人だと思う。
そんな私達のやり取りを通りの向こうから…彼に見られているとは思わなかった。
side智
「ひろせぇ…英語のノートコピーさせてくれよ」
「貸すのはいいけど、コピー禁止」
俺は泣きごとを言ってくる仲村にをあっさりと交わす。
ノートってのは、自分で作るから覚えるんだ。コピーでごまかすな。
「俺の人生どうなっても…いいの?」
文章にしたらかわいいかもしれんが、男の声で言われたら気持ち悪い。
「残念だが…貸す気は失せた。自力でやれ」
「そんなぁ…あれっ、広瀬の兄貴と佐倉先輩じゃね?」
俺と仲村のやり取りを見ていただけの井上が急に言う。
ちいちゃんがいるって?
おととい数学で分からない所を聞いたばかりだけど、彼女に会えるのは取っても嬉しい。
「あっ、本当だ。何をしているのか分からないけど、お似合いのカップルじゃね?」
仲村が二人のやり取りを見て言いたい事を言っている。
どこがお似合いなんだよ。どう見ても、ちいちゃんが兄貴を説教しているように見える。
「なぁ、広瀬。兄貴と佐倉先輩付き合ってんのか?」
「おっ、俺聞いてねぇし。それに兄貴彼女いるぜ」
「じゃあ、なんであんなに仲がいいんだよ?」
道路を挟んだ通りで見ている俺らの目には確かに仲の良さそうにも見える二人の姿。
ちいちゃんが、兄貴に何とも思っていないのを知っていても、心にどんどんと広がる黒い欲望に支配されていくのを実感した。
彼女の笑顔は俺だけのもの。直也にあんな顔をするだなんて…。
「広瀬ぇ?どうした?顔が怖いぞ」
「普通にしても細い目が更に細くてよぉ」
「気のせいだろ?俺…帰るな」
俺は二人に目を会わせず、さっさとその場を立ち去った。
本屋の二人をこれ以上見たくなかったのだ。
二人が何ともないのは分かっているのに…心が拒絶している。
俺自身がヤキモチ焼きだと初めて痛感した。
「ふぅん、ヤキモチっておいしくねぇんだ。すっげぇむかつくし」
本屋からの帰宅ルートを考えると絶対に通る神社の横の児童公園のベンチに俺は座った。
本当ならテストが終わったら会うはずだった彼女にどうしても会いたかったから。
彼女が好きな気持ちをどうにも押さえることができなかった。
ただ…会いたかったと言いたい。それだけでしかなかった。
待っている間に気持ちが落ち着くと思っていた。
けれども、衝動的な行動を起こしてしまいそうな自分も存在していて理性と戦っている。
感情の赴くまま接したくないのに、そうしてしまいたい自分がいる。
矛盾している自分の感情すら持て余し始めていた。
神社の向こうから、『なお君、ここでいいよ。また明日ね』という彼女の声。
いつも、兄貴はどこまで一緒にいるんだか。
彼女がいるんだから、ちいちゃんを構う必要なんてないのに。
そんな兄貴の行動にすらイライラする。
俺はゆっくりとベンチから立ち上がった。
児童公園のフェンスに寄りかかって彼女を待つ。
「ちいちゃん」
「とも君どうしたの?」
自転車から降りたちいちゃんを俺は見つめている。
自転車を止めたちいちゃんは俺の側にやってきた。
「何か分からない事があったの?」
心配そうに俺を見るちいちゃんの顔を見ていて、俺の中の何かが動いた。
俺は彼女の手首を掴んで、児童公園の銀杏の木の側まで引っ張った。
俺は彼女の肩に自分の額をくっつけた。
「寂しかった。校内のどこにもいないんだ。会いたかった」
普段、彼女に甘えることはあるけれども、ここまで本音を言ったことはなかった。
でも、俺の心から溢れる想いを止める術を俺は持っていなかった。
俺…ちいちゃんが好き。縛りつけたい位に好き。
ねぇ?俺…どうしたいい?
「そっか、寂しかった…か。私も…会いたかった」
ちいちゃんは、ポツリと呟いて俺の背中に腕を回して包み込むように抱きしめる。
それからゆっくりとポンポンと背中を叩いてあやすようにしてくる。
彼女の頭からほのかに香るシャンプーの匂い。どことなく甘い。
ちいちゃんも会いたかったって…どういうこと?
「とも君も感情を出せるようになったんだね。良かった。気にしてたんだ」
「もう…昔ことだよ。そんなに俺も…ガキじゃないよ」
「そうだね。でもあの時は大変だったじゃない」
俺が小学生頃の話をする。あれはちいちゃんの卒業前だったかな。
いきなり、6年生の女子に追いかけ回されて怖くなった俺はちいちゃんに助けを求めたのだ。
ちいちゃんは俺を守ってくれたが、その事が切っ掛けでいじめに遭ったらしい。
それ以来、幼馴染の隣の子とちいちゃん以外は女の子を信じることが出来ない。
アレ以来、俺はちいちゃんの弟ってポジションを欲しいままにしている。
でも…俺は知ってる。今の2年にも弟ポジションを狙ってる奴がいるのを。
人には無関心だけども、手を出せば必ず救ってくれる彼女を慕う後輩は多い。
今の俺はほんの少しだけ、そいつらよりも彼女との距離が近い。
今の状況で満足できなくなっていた。彼女が欲しい。どうしても欲しい。
姉として欲しい訳じゃなくて、一人の女性として欲しい。
冬に男に裏切られて傷ついた彼女の事は俺も知っている。
小学校の頃からずっと好きだった。でも、側には他の男がいる彼女。
警戒を持たれず側にいるには、弟キャラでいるしかなかった。
けれども、さっきの二人を見て俺の限界をみた気がする。
彼女の中の俺は今どんなだろう?ガキの頃のままだったら立ち直れない。
「とも君…ヤキモチ焼いたんでしょう?なお君相手に」
俺はいきなり図星をつかれて何も言えなくなる。
どうして、この人はさり気なく恋愛アンテナが敏感なんだ?
それなのに、自分に向けられてるのは…気付いていないんだ。
「そうだよ。悪かったな。いけないかよ」
俺は居直って悪態をつくしかなかった。こんな俺は見せたくないのに。
「私も…ずるいと思ってた。直君に。私は、直君にヤキモチ焼いていた」
俺がびっくりする事を彼女は言う。
「ちいちゃん…何?」
「だって…なお君はとも君と一緒に暮らしているんでしょ。ズルイ」
「ズルイって…兄弟なんだから当たり前でしょう?」
「そうだけど、理由はいらないんだよ。ヤキモチには。コピーしてた時に見たんでしょ?あの時の私が何を考えてたか知ってる?」
俺は首を振る。彼女が何を考えていたか…そんな事知らない。
「とも君と一緒ならコピーも楽しいのになって思ってた。直君はとも君に似すぎてるから。直君といるととも君がいない事が寂しい。校内でいなくて私を無意識に探すとも君と同じ。直君の中にいるとも君を私は探してた」
彼女の告白を聞いて、俺の心は次第に落ち着いていった。
それとは逆に早くなる鼓動をどうにかしたくなってきた。
「側にいなくてもいい?」
「何が?」
「後9カ月、距離的に離れてるけど…私が隣にいていいの?」
わたしがとなりにいていいの?その言葉の真意が計りかねる。
言葉通りに解釈していいのか?心配成分を加えて解釈するのか?
どっちでも嬉しいのに、俺は答えることができなかった。
「受け止めてあげる。ともくんの感情の全部。全て開放して」
「好きだ。ずっと好きだ。俺…凄いヤキモチ焼きだけどいいのか?」
俺は思ったことをそのままに彼女に告げる。
「いいのよ。恋って綺麗なままじゃない。綺麗な所も汚い所も全部受け止める。
直君といてもドキドキしないのに…今はドキドキするの。それが私の答えだと思う」
彼女の顔を俺は見つめていた。彼女は俺に優しく微笑んでいる。
そして、彼女は俺に肩に両手を置いて背伸びをして、耳元で囁いた。
「私…智が…好き」
俺の少ない理性がなくなってしまった。コレが計算じゃないんだから怖い人だ。
俺は彼女をきつく抱きしめた。
「なっ、何?」
「マーキング。俺の匂い付けてんの」
「そんなことしなくても」
「嫌だ。ちい…ちいって呼びたかった」
「呼んで。私も呼ばれたい。けど…恥ずかしいね」
彼女は自分の今の状況に気がついたみたいだ。
普段から冷静な人は一気にクールダウンしてくれる。
「なぁ、もっとドキドキさせたいって言ったらどうする?」
「とけそうだからやめて…」
頬を染めて彼女が答える。彼女の存在自体が俺を狂わせる。
もっと俺のモノって実感したい。
「嫌だ。とけちゃえばいい」
俺は彼女に囁くと俺は顔を近づけた。ほんの数秒だけども唇同士が触れた。
でも俺にとっては10秒以上していたように感じた。
唇が離れた後、再び彼女を見つめる。
そこには、今まで見なれたはずの女の子は俺の知らない女性を顔をした彼女。
その表情に俺は更に鼓動を早めてしまった。
「もっと」
そう言うと俺は再び彼女と細かいキスをするのだった。
「絶対に放さないから。ちいは誰のもの?」
幾度となく交わしたキスで少しだけ上気した顔をした彼女の頬に自分の頬をつけて聞く。
触れている頬が焼けそうな位に熱い。
「私は智のモノ。智は?」
「俺はちいのモノ。テストちゃんとやるからご褒美頂戴ね」
「じゃあ、帰ろう?勉強しようよ」
「勉強?してるよ?ちいがいないとできない勉強をね」
「その時間はお終いです。ちゃんと勉強するの」
彼女はそう言うと、俺の腕の下から逃げ出した。
「ねぇ…行こう?」
彼女は俺に手を差し出した。俺は彼女の手をしっかりと繋ぐ。
「そうだな。帰ろうか。それとお願い」
「ん?何?」
「ちいにはとも君って呼んで欲しい。そう呼ばせるのはちいだけだから」
俺は彼女の自転車を押しながら、おねだりをした。
「いいわよ。とも君。自転車押してくれてありがとう」
あっという間に彼女に家に着いてしまった。
「あーあ、着いちゃった」
「自転車、ありがとうね。とも君」
振り向きざまに彼女は背伸びをして頬にチュッと音を立ててキスをした。
「また、今度ね。ちゃんと勉強してね」
そう言うと彼女は家の中に吸い込まれていった。
ヤキモチっておいしくない。
でもその気持ちを受け入れたら、ドキドキが増えた。
恋ってとっても不思議だ。
ヤキモチが切っ掛けな俺達の恋はまだまだこれから。
「今度は俺がヤキモチ焼かせてやる」
そう言って、俺は彼女の部屋がある方向に向かって銃を打つ真似をするのだった。
今回の企画はver義人・ver創・ver智の三人です。
最初は年下君のヤキモチでした。




