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Parallel 君とホタルと天の川とver智

智が中3の8月15日の夜の出来事です。

何で…こんなに遅いか?それは本文をお読みください。

「兄ちゃんや創先輩達…ずりぃよ」

「ごめんね。でも…約束は守ってるでしょ?」

夏休みも残り少ない終戦記念日の夜。

私ととも君は川沿いの道を私は歩いて、とも君は自転車を押している。

「おばさん達を送って来たの?」

「うん、今年のお盆も無事に終わったわ。とも君、一度家に帰る?」

「このまま天体観測したいな。」

今夜の8時に私達は天体観測の約束をしていた。

受験生であるとも君のスケジュールを見て、今夜になってしまったのだ。

なお君や創君達は七夕に近い日付で見たせいか、ぶつぶつ文句を言っている。

「その代わりに…いいものが見れるから。これはとも君だけだよ」

「いいものって?」

「その時まで…秘密。ご飯家の残り物で良ければ食べる?」

時間は午後7時。健全な10代はお腹がすく時間だ。

「だったら、家に電話してご飯残してもらおう。電話借りていい?」

とも君は目を輝かせて私に聞く。

「いいわよ。その代わり…うち、今夜そうめんと天ぷらだったんだ」

「天ぷら食べちゃっていいの?」

「うん、おば達はおばの実家に行ってるから、私だけなのよ」

「寂しくない?」

「昨日までは静香達が泊りに来てたから。夏休みになって何回目かな?」

「いいなぁ。静香先輩」

「お泊りに来て…とも君も勉強する?その前にとも君にはなお君がいるでしょう?」

私がとも君に問いかける為に、とも君の顔を見た。

まだ…成長期なのかな?また背が伸びた気がする。

私の頭はともくんの肩のあたりだ。神様はやっぱり理不尽だ。



「雨後のタケノコみたいね…いいなぁ」

私はポツリと呟いた。せめて…後5センチ欲しいと思う時がある。

特に高いものを取る時ね。

「それは…嫌味?褒め言葉?」

とも君が怪訝そうな口調で聞き返した。

「褒め言葉です。嫌味なら…ウドの大木って言ってるわ」

私がそう返すととも君は笑いだした。何か…むかつく。

「どうせ、ちびっ子ですよ」

「そんな所が…かわいいのにな」

「そんな所が…何?聞こえなかったけど?」

「何も…言ってませんが?ボケてきましたか?それとも頭が暑さで融けましたか?」

私の頭上でかすかに聞き取れる声で言われると、私には聞こえないのに。

それが分かっていて、頭が融けたまで言われるだなんて。

私の方が一応年上なんだけども、言いようにいじられてる気がする。



「とりあえず、急いでご飯の用意してあげるから、家に着いたら自宅に電話。その後は塾の宿題でもやったらどう?」

「いいの?」

「時間は有効的に使いなさい。今の頑張りが秋に結果として戻ってくるから」

「俺ね、そんなにキリキリ勉強して無いんだ」

「ふぅん。もう学校を絞り込んだの?」

「だから…S高に行くって言っただろ?」

2月に彼に言われたことを思い出した。アレは本気だったかと思い出す。

「もっと…上の学校にしたらどうなの?うちの学校なら十分でしょう?」

「上の学校に行って低空飛行っていうのも俺の性格的に嫌だからさ」

「私がどうって言うのも変な話ね。足元をすくわれないようにね」

とも君は目を見開いて私を見つめる。

「ちいちゃんは、俺が後輩になってもいいの?」

「だって…それだけが高校に入る目的じゃないよね?それだけなら…反対する。2年間は一緒だろうけど、3年生の時には私はいないんだよ。その事…分かってる」

「分かってるよ。そんな事…。今だってそうだろう?」

とも君が機嫌が悪くなったみたいだ。でも、その事実は絶対に覆らない。

どんなにとも君が私を追いかけても、1学年の差はどこかのタイミングで私達の壁になる。

「とにかく、家に入って…どうぞ」

無事に玄関前に着いた私達は、彼を招いたのだった。



「ごちそうさまでした」

「大したものなくて…ごめんね」

「一人でも…ちゃんとご飯用意するんだね」

とも君は私が用意した食事を完食した。むしろ少なかったかもしれない。

「それじゃあ、天体観測に行こうか?」

「ベランダじゃないの?」

「今日は…ベランダじゃ駄目なんだ。家の田んぼの方がいいんだ。少し荷物を持ってね」

そう言うと、私はとも君にブルーシートを手渡した。

お寺に行く前に用意しておいた荷物を私は持って玄関を出る。

「田んぼって遠い?」

「畑より…近い。ほらっ、着いたよ」

私達は田んぼの畦を通って、東京電力の鉄塔の側にシートを広げる。

この場所なら、もうすぐ始まる。

出かけるときに腕に嵌めた時計は7:30を示している。



「とも君、暫くは…北の方角を見て欲しいんだ。もうちょっとしたら見えるから」

「北の方角?ホタルは飛んでるよ。皆と見た時とどっちが多かった?」

とも君は先月の皆との天体観測と比較をしているようだ。

「今の方が多いかな。綺麗でしょう?」

ほのかに灯りながら稲穂の間を飛んでいるホタルを私達は眺めていた。

「うん、綺麗だね。今更なんだけども、ちいちゃんは夏は浴衣着るの?」

とも君は意外そうに私に聞く。

「夕方、シャワー浴びてからだけども。一応一人で着れるんだ」

「へぇ…古風なんだね。なんかかっこいい」

「褒めても何も出ません」

「この浴衣は誰も見てない?」

「静香が見た位だけども?それがどうかしたの?」

私がそう答えるととも君は小さくガッツポーズをしていた。

そのガッツポーズは何に対して?私はキョトンとしてその光景を見ていた。

「ちいちゃんは分からなくてもいいの。とにかく俺は勝ったんだから」

ともくんの行動や言葉はたまに私に通じない事もある。

またそうなんだろうと軽く流していた。



そんな時に、私がとも君に見せたかったモノが北の空に広がった。

隣町の学区の花火大会の花火だ。

私の家では見えないけれども、田んぼまで行けばしっかりと見ることができるのだ。

「ちいちゃん…コレって…」

「うん、池のほとりの花火大会。少し花火を一緒に見ようか?勉強を頑張ってるとも君にご褒美のつもりだったんだけど…どうかな?」

「すげぇ。俺始めてみた。近くじゃないと駄目なのかと思ってた」

「そんなことないよ。だったら…来年もここで見ようか?」

「いいの?」

「誘ってるのは、私なんだけど。でも…とも君にも都合があるよね。一応予約ってことで」

「一応じゃなくってもいい。夜の天体観測も俺とだけして?」

「とも君…。どうしたの?」

普段甘えないとも君が、私に聞いてくる。

心が弱っているとも君に…私は何をしてあげられるだろう?



「私は…何をとも君にしてあげられる?私に出来ることってあるのかな?」

とも君は私に向かってかすかに微笑む。

「今まで、ちいちゃんがいた場所にいないのが、寂しかった」

「それは、当り前でしょう?学年が違うんだもの」

「どうにもならないから…俺一人が焦ってた。ちいちゃん…俺、もっと大人になるからS高で待ってて」

そう言ったともくんの目には何かの決意が込められてる感じがした。

「大丈夫よ。そのままのとも君でいいの。早く大人になる必要なんてないよ。ゆっくりでいいんだよ。急いで大人になってもいい事なんて…多分ないよ」



「ちいちゃん…俺の事…好き?」

とも君は不安な色を目に浮かべながら私に尋ねる。

いつもならこんなことを聞いてくる子ではない。

今のこのシチュエーションが私達をそうさせてしまったのかもしれない。

「嫌いだったら、誘わないよ。でも…誘うのも躊躇った。受験生を遊ばせていいのかなって」

「そっか。嫌いじゃないって言われただけでもいいか」

とも君は満面の笑みを私に向けた。その顔を見て、何故か私はドキリとした。

その顔は今までも何回も見たはずなのに、どこか…男の人の顔だったから。

いつの間にそんな表情をするようになったんだろう。

私だけあの時のまま、時間が止まっているんだろう。

私が動かそうと思わないといけないのに。なぜか焦りを感じる。



「まだ…前に進めない?」

「進めないというより…」

私は言葉を濁してしまった。進めないんじゃない。動けないんだ。あれから。

そんな私を見て、とも君が微笑んだ。そして、私の手をそっと触れる。

「だったら、俺と一緒に進もうか?」

「とっ、とも君?言っている意味分かってる?」

私はかなり焦ってしまっている。口説かれている?私?

「今のちいちゃん、消えてしまいそう。確かに側にいられないけど…心の距離は近いと信じてるから。大好きなしっかりもののちいちゃんに戻ってほしいから」

「それはどうかな?」

「3月に比べたら、立ち直ってるとは思うけど…根っこの部分はあの時のままだよな」

「うん」

彼に指摘されて、私は頷くしかない。その通りなんだから。

「だったら、俺が背中を押してあげる。兄貴の様に、強引に振り回してもちいちゃんは疲れるだろ?創先輩の様に、見守るのも俺のキャラじゃない。だから…後ろから押してあげる」

そう言うと、とも君は私の手を両手で包んだ。

「俺は手を放さないから。部活も引退したから塾は平日に変更した。2学期から勉強を教えて?」

「直君がいるでしょう?」

「あいつ…家にいねぇもん」

「全く…さり気なく、強引なんだから。でもそこに私は救われてるのかもね。ありがとう…とも君」

今は一人で進めない事は十分分かっているから、少しだけとも君に甘えよう。

気が付いたら、花火は一旦休止になったようだ。



「じゃあ、これから本当の天体観測をしようか?」

私はとも君に促されて北を向いていた体をクルリと南に向けた。

「そうだね、でも…花火のことは」

「俺だけの秘密。じゃねぇと兄貴怒るからな。双眼鏡貸して」

とも君に言われて私は双眼鏡を手渡した。

その後暫く、私達はお互いに星を眺めたりして楽しんだ。

「もう遅くなるから帰ろう?」

午後8:30。花火大会の花火の終わったことを確認して私はとも君を促す。

「うん、いい思い出が出来た。ありがとう。ちいちゃん」

とも君が先になって荷物をまとめる。まとめ終わったらとも君が手を出した。

「もっと暗くなったから、転ぶと浴衣が汚れるよ」

私は恐る恐る…彼の手を繋いだ。繋いだ途端に彼が力を込めてきた。

「えっ?」

「捕まえた。離さないからね、ちいちゃん」

今まで見たことのない満面の笑みを私に向けるのだった。



私の意思とは関係なく、ゆっくりと歯車が動きはじめたことを私だけがまだ知らない。

そのことを知るのはもっと季節が変化した後のことだった。


side智

天体観測が終わって、彼女と別れて自転車を漕ぐ。

彼女が好きな気持ちをもう、押さえることができなかった。

なんで、今日に限って浴衣なんだよ。反則だろう?

深緑の生地に裾に蝶が書かれているシンプルな浴衣。

オレンジの帯がアクセントになって可愛らしかった。



兄貴が彼女を好きになりつつあることも分かってる。

彼女がいるんだからよそ見するなって言ってやろう。

創先輩たちだって、見ているだけだから、隙間に入り込めば俺の方が勝ち目はあるだろう。

最初から負け戦をしかけるなんて…馬鹿げている。

俺には時間がある。彼女の時間は止まったままだ。

だったら、俺がS高に入学するその時までに彼女を時間を動かして俺と歩けるようにすればいい。



俺が背中を押すって宣言した時にはびっくりしたけど、ありがとねって言ってくれた。

彼女はちょっとだけ強引にしても、俺だけは嫌だとは言わない。

やりすぎると、兄貴見たく怒られるからな。俺はあそこまで馬鹿じゃない。

彼女の中ではまだ、弟だろうけど、手を放さないって宣言したことだし…そろそろ…ゆっくりと俺のターンにさせて貰おうかな。

ちい…ごめん。俺のモノにするから。絶対手に入れるから。覚悟してくれよ。

無意識に笑みがこぼれながら俺はペダルをこぎ進めるのだった。




口説かれてます。完全スルーはできませんでした。

完全ロックオン宣言も出たことですし、どうするんでしょう?

お粗末でした。

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