Parallel 君とホタルと天の川とver義人
時間的には、高2の夏休み前の木曜日からスタート思って下さい。
「なぁ?週末俺の家に泊りに来ないか?昔見たく」
「義人君の家に?」
「あぁ。その日の週末お前一人だろ?幸代から聞いたけど」
期末テストが終わって、テストが全て戻ってきた放課後。
何時もはなお君と一緒に帰るんだけども、なお君はデートで一人で帰る予定だった。
駅前の本屋で、ばったり義人君たちと会って、話の流れで一緒に帰ることになった。
ほとんど男子高状態の義人君のお友達は…ちょっと怖かったのはここだけの話。
私達は今、電車で地元に戻るところだ。地元までは電車で20分位だ。
さっきまでは義人君の学校の人もいたので互いの学校の話をしていた。
今は私達二人しかいない。姪の綾乃と義人君の妹の幸代ちゃんは幼稚園からの親友だ。
綾乃のことだから、幸代ちゃんに週末お泊りの事を話したんだろう。
「義人君の家って引っ越してから私分からないんだけども…」
「だから、おいでって。お袋からの伝言。お前は綾乃と寝ろよ」
「それでいいのなら、甘えちゃおうかな。意外に夜一人って怖いからさ」
義人君相手なせいか、つい本音が透けてしまう。夜一人でいるのが怖くて嫌いだ。
「折角だから、花火でもやるか?皆で」
「いいね。楽しそう」
私達は週末の泊りの話で盛り上がるのだった。
「ちい、本当に安全なのか?」
「何がです?」
次の日の放課後。生徒会室で何時もの様に作業をしていたら、なお君に話しかけられた。
どうやら、お泊りの事がきになるらしい。
「義人の家に泊りに行くなんて」
「普通ならそうなんだけども、義人君の家のおばさんと亡くなった私の母が親戚なんですよ。そのせいか母が亡くなってもたまに義人君の家に行ったりしてたんで…気にするような事ないですよ」
「そうなんだ。それなら安心…なのか?」
「でも、親同士が6親等に辛うじて引っかかる程度何で、私達は遠い親せきみたいなもんです。彼が引っ越すまでは同じ地区に住んでたからやり取りしてたんでしょう」
「じゃあ、認めないといけないなぁ。それにしてもお前のおばさん、お前に対しての放棄はひどいな」
「慣れですか?これ以上何か介入されたら…うんざりですよ。早く卒業したい」
「義人には釘を刺しておかないとな」
なお君は何かを呟いたけど、私は聞き取れなかった。
「何か言った?なお君?」
「いいや。その書類書けたら、職員室に届けてな」
「分かりました。なお君…お父さんみたい」
私は思ったことを口にしてしまう。お父さんはあんまりかな。
「せめて、お兄ちゃんにしてくれよ」
「はいはい、口うるさいお兄ちゃんですね」
私はワザと棒読みで答えた。
「ほら、さっさと仕事する」
なお君は、持っていたプリントを丸めて私の頭をポンとたたいた。
邪魔をしているのは、なお君の方なのに。
「よく…広瀬先輩が認めたな」
「それは…義人君の家と私が親戚になることを言ったからだよ。でもすっごく口うるさかった。
父親なのかよって言いたい位にね」
「それって…俺が信用ないってことか?」
「一応、男の子の家だからじゃないの?」
「そっか。男としてか。なんか複雑な気持ちだな」
「そんな事を考えてると、アイス解けちゃうよ」
「そうでした。たまに食べるとソーダーバーっておいしいな」
義人君はソーダーバーを食べてて、私はあずきバーを食べている。
「あずきだっておいしいもんね。ほんのりと甘くって」
私はつい反論をしてしまう。
義人君の家に行って気がついたけど、綾乃のお泊りに幸代ちゃんが一緒だったんだったって。
その代わりに私を預かることにしたのかな?一人の夜じゃない事には感謝をする。
でも、今度からは甘えたらいけないとも思っていた。
「いたっ」
「お前、余計なことを考えるなよ」
義人君がデコピンをして、私の顔を見つめていた。
あまりにも顔が近くて、私は驚いてしまった。
「考えてないもん」
「じゃあ、その深い眉間の皺は?一生取れなくなるぞ」
「取れなかったら…嫁に貰ってくれる?」
私は意地悪く義人君に聞いてみた。どう答えるつもりなんだろう?
「気が向いたらな。俺だってモテモテなんだぜ?」
「そうですか。だったらよりどりみどりですね。羨ましいこと」
私はワザと皮肉を言うのだった。
「二人とも、夕御飯の用意手伝って」
台所から、おばさんに声をかけられたので、私達は台所に向かって行った。
「そう言えば、前の田んぼでホタルが見えるの知ってるか?義人?」
ビールを片手に義人君のおじさんが教えてくれる。義人君の家は私の家から一キロほど離れている。
すぐそばには雑木林があって、子供の頃に二人でカブトムシを捕りに行ったこともある。
「ちい、お前見たことあるか?」
「ホタル?家の田んぼにもいるよ。夏休みになったら、静香達とホタル狩りするんだ」
「ほうほう、女の子は優雅な事を企画するな。それに比べて…はぁ…」
おじさんは、義人君を見てから大きなため息をついたのだった。
「だったら…天体観測しようよ。ほら、天の川があんなに綺麗だもの」
私は天空を指さした。午後8時ようやく闇に包まれて、星の瞬きが主張を始めている。
「俺…星座って苦手なんだよな」
義人君が困った顔をしている、理系だから分かるかと思っていた。
「大丈夫。チャララ~ン。星座早見盤」
「何だよ。お前それ…」
義人君が呆れている。そりゃそうだよね、気持ちは分かるよ。
「効果音がいるかと思ってさ。双眼鏡は持ってないけどね」
「双眼鏡?あるぞ。ちょっと待ってな」
義人君のおじさんが探し始めた。
そう言えば、おじさんの趣味にバードウォッチングがあったっけ。
「ほらっ、義人。ちいちゃんに教えて貰ってこい」
そう言われると、私達は虫よけスプレーをかけてから外に出た。
「涼しいなぁ」
「本当だね。どこで見ようか?」
「ちょっと先の公民館の前の公園にするか?ちょっと高台だしな」
「そうだね」
私達は目的地まで歩きはじめた。
「ほらっ、ちい」
義人君は当たり前の方に手を出してくれる。
「ありがとう」
私が暗い所が苦手なのを知っているから、自然に出来るんだろうな。
「義人君は好きな人はいないの?そんな話聞かないよね?」
私はふと思いついた事を口にした。
お調子者だけども、いい人だから彼女がいてもいいのにどうしていないんだろう?
「好きな人か?いるぜ。そりゃ俺だってさ」
「ふぅん、だったら、私がここにいてはいけないんじゃないの?悪いじゃない」
私がそう言うと、義人君は困った顔を私に向ける。私…何かしたの?
「お前が気にすることねぇよ。ほら、星座を教えてくれよ」
無事に公園についてベンチに腰掛ける。
隣の市の丘の部分が新興住宅地として開発が進んでいて、幼いころにふつうにみていた景色はここ数年ですっかり変わってしまった。
いずれは、私鉄の路線が延長されるらしい。
「子供の頃はもっと田舎だったのにね」
「そうだな。それがどうした」
「便利になるのはいいんだけど…寂しいなって」
「お前の気持ち…分からなくもないな」
義人君はそう言うと、空を見上げた。
今見える星達は、このまま同じ数をこれからも見ることができるのだろうか?
「まずは肉眼で始めようか?」
「おぉっ。文化祭の企画のヒントになるかもしれないしな」
「天の川は分かる?」
「その位は分かるさ」
義人君は少しだけ威張った口調をする。そこはそうなの…?なぞだ。
「こっちの方角の、ひときわ光っている星がベガ。日本では何て言うかな?」
義人君は星座早見盤とにらめっこしながら星を確認する。
「そんなのあるっけ?」
「あります、おり姫ね。じゃあ、天の川の向こう側の明るい星…早見盤だとコレなんだけど、これは何になる?」
「えっと…彦星だ」
義人君はようやく思いだしたようだ。
幼稚園の時に先生に天の川の絵本読んで貰ったのにね。
「思いだした?わし座のアルタイルね。その上にあるはくちょう座のデネブを繋いで夏の大三角形ね」
私が言うのと同じペースで空と早見盤を見比べている。
「おぉ、分かったぞ。ありがとな。プラネタリウムに行かなくてもわかるもんだな?」
「そう言われちゃうと困るんだけどね」
「じゃあ、黄道12宮って世間的に何のことか知ってる?」
「12宮って事だから12星座のことか?」
「勘が鋭いから当たり。太陽の通るところを12星座にあてはめたのね。今は夏だけども、西には乙女座が、ベガの下の方には、さそり座と射手座もあるのよ。見える時期は別物なの」
「さそり座のアンタレス…えっと、あの赤い星分かる?」
私はアンタレスの方角を指差した。義人君は見ようとして私と体が密着した。
「アレ…か。分かったぞ。悪い」
義人君は慌てて体を離した。
けど、星座を見るときはどうしてもそうなってしまうと私は思っている。
「平気だよ。天体観測をする時は嫌いな人と見れないよね」
「どうして?」
「今見たくなるとどうしていいか困っちゃうでしょ」
「なるほど…な。俺は嫌われてないってことか」
義人君は、複雑そうな顔をしている。また何か言っちゃったかな?
「ちい…」
義人君に呼ばれて、私は義人君と向かい合う形になった。
いつもよりも真剣な顔に私は戸惑う。
「俺…お前を好きだ。俺はお前に何をしてあげられる?」
「よっ、義人君」
「今は、幼馴染として好きでもいい。けど、少しでもいいから俺の事を男として見てくれないか?」
義人君の告白を聞いて私も言わないといけないことがある。
「私…義人君の事…男の人として見てると思う。今までなら手を繋いでもドキドキしなかったけど、今日は…凄くドキドキした。でも、それが義人君の求めている答えになるのか分からない」
私は自分が言ったことに照れてしまって俯いてしまった。
義人君は大きな手で私の頭をゆっくりと優しく撫でた。
「俺は、ひで君の様に溺愛するとは思えないし、ゆう君の様にもお前に接することができない。それでもいいのか?」
義人君が私のかつての恋人と比較する気持ちは分かる。
でも…そんなのはナンセンスな答えだ。私達は私達のペースで歩んでいけばいい。
「お願いが…あるの。皆の前では今までのままでいて欲しいの」
「分かってるよ。理絵が怖いんだろ?けれども二人の時は…」
「うん。二人の時は…」
私が言葉を濁していると、頭を撫でていた義人君の手が私を引きよせた。
気がつくと義人君に後ろからすっぽりと包まれている。
背中越しに感じる早い鼓動になぜかホッとする私がいる。
「何か…情けねぇな。正面から抱きしめたいのに、お前の顔が見れなくて怖いんだ」
「私は、私よ。義人君は義人君よ。安心して。私は等身大の義人君の事を好きになり始めてる。
男の人として意識し始めてる。だから…過去はもう見ないで」
私の心の中で私を縛っていた何かがプツリと切れた気がする。
もしかしたら、ゆう君に対して、無意識に縛りつけていたのかもしれない。
もう…そんな思いはいらない。私は、義人君と歩いていこう。
私の側に当たり前にある大気の様な彼に包まれるのもいいのかもしれない。
「好きだ。この答えは?ちい?」
一瞬義人君の腕が緩まるのを感じて、私は体の向きを変えた。
義人君の目を見て、はっきりと言おう。
「好き。これから…もっと好きになってもいい?」
「いいぞぉ。幼稚園からずっと好きだったんだ。絶対に離さないからな。最後に逆転スリーランってカンジ?もう超嬉しいぜ」
義人君はきつく私を抱きしめてそう告げる。
幼稚園の頃から私を好きだったなんて…全く知らなかった。
あの頃から、私の隣にはひで君がいたから…義人君は身を引いたのかな。
「ごめんね。私がふらふらしていたから」
「いいのさ。もう手放さないからな。ちいが二十歳になったら…結婚しよう。ちい以外は何とも思えないんだ」
「結婚は…予定ってことでいい?急すぎて…」
私は言葉を濁す。付き合い始めてすぐに結婚を意識するのはどうなんだろう?
「そっ、そうだよなっ。俺、嬉しくってさ。ちゃんと地面に足がついているのか不安になった」
「大丈夫。これから、ゆっくりと歩いていこう」
「そうだな。でも、その前に手付けが欲しいな」
「手付け?」
「そう言う事。今日は…ここでいいや」
義人君は意地悪く言うと私の鼻の頭にキスをした。
「ちっちゃくって、丸くってお団子みたいな鼻」
キスを落とした後にそうやって言う。
「それって褒めてるの?けなしてるの?」
どっちなのか分からなくって、私は彼に問いかける。
「俺にとっては…褒め言葉…さ。さあ、帰ろう」
「もう…いいの?」
「また…今度しようぜ。天体観測。いいよな。星空の下のデートってさ」
「そうね」
私達は手をきつく握り合って義人君の家に向かう。
「だけど…お前の卒業まで、俺のものって言えないんだ。なんだかな」
「そこは…ちゃんとしますから。その日が来るまで待ってて下さい」
「じゃあ…約束の前払いお願いします」
一体、何を要求しているんだろう?この人は。
「前払いって?何よ」
「お前から…キスしてくれよ。」
そう言うと、義人君は少しだけ屈んでくれた。
私は義人君の頬にキスをした。
「まぁ、いいか。今日は許してやるよ」
そう言うと義人君は私の頬にキスを返した。
「そんなことしているとどんどん帰れなくなるよ」
「それも困るか。それじゃ…行くぞ。倫子」
「うん」
私達は夜道を再び歩きはじめたのだった。
時代的に、野球至上主義な時代ですので、逆転スリーランにしときました。
君塚市は架空都市です。場所的には、袖ヶ浦~木更津北部位にある小さい市です。




