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Parallel 君とホタルと天の川とverゆう君

主な時間は優・倫子中学3年の七夕です。原則的に倫子目線で進めますが、優の話です。

最後の方で、本編のネタバレがあります。そんなの見たくない!!って人は

読まれないことを勧めます。

「お前ら、今日の授業は外にでるぞ」

理科の授業が始まると先生から告げられる。

「なんで?」

「天気もいいしな。今日は何日だ?」

「7月9日だけど?」

「七夕は過ぎたが、天体観測だ。ほらっ、塾の近くの公園まで歩け」

先生はそう言うと、私達を外に出すように促した。

先生が天体観測用の道具を両手一杯に持っていたから私は持つのを手伝った。



「りん…お前だけ持ってんのか?」

「あっ、ゆう君。先生大変みたいよ。後ろを見て」

私達の後方をフウフウ言いながら先生が歩いている。

「本当だ。何を持ってる?」

「私は双眼鏡と星座早見盤。でも夏の星座なら私分かるよ」

夏の星座はひで君に教え込まれたから、肉眼でも辿るのは簡単だ。

今年はへびつかい座を辿れるようになりたいなぁ。

ひで君と別れてもうすぐ2年になる。案外早かったかもしれない。



「意外な特技発見。星座早見盤を見ないでどこまでできる?」

「そうだね、さそり座、射手座位は。へびつかい座も近いんだけども肉眼では辿れなくって」

「いいや。そこまでできれば十分。俺も星は好きだけどもそこまでは無理」

ゆう君は肩を竦めて、私が持っていた紙袋を持ってくれた。

「ここからは…って言うか、すぐに着くけど持つな」

「ありがとね。ゆう君」

私達は星の話をしながら公園に向かって歩きはじめた。



「この中で夏の大三角形が分かる人?」

公園で先生は空を見上げながら質問する。

「えっと、しし座のレグルス?」

「それは春の大三角形。おしい」

「りん…手をあげろよ。お前なら分かるぜ」

「えっ、でも…」

「何だ?佐倉分かるのか」

先生に指名されて私は空に向かって手をあげた。

「今日は天の川がこうかかっているでしょう?天の川を見て下側って言った方が分かるかな?それがこと座のベガ。おり姫の事。天の側の対岸の上側にあるのが、わし座のアルタイル。こっちが彦星ね。わし座はゼウスが形を変えた姿って神話もあるの。で、ベガとアルタイルを線で結んでもっと上空に輝く干した分かる?それがはくちょう座のデネブ。この星座もゼウスが姿を変えたって神話があるんだ。こんなところでいいですか?」

「そうだな。間違ってないな。じゃあ、春の大三角形はどうだ?」

「春ですか…今の時間だと西の方角に…しし座のレグルスはちょっと見えずらいけど、乙女座のスピカ…西の方角の青白い星と牛飼い座のアークトゥルス…オレンジ色の星は辛うじて見える…かな?」

「それだけ言えれば問題ないな。けれども、星はあまり受験に出ないんだけど。たまにはいいだろ?」

「すごいねぇ。佐倉」

「偶々だよ。でも、理系嫌いだけどね」

「嫌いでも人に説明できれば立派だ。さあ、皆で星を見るぞ」

先生の一言で皆がばらけて星を観察し始めた。



「本当に凄いなぁ…りん。俺の友達にそっくりだ」

「ゆう君の友達?」

「あぁ、知ってる筈だぜ?秀紀の事。違うか」

ゆう君の口から懐かしい名前を聞く。秀紀…ひで君のことだ。

そう、私の星が好きになったのはひで君無しでは語れない。

私の星座を辿るのはひで君譲りなのだから。

「クラブにいた時。相当親しかったんだな。星の探し方が秀紀と同じだったから」

「そうだね、かなり長い期間同じ練習したからね。彼は元気?あまり会ってないから」

「あぁ、最後の試合だから気合が入ってるぜ。何か伝えるか?」

「何も…何もしないで。私は彼を傷つけた人間だから。許してもらえてるかどうか」

私はそう言うと、再び星空を見つめる。もしかしたら、どこかでひで君もこの空を見ている…そんな気がした。



「分かった。何も言わないさ。それよりも、凄くきれいだな。今夜は」

「そうだね、でもこういう事って、皆で見ると楽しいね」

私は話の流れをひで君から立ち切りたくって話題を変えた。

「そうだな。皆で見るのもいいけどさ…その…」

ゆう君は言葉を濁した。

「何?どうしたの?」

「俺は好きな人と見たいな。そう思うのはロマンチックで男が思うのはおかしいか?」

ゆう君は頬を染めて俯いてしまった。

今の私はゆう君の事が好きだ。…とは言っても私の片想いなんだけども。

それでも、先生の気まぐれでこうやって一緒に星を見られた事は絶対に忘れないと思う。

「私はそう…思わないよ。素敵じゃない」

私は思ったことを素直に口にした。その位言ってもゆう君には本音は透けないと思う。

「そうか?本当に?」

「うん、私も…好きな人とこんなに綺麗な星を見たいと思うよ」

私達は顔を見合わせて笑いあった。



「俺とりんって感覚が似ているんだな」

ゆう君が私に向かって呟く。

「そう?それって嬉しくってくすぐったいな」

感覚が似ているってことは好きな子の好みが似ているってこと?ついつい深読みをしてしまう。

「あんまり女子と話さないけど、りんはあまり話さなくっても辛くないんだよな」

「それは褒め言葉として受け取っていいのかしら?」

「そうだな。お前はどうなんだ?俺といて」

「私は…ゆう君の優しさに甘えてる気がする。分かってくれてるって思う時があるから。迷惑だよね?」

私は自分が思ったことを口にして、ほとんど告白に近いことに気がついて恥ずかしくなって俯いた。

どうしよう、今言うつもりはなかったのに…。背中に冷たいものが通った気がする。



「それも褒め言葉だろうな。ありがとな」

「いいえ…ごっ、ごめんね」

今の私達はベンチに腰掛けて星を眺めている。先生から借りている双眼鏡を取ろうとしてゆう君と指が触れた。とっさに引っ込めようとしたのに、ゆう君に掴まれた。

「お前の手…冷たいな。心が暖かいんだろうな」

「そっ、そんなことないよ」

掴まれた指をゆう君はゆっくりと手で包んでいく。ゆう君の手の温かさが私の鼓動を早めるには十分だった。

「俺…謝らないといけないんだ。りんが秀紀と付き合ってた事知ってたんだ」

「う…そ…。もっと早く言ってよ。恥ずかしいじゃない」

「いいや。あいつが言うともって子と、りんが一致したのが最近だったからさ」

「そんなに…キャラが違う?」

「いいや。同じだった。秀紀の言う通りの女の子だった」

その先を聞きたい私と聞きたくない私がいる。どうしたらいいんだろう?



「おーい、そろそろ帰って教室で授業だぞ」

ゆう君が何かを言おうとしていたのに、先生によって遮られた。

がっかりとホッとする…何かよく分からない気持ちだった。

「この続きは…いつか…必ず…な」

ゆう君が私の手を取ったまま立ち上がる。皆は私達が手を繋いでいるのに気が付いていない。

「分かった…待ってる」

私はそう答えるのがやっとだった。



「ゆう君…手…」

「秀紀から聞いてるよ。良く転ぶ子だって。明るくなるまではこのまま。怪我したくないだろ?」

ひで君…あなたはどれだけ私の事を語ったんですか?今は少しだけあなたの事が嫌になりかけてます。

でも、ゆう君と手を繋げたから…いいかな。受験のスパート前に告白…してみようかな。


ゆう君が私の事を嫌いになりませんように。どんな形でもいいから側にもう少しいられますように。

空に輝く星達に私は願いを込める。口に出せないその思いを。満点の天の川に向かって。


皆が帰る最後尾を私とゆう君は手を繋いだまま塾まで戻るのだった。



-1年後- side優

「まさる!!ここでいい?」

「そうだな。ここのベンチでいいか」

俺は付き合い始めて1ヶ月の彼女とかつて塾の側の公園のベンチに座った。

今夜は七夕。一年前のあの日の様に空には満点の星が輝いている。

あの時俺の隣には倫子が…りんがいた。今の彼女は倫子と同じ学校に通っている。

「凄くたくさんの星があるね。天の川は分かるけど、他は分からないや」

彼女はあっさりと俺に伝える。普通はそんなもんか。

一年前は彼女の解説で夏の大三角形をたどったりしたものだ。

あの頃は、彼女に好意を持っていてこの事が切っ掛けで恋心になるとは思わなかった。」



いろいろあって、倫子と付き合い始めたのは志望校を決めた年末だったけど、俺たちなりに幸せだったと思う。

あの時はもっと自分に素直になればと自分を責めた時もあったりもした。

それなのに…俺はあいつと同じ学校を受験する前の日に別れを決めた。

あの時の真実をいつか…いつかは倫子に伝えたい。

あいつの手を離せば、あいつを結果的に守ってやれると思ったから手を離した。

試験が終わったら、ちゃんと説明しようと思った。

けれども、試験会場で見かけた彼女の顔を見て俺は自分がした事の自体の大きさを思い知らされた。

俺は、本当はやってはならない選択をしてしまった。

結論を早急に出さないようが良かったんだ。

でも、してしまった決断は訂正する気はなかった。

倫子の目が全てを遮断しているように見えたから。そうさせたのは俺の行動だから。

彼女を傷つけた事を足かせに俺は生きて行くことに決めた。



4月の合格パーティーで彼女を見かけたが、そこには俺が好きだった彼女の面影はもうなかった。

心から笑っていない笑顔、聞き流しているような会話。見ているだけで辛かった。

暫くしてから倫子はパーティーを後にしたようだ。そんな時に、彼女が俺に近づいてきた。

「あの子と同じ学校に通ってるの。彼女はもう彼氏がいる」

俺はショックを受けた。2か月前のあの彼女はもういない。もうあいつの隣には戻れない。

そんな時に、彼女が言った。

「あなたを傷つけるなんて…酷い人ね。最低な人」

彼女が言う言葉が、ストンと俺の心に収まった。

倫子は、本当はそういう女だったのかもしれない。

「もう、俺には関係ないことだから。教えてくれてありがとうな」

その後、俺は彼女と連絡先の交換をしてから何度か放課後にあった。

互いの学校の話をすると、どうしても倫子の話題になる。

彼女から聞かされる倫子の話は俺が知っている彼女はもういなかった。



「ねぇ、まさる?そんなに辛い顔をしないで」

「えっ?」

「私が倫子の話をするからいけないのね。もうしないね。それと…」

「それと?」

俺はゆっくりと彼女に聞く。

「私が側にいてもいい?」

彼女に聞かれる。正直、一人ではいたくなかった。寂しくて限界だった。

彼女の事を然程知らないのに、人寂しくて俺はつい答えてしまった。

「側にいてくれ。もう…一人は嫌だからさ」

「分かった。私が彼女ってことだね。よろしくね」

彼女は満面の笑みを俺に向ける。倫子の残像と生きて行こうと思ったけど辞めた。

俺は側にいてくれるという彼女と生きて行く。


さよなら…りん。もう会う事もないだろう。

俺は最後の願いを星にかける。彼女が…りんが…もうあんなに泣くことがないようにと。


「さあ、二人で天体観測をしようか?寒くないか?」

「大丈夫だよ。天の川はあれでしょう?」

「そうだよ。…で、こっちの星がこと座のベガ…」

そう言って、俺は言葉を止めた。去年の彼女と同じことを言おうとしていた。

「それで…まさる?」

「わりぃ。俺も度忘れした。今日はこのまま見て、今度また天体観測しような」

「へぇ。意外にうっかりさんなんだね。初めて知った」

俺は、倫子を思い出して言葉が出なかったとは言えないから忘れたってことにした。

今日くらいは嘘をついてもいいだろう?天体では再会を果たしているんだから。

俺はどんなに望んでも、恋人としては再会できないのだから。

時間をかけて、彼女を想っていけばそれでいいと思っていた。



俺の孤独は夜の闇に解けて行けばいいのに…。俺の中にはまだ倫子がいるのが苦しかった。

彼女が誰なのか?いずれ…分かります。


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