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世界の狭間で君を待つ 〜【すべてを失った私が、隠してきた闇の力で世界に抗う】〜  作者: Sou
ディナシア帝国編

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業火の帰路

【目覚め】


 ――リヴィア。


 誰かが、呼んでいる。


 ――リヴィアさん!


 誰かが、泣いている。


 ――お願い、目を開けて。


 ――ねえ、リヴィア……!


 重い瞼を、こじ開けた。


 最初に見えたのは、崩れた石の天井だった。その隙間から、灰色の光が差している。


 次に見えたのは、泣きはらした顔。


「……リ、ズ……?」


「――リヴィア!!」


 金髪のポニーテールが、顔にかかった。リズが彼女を抱きしめて、声を上げて泣いていた。


「よかった……よかったよぉ……!」


 体が、痛かった。左肩。脇腹。右腿。光に灼かれた傷が、包帯の下で脈打っている。


 リヴィアの意識は、痛みよりも先に、別のものを探していた。


「……セリウスは」


 リズの体がこわばった。


「セリウスは、どこ」


「リヴィア、待って。今は――」


「どこ!?」


 リヴィアは身を起こそうとした。脇腹に激痛が走り、視界が白く飛ぶ。それでも、腕をついた。


「――おい、無茶すんな!」


 少し離れた壁際で、右腕を吊っていたアシュが怒鳴った。


「傷、開くぞ! じっとしてろ!」


「離して……! まだ、この街にいるかもしれない……!」


「リヴィア!」


「まだ、聞いてないの」


 声が、震えた。


「……まだ、聞いてないのよ」


 言った瞬間、頬を熱いものが伝った。


 自分でも、驚いた。


 十年間、涙なんて出なかった。エマが死んだ日も、雪の下の少年を見た日も、出なかったのに。


 ずっと、乾いていた。泣く資格がないと思っていた。生き残ってしまった自分には。


 なのに、今。止まらなかった。


「……約束の言葉、まだ、聞いてないの」


 十年前の朝。


 ――終わったら、絶対に言う。


 あの言葉の続きを、彼女はまだ聞いていない。


 昨日も。今日も。二度も、目の前にいたのに。


 あの人は、剣を向けた。あの人は、仲間を殺した。あの人は――「死ぬな」と、言った。


「……なんで」


 リヴィアは、包帯だらけの手で顔を覆った。


「なんで、あんな目で私を見るの……」


 六年間、あの目はいつも笑っていた。中庭の階段で手を差し出した時も。水晶を割った日に「壊せるやつ、他にいないだろ」と言った時も。噴水の縁で「知ってる」と言った時も。


 なのに、昨日。あの目には、何もなかった。


 地下墓所の石壁に、彼女の嗚咽が小さく反響した。


 リズが、黙ってその背中をさすっていた。


 ネロは少し離れた場所で、布のかかった体の傍らに座ったまま俯いていた。


【外へ】


 どれくらい、そうしていたのか。


「……行かないと」


 リヴィアは涙を拭って、壁に手をついて立ち上がった。


「リヴィア!?」


「ここは、駄目。……敵の街の真ん中よ」


 膝が笑っていたが、立てた。


「河まで、出る。……カラムさんも、連れて」


 その言葉に、ネロが顔を上げた。


「……は、はいっ」


 彼は震える手で、担架代わりの外套を整えた。アシュが左腕だけで前を持ち、リズとネロが後ろを支える。リヴィアは、レイピアを杖代わりにして殿についた。


 地下墓所の階段を上がると、外は雨だった。


 白い都に、灰色の雨が降っていた。昨日燃えた石畳が雨に打たれて、じゅうじゅうと湯気を上げている。焦げた匂いと雨の匂いが混ざって、鼻の奥に絡んだ。


 空は低く、重かった。鐘は、もう鳴っていなかった。


「西の、水路へ」


 リヴィアが言った。


「……カラムさんが、最後に言ってた。西の水路から出ろって」


 誰も、聞き返さなかった。


 四人と、一人分の体は、雨の中を進んだ。


【立ち塞がる者】


 大通りに出た時、それは、そこにいた。


 雨の向こう。焼けた広場の入口に、影が並んでいた。


 三つ。


 その背後に、揃いの外套の兵たちが二十、三十。


「……っ」


 アシュが担架を下ろし、左手で銃を抜いた。リズが風を練ろうとして、痛みに顔を歪める。ネロは震える手で障壁の構えを取った。


 リヴィアはレイピアを構えた。構えたが、足がうまく踏ん張れなかった。


 雨の中の三つの影が、近づいてくる。


 一人は、巨躯。大盾と戦鎚。橋の男。


 一人は、白い仮面。三日月の微笑。硝子の鈴が、雨に濡れて鳴っている。


 そして――


 銀色の髪が、雨に濡れて頬に張りついていた。白銀のマント。白銀のレイピア。


 カリンだった。


 三人は、十歩ほどの距離で足を止めた。


 誰も、武器を抜いていなかった。それが、かえって恐ろしかった。


 沈黙が、雨音に埋められる。


 先に口を開いたのは、リヴィアだった。


「――セリウスを、返して」


 声が掠れた。


 三人の動きが止まった。


「返して。……あの人を、あなたたちの所から、返して」


 自分でも、何を言っているのか分からなかった。それしか言葉が出てこなかった。


「あの人は、そんなことをする人じゃない。あんな目で人を見る人じゃない。あなたたちが、あの人を……!」


「――リヴィア、落ち着け」


 アシュの声も、届かなかった。


「返してよ!!」


 絶叫が、雨の街に響いた。


 巨躯の男が、目を伏せた。仮面の女が、小さく首を傾げた。


「……ねえ、あなた」


 ノーチェの、鈴を転がすような声だった。


「昨日、森で聞いた質問。覚えてる?」


「…………」


「あなたたち、何のためにここへ来たの、って。……あの時、誰も答えられなかったわね」


「……偵察のためよ」


 リヴィアは掠れた声で答えた。


「あなたたちの、潜伏を確認するために」


「あら。正直ね」


 仮面の女は、少しだけ笑ったようだった。


「じゃあ、もうひとつ。……その命令、誰が出したの?」


 リヴィアの言葉が詰まった。


「答えられない? それとも、答えたくない?」


「……やめて」


「まあ、いいわ。私たちの仕事じゃないもの」


 ノーチェは、あっさりと引いた。


 最後に、カリンが。


 薄氷色の瞳が、まっすぐにリヴィアを見た。


「……あなた」


 抑揚のない声だった。


「何か、勘違いしてる」


「……なに?」


「セリウスは、誰にも捕まってない。誰にも操られてない」


 カリンの声に、抑揚はなかった。その手が、剣の柄をぎゅっと握っていた。


「あの人が、自分で選んだ。……全部、自分で」


「嘘」


「嘘じゃない」


「嘘よ!」


 リヴィアは叫んだ。


「あの人は、人を殺すような人じゃない! 私は知ってる! 六年間、ずっと一緒にいたのよ!」


 カリンの表情が、初めて動いた。


 感情のない氷の顔に、微かな、けれど確かな亀裂が走った。


「――六年」


 その一言に、冷たいものが混じった。


「六年、一緒にいて。……それで、あの人の何を知ってるの」


「……え」


「あなたが知ってるのは、十年前までのあの人でしょう」


 カリンは、一歩前に出た。


「その後の十年を、あの人がどこで、何をして、どんな顔で生きてきたか。……あなたは、何も知らない」


 リヴィアの喉が鳴った。


 言い返そうとして、視線が下がった。


 剣の柄を握る、その指の形。


 地下の聖堂で、何十合も打ち合った形だった。突きの返し方も、半身の切り方も、あの人が教えたものだ。


 ――この子は、あの人の十年を、全部知っている。


 自分が持っていない十年を、この子が持っている。


「あの人が、どれだけ――」


 カリンの声が、ほんの一瞬だけ震えた。


「どれだけ、あなたたちの国のことを、悔やんでたか」


「……なに、を」


「知らないでしょう」


 銀髪の少女はそれだけ言って、口を閉じた。


 雨が、二人の間に降っていた。


「……ねえ、カリン」


 仮面の女が、のんびりと言った。


「喋りすぎ」


「…………」


 カリンは視線を落とした。


 ヴォルクが、大盾を、ごん、と地に突いた。


「――そこの、担架」


 地響きのような声だった。


「……運んでいけ。俺たちは、追わん」


 黒翼の四人が、息を詰めた。


「……なんで」


 リヴィアの問いに、巨躯の男は応じなかった。


「ヴォルク! いいの?」


「彼の指示は『追撃不要』だ」


「あら、そう」


 仮面の女が肩をすくめる。


 カリンの手が、剣の柄を握り直した。


「……でも」


 薄氷色の瞳が、リヴィアを射た。


「その人は、駄目」


 雨粒が、彼女の周囲で白い霜に変わり始める。


「その人だけは、ここで――」


「――カリン」


 仮面の女の声が、初めて鋭くなった。


 遅かった。


 カリンの剣先が上がる。


 リヴィアは痛む体でレイピアを構えた。構えながら、勝てないことを知っていた。立っているだけで精一杯の体だった。


 雨が、止んだ。


 いや。


 ――雨が、届く前に蒸発した。


【業火】


 最初に感じたのは、頬の熱だった。


 チリ、と。髪の先が焦げる音がした。


「……え」


 通りの左右の建物が、一斉に燃え上がった。


 ゴウッ、という音は、後から来た。


 石造りの建物が、外壁ごと真紅の炎に呑まれる。濡れた石畳から水蒸気が爆ぜ、白い霧が業火に照らされて赤く染まった。


「――ッ!!」


 リバースオーダーの兵たちが、悲鳴を上げて後退する。


 炎は、通りの両側を正確に舐めていた。


 黒翼の五人がいる場所には、一片の火の粉も届いていない。その周囲だけが、綺麗に円く切り取られていた。


 カリンの氷の霜が、熱で溶けて水に戻った。仮面の女が、初めて姿勢を正した。


 足音が、した。


 業火の向こう、通りの奥から。濡れた石畳を踏む音。


 炎の壁が、その人物のために道を開けるように分かれていく。


 現れたのは、黒に近い軍服の男だった。


 傘も差さず、鞘に手もかけず。ただ、歩いてきた。


 軍服は、雨に濡れていなかった。彼の周囲一メートルほどの空間で、雨粒が届く前に消えている。湯気すら立てずに、音もなく。


 それが何を意味するのか、この場でそれを理解できたのは数人だけだった。


「――グレイさん!!」


 リズが叫んだ。その声が、涙で崩れた。


「グレイさん……っ、うわぁぁぁん……!」


 リズが駆け寄って、彼の胸に額をぶつけた。


 張り詰めていた糸が、切れたのだ。あの橋から。幻の森から。焼けた広場から。ずっと泣くわけにいかなかった十八時間が、そこで決壊した。


「ごめんなさい……っ、あたし、あたし、なんにも、できなくて……!」


「……ああ」


「リーダーが……リーダーが……っ」


「……分かってる」


 ネロが膝から崩れ落ち、アシュが天を仰いで、声もなく口元を覆った。


 グレイは、リズの頭に軽く手を置いた。


「……よく、生きてた」


 短い言葉だった。それだけで、四人の張り詰めていたものが音を立てて崩れた。


 彼は、担架の上の布のかかった体を見た。


 しばらく、動かなかった。その横顔が、炎に照らされて赤く染まっている。


 ――五年だった。


 まだ何者でもなかった若い軍人が、初めて自分の隊を持った日。最初に配属されてきたのが、あの三刻の男だった。


「よろしくな、少佐サマ」


 あの時から、五年。


 ――前線へ出るのをやめたのも、同じ年だった。


 やがて彼は、深く頭を下げた。


 一言も言わなかった。言わなかったが、その拳は震えていた。


 それから顔を上げて、リヴィアの前に立った。


「……無事か、リヴィア」


 リヴィアの視界が、また滲んだ。


「……グレイ」


「ああ」


「……また」


 言葉が喉でつかえた。


「また、セリウスを……」


 止められなかった。届かなかった。十年前と、同じ。


 ――その先を、彼女は言えなかった。


「大丈夫だ」


 グレイは言った。


「大丈夫」


 彼は、彼女の肩に手を置いた。


「リヴィア。帰ろう」


 その声は、十年前の丘の上と同じ響きをしていた。


 リヴィアは俯いたまま、頷いた。


「……うん」


【背中】


 グレイは、それだけだった。


 リバースオーダーの三人を、一度も見なかった。名乗りもしなければ、宣戦もしない。そこに誰もいないかのように。


「アシュ、動けるか。……担架、代わろう」


「……いや。俺が持ちます」


「そうか」


 彼は担架の前に手を添え、リズが後ろを支え、ネロが荷を持った。


 五人は、踵を返した。


 背中を、完全に晒して。


 その無防備な背中を見た瞬間、カリンの中で何かが弾けた。


「――待ちなさい!!」


 彼女は剣を掲げた。白銀の切っ先に、極低温の魔力が渦を巻いて凝る。


 背後から。無防備な背中へ。


 それは、彼女らしくない一撃だった。


 ――その手首を、白い手が掴んだ。


「――やめときな」


 ノーチェだった。仮面の下の声から、いつもの飄々とした調子が消えていた。


「離して! あの人を止めないと、セリウスが……!」


「聞こえないの?」


 ノーチェは、掴んだ手を離さずに言った。


「……あの人、こっちを見てもいないのよ」


「だから何よ!」


「だから、よ」


 仮面の女は、遠ざかる黒い背中を見つめていた。


「あれだけの炎を、雨の中で、無詠唱で、あの精度。……味方の周りだけ、完璧に空けてる」


「…………」


「今もね。あの人の魔力、まだ全部、この通りに残ってる。……足元、見てごらんなさい」


 カリンは視線を落とした。


 石畳の上。


 燃え尽きたはずの炎の残滓が、雨の中で消えていなかった。微かな熱の線が幾筋も、幾何学模様のように路面を走っている。


 それは、彼らを取り囲むように配置されていた。


「……これ」


「たぶん、術式よ。……いつ組んだのかも分からない」


 ノーチェの声が、少しだけ掠れた。


「あの人、来た時にはもう全部終わらせてたのよ。……私たちが、いつでも焼ける状態に」


 カリンの手から、力が抜けた。白銀の剣先の霜が、ぱらぱらと雨に混じって落ちた。


「……なんで、撃たないの」


「さあ」


「勝てるんでしょう。あの人なら、私たちを全員――」


「――撃つ価値がないと思われてる、ってことじゃない?」


 ノーチェはいつもの調子に戻って、けらけらと笑った。


 笑いながら、その手はまだ震えていた。


 ヴォルクは、その間ずっと黙って立っていた。大盾を構えることも、下ろすこともせず。


 彼だけが、遠ざかる背中の意味を正確に理解していた。


(……あれは、俺たちを敵と見ていない)


 二十年、帝国の中枢にいた男は知っている。本当に恐ろしいのは、殺しに来る敵ではない。


 ――こちらを、脅威として数えてすらいない者だ。


「……退くぞ」


 彼は短く言った。


「報告する。『黒翼、離脱』。それだけだ」


「……それだけ?」


「それだけだ」


 巨躯の男は踵を返した。


 業火は、五人が通りを抜けきるまで燃え続け――彼らの姿が見えなくなった瞬間、最初から無かったかのように、すべて消えた。


 後には、雨に濡れた黒い石畳だけが残った。


 カリンは、しばらくその場に立ち尽くしていた。銀の髪から、雨が滴っていた。


「……セリウス」


 誰にも聞こえない声で、彼女は呟いた。


「……あなたは、いつまで」


 その先の言葉は、雨音に溶けて消えた。


【河へ】


 西の水路は、カイゼンの言った通り、河へ通じていた。


 水門の脇の細い通路を抜けると、そこはもう大河ルーメルの岸だった。


 葦の茂みの向こうに、小舟が三艘。


 その舟の傍らに――赤いマントが、五つ。


「――おっそいわよ、少佐!」


 シェン・レイリンが手を振っていた。


「紅蓮掌……?」


「あんたら、ずいぶんボロボロじゃない。……ちょっと、担架こっち! 急いで!」


「南方の駐留任務からの、緊急転進だ」


 グレイが短く説明した。


「三日前、俺が要請した。……間に合わなかったが」


 ミン・シアが担架に駆け寄って、そこで足を止めた。


 布の下の輪郭を、見てしまったのだ。


「……え」


 彼女の顔から、いつもの笑顔が消えた。


「……リズ、これ」


「…………」


「ねえ、リズ。……これ、誰」


 リズは答えられなかった。答えられずに、ミン・シアの肩に顔を埋めて泣き出した。


 十八歳の少女は、しばらく口を開かなかった。


 それから、震える手でリズの背中を、ぽんぽんと叩いた。


「……そっか」


 それだけだった。


 リュウ・ファンが、担架の前に立った。布の上から一度だけ、その輪郭に手を置く。


「……惜しい男を、亡くしたな」


 彼はそれから、グレイを見た。


「――久しいな、グレイ。……何年ぶりだ」


「……五年です」


「五年か」


 リュウは、少しだけ目を細めた。


「……ようやく、出てきたか」


 グレイは応じなかった。


「隊長」


 しばらくして、彼は言った。


「……あの日、俺が現場を降りた理由を、あなたは聞かなかった」


「聞いても、言わんかっただろう」


「……ええ」


「今も、言わんのだろう」


「……はい」


「なら、いい」


 リュウは、そこで一度言葉を切った。


「だが、覚えとけ。……お前が出てくるのが一日早ければ、あの担架は空だったかもしれん」


 グレイの肩が、跳ねた。


「それを背負うのが、指揮官だ。……俺も、三十年、そうやって生きてきた」


 老隊長はそれだけ言って、舟へ向かった。


 グレイは、しばらくその場に立っていた。


 それから、河の上流――白い都のある方角を、一度だけ振り返った。


 雨に煙る空の下、鐘の鳴らない都が灰色に沈んでいた。


「……乗ってくれ。夜明け前には、国境を出る」


 舟が、岸を離れた。


 リヴィアは舟の縁に手をかけて、遠ざかる街を見ていた。


 十年前も、こうやって燃える故郷を後にした。今日も、同じだった。


 ――違うのは。


 あの日、彼女は何も持っていなかった。


 今は、この腕に剣がある。この舟に、仲間がいる。そして、まだ聞いていない言葉が残っている。


(……セリウス)


 カリンの言葉が、耳から離れなかった。


 ――あなたが知ってるのは、十年前までのあの人でしょう。


 ――どれだけ、あなたたちの国のことを、悔やんでたか。


(十年間、あなたは、何を見てきたの)


 答えは、まだどこにもなかった。


 でも、彼女はもう諦めなかった。


 舟は、暗い河を下っていった。



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