第71話 黒翼の教祖
第71話 黒翼の教祖
光王の神殿。
レインたちの前に現れた男は、黒い翼を広げながらゆっくりと歩いてきた。
その姿を見た瞬間、アズールの表情が変わった。
「……教祖。」
ミレイアやアズールでさえ恐れていた存在。
黒翼教団、その頂点に立つ男。
レインは剣を握り直す。
「お前が……黒翼教団の教祖か。」
男は笑った。
「そうだ。」
「私の名は――ヴァルド。」
その瞬間、レオンの闇の呪印が激しく反応した。
「ぐっ……!」
レオンが胸を押さえて膝をつく。
「レオン!」
エレナが駆け寄り、黄金の光を放つ。
しかし、いつもなら落ち着くはずの呪印が消えない。
むしろ、黒い光がさらに強くなっていく。
「どうして……?」
エレナが驚く。
ヴァルドは静かに笑った。
「その呪印は、私が作ったものではない。」
「では、誰が……?」
レインが問いかける。
ヴァルドはレオンを見つめた。
「アレスだ。」
「……!」
レインは驚いた。
だが、ヴァルドは続ける。
「しかし、アレスもまた利用されていただけだ。」
「利用……?」
「そうだ。」
⸻
ヴァルドが手を掲げる。
神殿の床に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
七つの紋章が次々と輝く。
風。
雷。
水。
幻。
氷。
光。
そして――黒。
「七つの遺産は、世界を救うためだけに存在しているのではない。」
レインは魔導書を見る。
「終焉の力……。」
ヴァルドが頷く。
「その通り。」
「七つの力を一つにすれば、世界を救うこともできる。」
「だが、逆も可能だ。」
黒い紋章から闇が噴き出す。
「世界そのものを終わらせることもできる。」
リリアが叫ぶ。
「そんなことをして、何になるの!」
ヴァルドはリリアを見る。
「世界を終わらせるのではない。」
「作り直すのだ。」
⸻
レインは一歩前へ出た。
「同じことだ!」
「今生きている人たちの未来を奪うんだろ!」
ヴァルドは笑わなかった。
「未来?」
「この世界に、本当に未来などあると思うか?」
神殿の壁に映像が浮かび上がる。
戦争。
飢え。
争い。
そして、破壊されていく街。
「人間は何度でも同じことを繰り返す。」
「ならば、一度すべてを壊し、新しい世界を作る。」
レインは剣を強く握る。
「それを決めるのは、お前じゃない。」
「俺たちが決める未来は、俺たち自身で決める。」
レオンもゆっくりと立ち上がった。
「……俺も同じだ。」
ヴァルドがレオンを見る。
「闇に飲まれるつもりはない。」
「俺は俺の意思で戦う。」
⸻
その瞬間。
レオンの呪印から黒い鎖のようなものが飛び出した。
「レオン!」
エレナが光を放つ。
しかし、鎖は光をすり抜けてレオンの身体へ絡みつく。
「くっ……!」
レオンの目が赤く染まる。
「やめろ……!」
「俺は……!」
身体が闇に包まれていく。
レインが駆け寄ろうとする。
「レオン!」
しかし、ヴァルドが指を鳴らした。
ドンッ!!
レインたちは一斉に吹き飛ばされた。
「レイン!」
サラが叫ぶ。
クロードとリリアも壁に叩きつけられる。
アズールが青い炎を放つ。
「こいつ……強すぎる!」
ヴァルドは片手で炎を止めた。
「まだ私と戦う段階ではない。」
「お前たちには、見届けてもらう。」
ヴァルドの背後に巨大な黒い扉が出現する。
その向こうから、古代竜の咆哮が響き渡った。
「終焉の力が、目を覚ます瞬間をな。」
⸻
レインは立ち上がる。
「待て!」
ヴァルドは振り返る。
「第七の遺産を探せ。」
「それがなければ、終焉の力は完成しない。」
「……第七の遺産?」
ヴァルドは微笑んだ。
「お前が一番よく知っている場所にある。」
「お前自身の中にな。」
その言葉を残し、ヴァルドの姿が闇の中へ消えていく。
神殿に静寂が戻った。
レインは自分の胸に手を当てる。
すると――。
身体の奥から、聞いたことのない鼓動が響いた。
ドクン。
ドクン。
魔導書が勝手に開く。
最後のページに、黒い文字が浮かび上がった。
『第七の遺産――始祖の心臓。』
レインの顔が青ざめる。
「……俺の中に、ある?」
その瞬間、レインの胸から黒と金色の光が同時に溢れ出した。
第72話 始祖の心臓へ続く。




