第69話 光の聖女
第69話 光の聖女
黒い霧に覆われた聖都エルシオン。
空に浮かぶ巨大な影を見上げながら、レインは剣を構えた。
「お前は……誰だ?」
黒い影はゆっくりと地上へ降りてくる。
長い黒髪。
漆黒のローブ。
そして、左目には赤い紋章が刻まれていた。
「私はミレイア。」
「黒翼教団、第三位の使徒。」
クロードが驚く。
「第三位って……アズールより上じゃないか!」
アズールは黙ってミレイアを見つめる。
「久しぶりだな。」
「アズール。」
ミレイアが笑う。
「まだ教団に逆らっているのか。」
「私は最初から教団の仲間ではない。」
アズールが答える。
ミレイアの表情が冷たくなる。
「ならば、ここで消えろ。」
⸻
その瞬間、黒い霧が一気に広がった。
「みんな、下がって!」
レインが叫ぶ。
ミレイアが杖を掲げる。
「《黒月》。」
空に巨大な黒い月が現れた。
そこから無数の黒い光が降り注ぐ。
ドドドドドッ!
リリアとクロードが必死に攻撃を弾く。
「数が多すぎる!」
サラが叫ぶ。
「レイン!」
「分かってる!」
レインは魔導書を開く。
五つの紋章が輝く。
「《五重結界》!」
光の壁が仲間たちを包む。
しかし、黒い光は結界を少しずつ侵食していく。
「このままじゃ破られる!」
⸻
その時だった。
「私がやります。」
背後から少女の声が聞こえた。
レインが振り返る。
先ほど黒い影に狙われていた少女。
白い聖衣をまとい、黄金の杖を握っている。
少女は震えながらも、ミレイアへ杖を向けた。
「この街を……これ以上傷つけさせない。」
ミレイアが笑う。
「まだ自分の力も理解していないのに?」
少女の胸元から眩い光が溢れ出す。
「分からなくてもいい。」
「守りたいから、戦います。」
黄金の光が聖都全体へ広がった。
黒い霧が次々と消えていく。
「これは……!」
レインは驚いた。
魔導書が激しく反応している。
『第六の遺産――光王の欠片。』
「やっぱり……。」
少女が振り返る。
「私が……第六の遺産?」
レインは頷く。
「そうだと思う。」
⸻
少女は自分の胸元を見つめた。
そこには黄金の紋章が浮かんでいる。
「私はエレナ。」
「この聖都の聖女です。」
レインは驚く。
「聖女……。」
エレナは少し困ったように笑う。
「でも、私は自分の力を上手く使えません。」
「だから、ずっと怖かった。」
「みんなが私を必要としてくれるのに、何もできない自分が。」
レインは静かに答える。
「力があるかどうかじゃない。」
「守りたいと思えることが、一番大切なんだと思う。」
エレナは目を見開く。
そして、少しだけ笑った。
⸻
ミレイアが二人へ向かって手を伸ばす。
「くだらない話は終わり。」
「その光王の欠片は、教団がいただく。」
黒い魔力が巨大な槍へ変わる。
「危ない!」
レインがエレナの前へ飛び出す。
しかし、レオンも同時に前へ出た。
「今度は俺が守る。」
黒い槍が迫る。
ガキィィン!
レオンの剣が槍を受け止めた。
「ぐっ……!」
胸の呪印が黒く輝く。
「レオン!」
サラが叫ぶ。
ミレイアはその姿を見て笑った。
「その呪印……。」
「なるほど。」
「あなたがアレスの弟ね。」
レオンが睨む。
「兄さんを知っているのか?」
「もちろん。」
ミレイアは目を細める。
「アレスは今、最後の準備をしている。」
「そして――。」
ミレイアが指を鳴らす。
聖都の地下から巨大な黒い柱が突き出した。
ドォォォン!!
街が大きく揺れる。
「聖都の地下に眠る、《光王の神殿》を目覚めさせる。」
レインは驚く。
「地下に神殿が……?」
ミレイアは笑った。
「そこへ来い。」
「第六の遺産を手に入れたいならな。」
黒い霧がミレイアを包む。
「待て!」
レインが追おうとする。
しかし、ミレイアの姿は完全に消えてしまった。
⸻
静寂が戻る。
エレナは地下へ続く階段を見つめた。
「光王の神殿……。」
レインは頷く。
「行こう。」
「そこで第六の遺産を完全に受け取る。」
そしてレオンを見る。
黒い呪印は再び広がり始めていた。
「その前に、レオンの呪印も何とかしないと。」
エレナはレオンの胸へ手をかざす。
黄金の光が優しく包み込む。
すると――。
黒い呪印の広がりが止まった。
「……止まった?」
レオンが驚く。
エレナは頷く。
「完全には消せないけど、私の力なら進行を止められます。」
レインは安心したように笑った。
「ありがとう。」
エレナも頷く。
「私も一緒に行きます。」
「この力が何なのか、自分自身で確かめたい。」
レインは手を差し出した。
「よろしく。」
エレナはその手を握る。
新たな仲間が加わった。
しかし、その直後。
地下から再び巨大な音が響く。
ドクン――。
ドクン――。
光王の神殿が、ゆっくりと目を覚まし始めていた。
第70話 光王の神殿へ続く。




