第68話 聖都エルシオンへ
第68話 聖都エルシオンへ
氷霊城を出ると、空はすっかり晴れていた。
吹雪が嘘のように消え、白銀の山々に朝日が差し込んでいる。
レインたちは山を下りながら、これから向かう場所を確認していた。
「聖都エルシオン……。」
クロードが地図を広げる。
「ここからだと、かなり遠いぞ。」
「それでも行く。」
レインは魔導書を見つめた。
五つの紋章が輝いている。
そして、その中央に新たな文字。
『第六の遺産――光王の欠片』
⸻
レオンは歩きながら胸元を確認する。
黒い呪印は以前より薄くなっていた。
「少し消えてる。」
サラが安心したように言う。
「ああ。」
レオンも微笑む。
「まだ完全じゃないけどな。」
レインはレオンの肩を叩く。
「絶対に治す。」
「ありがとう。」
二人は笑った。
しかし、その様子を見ていたアズールは険しい表情を浮かべていた。
「喜ぶのはまだ早い。」
「呪印が薄くなったのは、古代竜との繋がりが弱まっただけだ。」
「完全に消えたわけじゃない。」
レオンの表情が変わる。
「じゃあ……。」
「聖都へ行けば、完全に消せる可能性がある。」
アズールは頷いた。
「光王の欠片ならな。」
⸻
数日後。
長い旅を終えたレインたちは、巨大な門の前に到着した。
白い城壁。
黄金の塔。
空に浮かぶ巨大な光の結晶。
「これが……聖都エルシオン。」
リリアが目を輝かせる。
街の中心には巨大な神殿がそびえ立っている。
その頂上には、太陽のような光が輝いていた。
しかし――。
「なんだか、静かすぎない?」
サラが呟く。
街には人がほとんどいない。
店も閉まっている。
兵士の姿すら見えない。
レインは魔導書を開く。
すると、突然ページが黒く染まった。
「……何だ?」
文字が浮かび上がる。
『警告。』
『聖都エルシオン、侵食率――47%。』
「侵食……?」
その瞬間。
街の奥から悲鳴が聞こえた。
「助けて!」
レインたちは一斉に走り出す。
⸻
大通りへ出ると、そこには黒い霧に包まれた兵士たちがいた。
「何だ、あれ……。」
兵士たちの目は赤く光っている。
そして、その中心に一人の少女が立っていた。
白い聖衣。
金色の髪。
手には光り輝く杖。
「止まりなさい。」
少女が杖を向ける。
「あなたたちは何者ですか。」
レインが答える。
「俺たちは第六の遺産を探している。」
少女の表情が変わった。
「……第六の遺産?」
その瞬間、少女の背後から黒い影が現れる。
「探す必要はない。」
「すでにここにある。」
黒い影が少女へ手を伸ばす。
少女が苦しそうに叫ぶ。
「いやっ!」
レインは剣を抜いた。
「その子から離れろ!」
魔導書が激しく光る。
そして、少女の胸元から一瞬だけ眩い光が放たれた。
『第六の遺産を確認。』
レインは目を見開く。
「まさか……。」
アズールが静かに呟く。
「そうだ。」
「第六の遺産は――。」
少女の胸元に、黄金の紋章が浮かび上がる。
「この聖女そのものだ。」
その瞬間、聖都全体を黒い霧が覆った。
そして空から、聞き覚えのある声が響く。
「継承者。」
「次は私がお前を試そう。」
レインは空を見上げる。
そこには黒翼教団の幹部が立っていた。
第69話 光の聖女 へ続く。




