第67話 兄弟決戦
第67話 兄弟決戦
氷霊城の最深部。
古代竜が苦しそうに身体を震わせる中、レインとレオンは並んで立っていた。
その正面には、黒い剣を構えたアレス。
「兄さん……。」
レオンが静かに呟く。
アレスは冷たい目でレオンを見る。
「まだ私を兄と呼ぶのか。」
「当然だ。」
「たとえ敵になっても、兄さんは兄さんだ。」
アレスの表情が一瞬だけ揺れた。
しかし、すぐに黒い剣を構える。
「ならば、俺を止めてみろ。」
⸻
ドンッ!
アレスが一瞬で距離を詰める。
ガキィン!
レオンの剣と黒剣が激しくぶつかった。
「ぐっ……!」
レオンが押し込まれる。
「レオン!」
レインが援護しようとする。
しかし、アレスが黒い魔力を放つ。
「お前の相手は私だ。」
「《黒閃》!」
漆黒の斬撃が飛ぶ。
レインは氷晶の魂を使う。
「《氷壁》!」
巨大な氷の壁が現れる。
ドォォン!
斬撃が氷壁を砕く。
「強い……。」
レインは剣を握り直す。
⸻
一方、レオンは必死にアレスの攻撃を受け続けていた。
「どうしてだ……。」
「どうしてこんなことをする!」
アレスは答えない。
ただ剣を振る。
ガキィン!
「俺たちは昔、一緒に騎士を目指しただろ!」
レオンの言葉に、アレスの動きが一瞬止まる。
「覚えている。」
「だったら!」
「だからこそ、私はこの世界を変える。」
アレスの黒い魔力がさらに強くなる。
「この世界は、弱い者を守ってはくれない。」
「ならば、私が世界そのものを変える。」
⸻
レオンは剣を下ろさない。
「それは違う。」
「世界を変えるために、誰かを犠牲にする必要なんてない。」
アレスの目が鋭くなる。
「綺麗事だ。」
「だったら俺が証明する。」
レオンが踏み込む。
「仲間を信じる力でも、世界は変えられる!」
ガキィィン!
レオンの剣がアレスの黒剣を弾き飛ばした。
「なっ……!」
アレスが後退する。
その瞬間、レオンの胸の呪印が激しく輝いた。
「ぐあああっ!」
黒い魔力が暴走する。
レオンの身体から巨大な闇が噴き出した。
「レオン!」
レインが駆け寄る。
「来るな!」
レオンは必死に耐えている。
「俺の中の闇が……。」
「もう抑えられない……!」
⸻
アレスはその様子を見ていた。
「やはりそうか。」
「その呪印は、古代竜の心臓と繋がっている。」
レインが睨む。
「だったら解除しろ!」
「兄さんならできるはずだ!」
アレスは黙っていた。
そして、黒剣をゆっくり下ろす。
「……できない。」
「なぜ?」
「この呪印を解除できるのは――。」
アレスがレオンを見る。
「本人だけだ。」
レオンが驚く。
「俺……?」
「そうだ。」
「お前自身が闇を拒絶しなければならない。」
⸻
レオンは目を閉じる。
頭の中に、これまでの記憶が浮かぶ。
幼い頃のアレス。
一緒に剣を振った日。
初めて騎士になった日。
そして、今まで出会った仲間たち。
レイン。
リリア。
クロード。
サラ。
「俺は……。」
レオンが剣を握り締める。
「一人じゃない。」
黒い呪印に、亀裂が入る。
「俺は俺の意志で戦う!」
バキィィン!
呪印の一部が砕け散った。
「レオン!」
レインが叫ぶ。
しかし、アレスは静かに目を閉じた。
「……見事だ。」
その声には、初めて優しさが混じっていた。
⸻
突然、氷霊城全体が揺れる。
ドォォォォン!!
古代竜が大きく咆哮する。
その胸に埋め込まれた黒い結晶が、ひび割れていく。
「まずい!」
アズールが叫ぶ。
「終焉の力が目覚める!」
アレスが振り返る。
「もう時間がない。」
黒剣を拾い上げる。
レインは身構える。
「まだ戦うのか!」
アレスは首を横に振った。
「違う。」
「次に戦う相手は、私ではない。」
アレスは城の地下を見つめる。
「黒翼教団の本当の目的が、今始まる。」
その瞬間、氷霊城の地下から巨大な黒い光が噴き上がった。
そして、空に巨大な亀裂が走る。
アレスはその中へ歩いていく。
「レイン。」
「第六の遺産を手に入れろ。」
「そうしなければ――。」
「世界は終わる。」
黒い光が消える。
残されたレインたちは、崩れ始めた城を見上げた。
そして魔導書には、新たな文字が浮かび上がる。
『第六の遺産――光王の欠片。』
『次なる目的地――聖都エルシオン。』
レオンは剣を握る。
「行こう。」
レインも頷いた。
「今度こそ、全部終わらせる。」
第68話 聖都エルシオンへ へ続く。




