第66話 古代竜の記憶
第66話 古代竜の記憶
『……助けてくれ。』
古代竜の声が、氷霊城全体に響いた。
レインは驚いて動きを止める。
「今……古代竜が喋った?」
アズールも目を見開いている。
「違う。」
「声を出しているのは、古代竜そのものではない。」
レインは魔導書を見る。
五つの紋章が強く輝いていた。
そして、氷晶の魂から一筋の光が伸びる。
古代竜の胸にある黒い結晶へ触れた。
パァァァッ!
視界が真っ白になる。
⸻
気がつくと、レインは見知らぬ場所に立っていた。
そこには巨大な古代都市が広がっている。
今よりも遥か昔。
空には七色の光が浮かび、巨大な竜たちが自由に飛び回っていた。
「ここは……?」
隣を見る。
レオンもいる。
リリア、クロード、サラもいる。
「みんなも来てるのか?」
しかし、アズールの姿はない。
すると目の前に、一人の少女が現れた。
白い髪。
青い瞳。
そして、胸元に五つの紋章。
「あなたたちは……未来から来たのね。」
レインは驚く。
「誰?」
少女は静かに微笑む。
「私はエリア。」
「最初の継承者。」
⸻
エリアが手を伸ばす。
すると空中に七つの光が浮かび上がる。
「この世界には、七つの遺産が存在する。」
「それぞれが世界を守るために作られた力。」
「しかし、七つの力が揃った時――。」
一つの黒い光が現れる。
「同時に、《終焉の力》も目覚める。」
レインは息をのむ。
「終焉の力……。」
エリアは頷く。
「世界を救う力と、世界を滅ぼす力。」
「二つは最初から一つだった。」
⸻
突然、空が暗くなる。
巨大な黒い竜が姿を現した。
「これは……!」
エリアの表情が険しくなる。
「あれが、かつて世界を滅ぼしかけた竜。」
「名前は――ヴァルガス。」
黒い竜が炎を吐く。
都市が一瞬で消し飛んだ。
「こんな……。」
リリアが言葉を失う。
しかし、その前に一頭の白い古代竜が立ちはだかった。
青い瞳。
銀色の鱗。
それが、現在の古代竜だった。
エリアが語る。
「彼はヴァルガスを止めるため、自らの心臓を封印の核にした。」
「そして、その封印を維持するために――。」
エリアはレオンを見る。
「闇の呪印が作られた。」
「え?」
レオンが驚く。
「俺の呪印が……?」
「そう。」
「呪印は古代竜を操るためのものではない。」
「本来は、古代竜を眠らせるためのものだった。」
⸻
レオンの胸の黒い紋様が光る。
「じゃあ、黒翼教団は……。」
エリアは首を横に振る。
「本来の目的を逆に利用している。」
「呪印を反転させ、古代竜の力を奪おうとしている。」
レインは拳を握る。
「だからアレスは……。」
「そう。」
「彼らは古代竜を復活させたいのではない。」
「古代竜の力を使って、封印されている《終焉の力》を目覚めさせようとしている。」
⸻
その瞬間、視界が大きく揺れた。
遠くから黒い声が響く。
「ようやく分かったか。」
「アレス!」
レインが振り向く。
しかし、そこにいたのはアレスではなかった。
黒い仮面をつけた男。
その背後には、巨大な黒い翼が広がっている。
「私は黒翼教団の教祖。」
「そして、お前たちが探している七つの遺産を作った者だ。」
レインは驚く。
「遺産を作った……?」
男は笑う。
「そう。」
「私は、この世界の最初の継承者だった。」
空間が崩れ始める。
エリアが叫ぶ。
「急いで!」
「この記憶はもうすぐ終わる!」
レインは古代竜を見る。
古代竜は静かにこちらを見つめていた。
そして、その口から最後の言葉が響く。
『継承者よ。』
『私を倒すな。』
『私を――解放してくれ。』
視界が白い光に包まれる。
⸻
「レイン!」
目を開ける。
現実へ戻ってきた。
目の前には古代竜。
胸の黒い結晶。
そして、苦しそうに立つレオン。
「分かった……。」
レインは魔導書を握る。
「古代竜を倒すんじゃない。」
「救うんだ。」
その瞬間、第五の遺産・氷晶の魂が激しく輝いた。
そして地下深くから、もう一つの光が浮かび上がる。
魔導書に新たな文字が刻まれた。
『第六の遺産――光王の欠片。』
レインはその光を見つめる。
「第六の遺産……。」
しかし、その光の前に黒い影が現れた。
アレスだった。
「そこまで辿り着いたか。」
「ならば、次は私が相手をしよう。」
アレスの手に黒い剣が現れる。
「レイン。」
レオンが立ち上がる。
「俺も戦う。」
レインは頷いた。
古代竜を救うため。
レオンを救うため。
そして、黒翼教団を止めるため。
最後の戦いへ向けて、二人は剣を構えた。
第67話 兄弟決戦 へ続く。




