第65話 古代竜の目覚め
第65話 古代竜の目覚め
ドクン――。
ドクン――。
氷霊城の地下から響く巨大な鼓動。
そのたびに城全体が震え、天井から無数の氷の破片が落ちてくる。
「急いで!」
リリアが叫ぶ。
レインは祭壇へ駆け寄った。
宙に浮かぶ青白い水晶。
それが第五の遺産――《氷晶の魂》だった。
レインが手を伸ばした瞬間。
パァァァッ!
眩い光が広がる。
「うっ……!」
氷晶の魂がレインの胸へ吸い込まれていく。
魔導書に五つ目の紋章が刻まれた。
風・雷・水・幻・氷。
「第五の遺産……継承完了。」
しかし、喜んでいる暇はなかった。
「レイン!」
サラの叫び。
レオンがゆっくりと立ち上がっていた。
「……近づくな。」
その声は、いつものレオンとは違っていた。
⸻
黒い呪印が全身を覆っている。
瞳も黒く染まり、身体から強烈な闇の魔力が溢れていた。
「レオン……?」
リリアが恐る恐る近づく。
「俺は……もう俺じゃない。」
レオンは剣を抜いた。
「逃げろ。」
「今なら、まだ……。」
「嫌だ。」
レインは首を横に振る。
「絶対に置いていかない。」
「俺たちは仲間だ。」
レオンの手が震える。
「……レイン。」
一瞬だけ、元の瞳に戻った。
だが――。
ドクン!
黒い呪印が再び脈打つ。
「ぐああああっ!」
レオンが頭を抱える。
その瞬間。
地下から巨大な魔力が噴き出した。
ドォォォォン!!
床が崩れ、巨大な穴が開く。
その奥から、巨大な赤黒い瞳が二つ現れた。
「……嘘だろ。」
クロードが呟く。
巨大な頭部がゆっくりと地上へ現れる。
黒い鱗。
巨大な角。
燃えるような赤い瞳。
そして、山そのものを揺らす咆哮。
「グオオオオオオオオッ!!」
古代竜が目を覚ました。
⸻
アズールが険しい表情を浮かべる。
「間に合わなかった。」
「これが……古代竜。」
サラは震えながら見上げる。
「大きすぎる……。」
古代竜の翼が開く。
その一度の羽ばたきだけで、氷霊城の壁が吹き飛んだ。
「このままじゃ山ごと崩れる!」
リリアが叫ぶ。
レインは魔導書を開いた。
五つの紋章が同時に輝く。
「だったら、俺たちが止める!」
「でもどうやって!?」
クロードが叫ぶ。
レインは古代竜の胸を見る。
そこには巨大な黒い結晶が埋め込まれていた。
「見つけた。」
「古代竜の心臓を操っているのは、あの結晶だ!」
アズールが頷く。
「そうだ。」
「だが、あれは闇の魔力そのもの。」
「普通の攻撃では壊せない。」
レインは第五の遺産を握り締めた。
氷晶の魂が冷たい光を放つ。
「だったら……浄化する。」
⸻
レインが前へ出る。
「みんな、力を貸してくれ!」
リリアが剣を構える。
「もちろん!」
クロードも短剣を握る。
「ここまで来たんだ。」
サラも頷く。
「絶対に助ける。」
そしてレオン。
闇に飲まれながらも、必死に剣を握っていた。
「……俺も。」
「まだ……仲間だから。」
レインは笑った。
「それで十分だ。」
五人の紋章が輝き始める。
風。
雷。
水。
幻。
氷。
五つの力が重なり、巨大な魔法陣を形成する。
しかしその瞬間。
古代竜が大きく口を開いた。
赤黒い炎が集まり始める。
「まずい!」
アズールが叫ぶ。
「全員、伏せろ!」
次の瞬間。
山を焼き尽くすほどの黒炎が放たれた。
レインは魔導書を掲げる。
「《五聖結界》!!」
五つの力が壁となり、黒炎を受け止める。
だが――。
「ぐっ……!」
少しずつ押されていく。
「このままじゃ……!」
レインの足元に亀裂が走る。
その時、レオンが前へ出た。
「レイン……。」
「俺の闇を使え。」
「え?」
「この呪印は、古代竜と繋がっている。」
「なら……逆に利用できる。」
レオンは自分の胸へ剣を当てる。
「俺ごと、あの心臓を浄化してくれ。」
「そんなことしたら、お前が!」
レインが叫ぶ。
レオンは静かに笑った。
「信じてる。」
「お前なら、俺を連れ戻せる。」
その瞬間、レオンの身体から黒い魔力が溢れ出した。
レインの五つの紋章と共鳴する。
魔導書に、これまで存在しなかった文字が浮かび上がった。
『第六の遺産への道を確認。』
「第六……?」
レインが驚く。
その直後、古代竜の心臓に巨大な亀裂が入った。
そして――。
古代竜の中から、聞いたことのない声が響いた。
『……助けてくれ。』
レインは目を見開く。
古代竜は敵ではなかった。
その声の主は――。
第66話 古代竜の記憶 へ続く。




