第63話 青炎の守護獣
第63話 青炎の守護獣
青い炎の狼が、氷霊城の大広間を駆け抜ける。
ドンッ!
巨体からは想像できないほど速い。
「来る!」
レインが叫んだ瞬間、守護獣の爪が目の前まで迫っていた。
ガキィン!
レオンが剣で受け止める。
「ぐっ……!」
そのまま押し込まれていく。
「レオン!」
リリアが横から斬り込む。
しかし守護獣は軽々と身をひねり、青い炎をまとった尻尾でリリアを吹き飛ばした。
「きゃっ!」
「リリア!」
クロードが受け止める。
「こいつ、強すぎるだろ!」
⸻
レインは守護獣をじっと見つめる。
炎をまとっているのに、足元には氷の跡が残っている。
「……待って。」
「何か変だ。」
サラも目を凝らす。
「どうしたの?」
「炎と氷が、同時に動いてる。」
守護獣が再び突進してくる。
レインはギリギリで避けた。
床を見る。
守護獣が通った場所だけ、氷が青く輝いている。
「分かった。」
「炎そのものが本体じゃない。」
アズールが少しだけ笑った。
「よく気づいたな。」
⸻
「守護獣の力を動かしているのは、あの青い結晶だ!」
レインが指差す。
守護獣の胸の奥。
青い炎に隠れて、小さな結晶が輝いている。
「でも、どうやって攻撃する?」
クロードが尋ねる。
レインは仲間を見る。
「俺が隙を作る。」
「みんなは結晶を狙ってくれ。」
「危険すぎる!」
サラが止める。
「大丈夫。」
レインは笑った。
「一人じゃないから。」
⸻
レインが走り出す。
守護獣も真正面から向かってくる。
「《風刃》!」
本来なら魔法を使えば凍らされる。
しかしレインは風を一瞬だけ発生させ、すぐに解除する。
守護獣の視界がわずかに乱れた。
「今!」
クロードが背後へ回り込む。
「こっちだ!」
守護獣が振り向く。
その瞬間、リリアが横から飛び込む。
「こっちも!」
守護獣の動きが止まった。
レオンが最後に正面へ踏み込む。
「レイン!」
「任せろ!」
⸻
レインは全力で跳ぶ。
青い炎が身体を包み込む。
熱くない。
むしろ、凍えるほど冷たい。
「これが……。」
胸の結晶へ手を伸ばす。
しかし、守護獣が最後の力で牙を向ける。
「レイン!」
サラが叫ぶ。
レインは逃げなかった。
「終わらせる!」
魔導書の四つの紋章が輝く。
風。
雷。
水。
幻。
四つの力が一つに重なる。
「《四象連環》!」
巨大な光が守護獣を包み込んだ。
青い炎が消えていく。
そして――。
パキン。
胸の結晶に、一本の亀裂が入った。
「今だ!」
全員が力を合わせる。
レオンの剣。
リリアの剣。
クロードの短剣。
サラの魔法。
そしてレインの魔導書。
五つの力が同時に結晶へ届いた。
パァァァン!
青い光が大広間を包む。
⸻
光が消えると、そこには小さな白い狼が座っていた。
さっきまでの巨大な姿が嘘のようだった。
「……小さくなった?」
クロードが驚く。
白い狼はレインの足元へ歩いてくる。
そして、その額から小さな青い結晶が現れた。
アズールが静かに近づく。
「試練は終わった。」
「お前たちは、力ではなく信頼で守護獣を倒した。」
アズールは白い狼へ手をかざす。
すると狼の身体が青い光へ変わっていく。
その光はレインの魔導書へ吸い込まれた。
ページに新たな文字が刻まれる。
『第五の遺産――氷晶の魂、継承準備完了。』
⸻
レインが振り返る。
「これでレオンを……。」
アズールは頷いた。
「まだ終わっていない。」
「氷晶の魂は、最上階の祭壇にある。」
「だが、そこへ行く前に一つ伝えておく。」
アズールの表情が変わる。
「黒翼教団が、この城へ来た本当の目的は第五の遺産ではない。」
「では、何を?」
アズールは最上階を見上げた。
「この城の地下に眠る――」
「古代竜の心臓だ。」
その瞬間、氷霊城の地下から巨大な鼓動が響いた。
ドクン。
ドクン。
城全体が震え始める。
レオンの呪印も、同じように脈打っていた。
「まさか……。」
レインは青ざめる。
「呪印と、古代竜の心臓が繋がってる……?」
アズールは静かに答えた。
「その通りだ。」
第64話 地下に眠る古代竜 へ続く。




