第59話 白銀の山脈
第59話 白銀の山脈
王都へ戻ってから三日。
レインたちは必要最低限の装備だけを整え、すぐに北への旅へ出発した。
目的地は、王国最北端にそびえる氷霊峰。
第五の遺産――《氷晶の魂》が眠るとされる場所だ。
しかし、その道のりは決して楽ではなかった。
「寒っ!」
クロードは厚手のマントに身を包みながら身震いする。
「砂漠の次は雪山かよ……。」
リリアは苦笑した。
「文句を言っても暖かくならないぞ。」
レオンは馬車の中で静かに横になっていた。
黒い呪印は胸から肩へと少しずつ広がっている。
サラは何度もその様子を確認し、不安そうな表情を浮かべた。
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数日後。
景色は一変していた。
見渡す限りの銀世界。
吹雪が視界を遮り、冷たい風が容赦なく体力を奪っていく。
「ここが白銀の山脈……。」
レインは息を吐く。
白い息がすぐに風へ消えた。
魔導書が淡く光る。
『第五の遺産まで、残り十五キロ。』
「もう近い。」
その言葉に仲間たちの表情が少しだけ明るくなる。
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その時だった。
ガウッ!
雪原の奥から低い唸り声が聞こえた。
「何かいる。」
レオンも無理を押して剣へ手を掛ける。
雪煙の中から現れたのは、純白の毛並みを持つ巨大な狼だった。
一体だけではない。
十数体の群れが静かにこちらを見つめている。
「魔物か?」
クロードが短剣を抜く。
しかし、狼たちは襲ってこない。
ただレインを見つめているだけだった。
群れの中から一回り大きな狼が前へ出る。
その首には青い結晶が埋め込まれていた。
魔導書が反応する。
『氷牙狼の長・シリウス』
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シリウスはレインの前まで歩いてくる。
その青い瞳には敵意がなかった。
『継承者。』
狼は静かに語りかける。
「話せるのか!」
クロードが目を丸くする。
シリウスは小さく頷く。
『フェンリクから話は聞いている。』
『お前たちを待っていた。』
レインは驚いた。
「フェンリクが?」
『炎狼王は最後に伝えてきた。』
『次の継承者を助けてほしい、と。』
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シリウスは山の頂上を見上げる。
そこには吹雪に包まれた巨大な氷の城が見えていた。
「あれが……。」
『氷霊城。』
『第五の遺産が眠る場所だ。』
だがシリウスの表情は険しい。
『しかし今、城は黒翼教団に占拠されている。』
「何だって!?」
リリアが声を上げる。
『数日前、青い炎を操る男が現れた。』
『城の守護者は敗れ、城門は閉ざされた。』
レインは思わず顔を見合わせる。
「青い炎……。」
イグニスではない。
だが黒翼教団の新たな幹部かもしれない。
⸻
その時。
レオンが苦しそうに胸を押さえた。
「ぐっ……!」
黒い呪印がさらに広がる。
サラが慌てて支える。
「レオン!」
シリウスは静かに呪印を見つめた。
『時間がない。』
『その呪印は、あと七日で命を奪う。』
その一言に全員の表情が凍りつく。
「七日……。」
レインは拳を握る。
もう迷っている時間はない。
シリウスは吹雪の向こうを見つめた。
『案内しよう。』
『だが、覚悟しろ。』
『氷霊城へ続く道には、白銀の番人が待っている。』
その瞬間、山頂から巨大な咆哮が響いた。
ゴオオオオォォォッ!!
吹雪が渦を巻き、空一面が白く染まる。
その中に、翼を持つ巨大な白い影が姿を現した。
「ドラゴン……!」
レインは息をのむ。
氷霊峰最大の守護者が、ついに姿を現した。
第60話 白銀の守護竜 へ続く。




