第58話 闇の呪印
第58話 闇の呪印
「レオン!」
レインは倒れたレオンを抱き起こした。
彼の額には大量の汗が浮かび、呼吸も乱れている。
胸に刻まれた黒い紋様は、心臓を中心にゆっくりと広がっていた。
「しっかりしろ!」
レオンは苦しそうに目を開く。
「……悪い。」
「少し、力が入らない。」
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ルナはすぐにレオンの胸へ手をかざした。
淡い紫色の光が紋様を包み込む。
しかし次の瞬間、闇の力が光を弾き飛ばした。
「きゃっ!」
ルナは後ろへよろめく。
「ルナ!」
リリアが支える。
ルナは悔しそうに首を振った。
「駄目……。」
「これは普通の呪いじゃない。」
「黒翼教団の幹部だけが使える《闇の呪印》よ。」
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「治せないのか?」
クロードが焦った声を上げる。
ルナは静かに答えた。
「完全に解く方法は一つだけ。」
「呪印を刻んだ本人を倒すか、自ら解除させること。」
その言葉に全員が黙り込む。
つまり――。
アレスを止めなければ、レオンは助からない。
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レオンは無理に笑顔を作った。
「そんな顔をするな。」
「まだ死ぬって決まったわけじゃない。」
「兄さんは俺が止める。」
しかし、その直後。
激しい咳とともに黒い血を吐き出した。
「レオン!」
サラが慌てて支える。
レインは拳を強く握った。
「絶対に助ける。」
「約束だ。」
レオンは静かに頷いた。
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神殿の最奥。
ルナは祭壇の前へ立ち、小さな水晶箱を取り出した。
「これは……。」
箱の中には、一枚の古びた地図が入っていた。
「第五の遺産への道。」
レインは地図を受け取る。
そこには王国のさらに北。
雪に覆われた山脈が描かれていた。
中央には青い印。
「《氷霊峰》。」
ルナが静かに言う。
「第五の遺産、《氷晶の魂》が眠る場所。」
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「そこへ行けばレオンを救えるの?」
サラが尋ねる。
ルナは少し考え、頷いた。
「氷晶の魂には、あらゆる呪いを抑える浄化の力がある。」
「完全には治せないかもしれない。」
「でも、進行を止めることはできる。」
レインは迷わず答えた。
「行こう。」
「一刻も早く。」
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神殿を出る頃には、幻影の森は穏やかな姿を取り戻していた。
霧は晴れ、鳥たちのさえずりが聞こえる。
ルナは入口まで見送りに来てくれた。
「継承者。」
「ありがとう。」
「また必ず会おう。」
レインは笑顔で頷く。
「約束する。」
ルナは手を振り、光の蝶とともに森の奥へ消えていった。
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その頃――。
黒翼教団本部。
アレスは玉座の前で片膝をついていた。
その先には、黒いローブをまとった人物が座っている。
顔は深い闇に隠れ、姿ははっきりと見えない。
「第四の遺産は奪えませんでした。」
アレスが静かに報告する。
ローブの人物は低く笑った。
「構わぬ。」
「計画は予定どおり進んでいる。」
アレスは顔を上げる。
「ですが、継承者は予想以上に成長しています。」
「だからこそ面白い。」
闇の中で、赤い瞳がゆっくりと開いた。
「第五の使徒も、まもなく目覚める。」
その言葉にアレスは静かに頷く。
「承知しました。」
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一方、王都へ戻る街道。
レインは眠るレオンを背負いながら歩いていた。
黒い呪印は少しずつ広がり続けている。
残された時間は多くない。
レインは北の空を見上げる。
雪雲の向こうには、次なる目的地――氷霊峰が待っていた。
「絶対に助ける。」
その決意を胸に、仲間たちは新たな旅路へ踏み出した。
第59話 白銀の山脈 へ続く。




