第55話 覚醒する継承者
第55話 覚醒する継承者
神殿中を包む青い光。
レインの手の中で、魔導書がこれまでにない輝きを放っていた。
ページが風もないのに次々とめくられ、古代文字が浮かび上がる。
『三つの遺産を確認。』
『融合魔法、解放。』
「融合魔法……?」
レインが呟いた瞬間、風・雷・水の紋章が同時に光を放つ。
三つの力が魔導書へ吸い込まれ、一つの巨大な魔法陣が足元に広がった。
⸻
「レイン!」
リリアが叫ぶ。
「集中しろ!」
騎士王バルディオンが巨大な剣を振り上げる。
その一撃が振り下ろされれば、神殿ごと崩れてしまう。
「終わりだ。」
アレスが静かに呟く。
しかしレインは目を閉じた。
魔導書の声が心へ響く。
『恐れるな。』
『仲間を信じよ。』
ゆっくりと目を開く。
そこには仲間たちの姿があった。
レオンが前で時間を稼ぐ。
リリアが剣を構える。
クロードが次の隙を狙う。
サラが周囲を警戒している。
一人ではない。
「みんな……ありがとう。」
⸻
レインは魔導書を高く掲げた。
「新たなる古代魔法――」
青、緑、金色の光が渦を巻く。
「《蒼雷嵐》!」
轟音が神殿を揺らした。
巨大な水流が渦となり、その中を雷が駆け巡る。
さらに暴風が渦を加速させる。
三つの力が一つになった巨大な嵐。
それは一直線にバルディオンへ向かった。
「グォォォォッ!」
騎士王は剣で受け止めようとする。
だが、水が鎧を包み込み、雷が内部へ走る。
さらに暴風が巨体の体勢を崩した。
「今だ!」
レオンが叫ぶ。
⸻
リリアが全力で駆ける。
「はあああぁぁっ!」
剣を振り下ろす。
ガキィィン!!
騎士王の剣に入っていた亀裂が大きく広がる。
クロードも飛び上がる。
「これで終わりだ!」
短剣が柄へ突き刺さる。
ピシッ。
パキパキッ――。
巨大な剣全体にひびが走る。
「レイン!」
サラが叫ぶ。
「決めて!」
レインは最後の魔力を込める。
「《蒼雷嵐》!!」
巨大な渦が剣を飲み込む。
パァァァン!!
眩い光とともに、騎士王の剣は粉々に砕け散った。
⸻
ゴォォォ……。
剣を失ったバルディオンの身体がゆっくり崩れていく。
黒い鎧は光へ変わり、巨大な騎士は静かに片膝をついた。
「……見事だ。」
低い声が響く。
「継承者。」
「仲間を信じる心こそ……真の力。」
そう言い残すと、騎士王は無数の光となって空へ消えていった。
神殿を覆っていた黒い霧も晴れていく。
「勝った……。」
クロードがその場へ座り込む。
リリアも安堵の息をついた。
⸻
しかし、その直後だった。
アレスが静かに拍手を始める。
「素晴らしい。」
「さすが継承者。」
レオンが剣を向ける。
「兄さん!」
アレスは笑みを崩さない。
「だが、まだ終わりではない。」
彼は黒い結晶を取り出した。
それは今まで見たものよりも大きく、不気味な光を放っている。
「これは……。」
ルナの表情が青ざめる。
「神殿の核を闇へ変える結晶!」
アレスは迷うことなく、それを神殿中央の祭壇へ突き刺した。
ゴォォォォォッ!!
神殿全体が激しく揺れる。
床が割れ、天井から巨大な水晶が落ち始めた。
「まずい!」
レオンが叫ぶ。
「神殿が崩れる!」
アレスは黒い魔法陣を展開し、後退する。
「継承者。」
「第四の遺産が欲しければ、神殿を救ってみせろ。」
「それができるなら、な。」
そう言い残し、黒い光に包まれて姿を消した。
レインは崩れ始めた神殿を見上げる。
ルナは苦しそうに膝をつき、その身体はさらに透け始めていた。
「お願い……。」
「神殿を……。」
レインは魔導書を握り締める。
第四の遺産を手に入れる前に、守らなければならないものがあった。
第56話 崩壊する幻影神殿 へ続く。




