第54話 幻影騎士王バルディオン
第54話 幻影騎士王バルディオン
ゴォォォォォッ!!
幻影騎士王バルディオンの咆哮が神殿中に響き渡る。
黒い霧をまとった巨体は、まるで動く要塞だった。
全長は六メートルを超え、その巨大な剣だけでも人の背丈ほどある。
「来るぞ!」
レオンが叫ぶ。
バルディオンは剣を大きく振り上げた。
「全員、離れろ!」
ドォォォォン!!
剣が床を叩きつけた瞬間、衝撃波が神殿中へ広がる。
レインたちは咄嗟に飛び退いたが、床は砕け、巨大な亀裂が走った。
「なんて威力だ……。」
クロードが汗を流す。
まともに受ければ一撃で終わる。
⸻
「俺が前に出る!」
レオンが騎士王へ突っ込む。
鋭い連続攻撃。
だが――。
ガキィン!
「硬い!」
剣は黒い鎧をわずかに傷つけるだけだった。
バルディオンは無言のまま拳を振り下ろす。
レオンは間一髪で回避するが、衝撃だけで吹き飛ばされた。
「ぐっ!」
壁へ激突し、膝をつく。
「レオン!」
サラが駆け寄る。
「平気だ……!」
立ち上がるものの、息は荒かった。
⸻
リリアは騎士王の背後へ回る。
「ここだ!」
全力の一撃。
しかし剣は鎧に弾かれた。
「効かない!」
その瞬間、騎士王の肘打ちがリリアを吹き飛ばす。
「きゃあっ!」
レインが咄嗟に受け止める。
「大丈夫か!」
「まだ戦える。」
だが、その腕は震えていた。
⸻
クロードは周囲を素早く観察していた。
「待て……。」
「こいつ。」
「胸の水晶がない。」
確かに他の幻影騎士とは違い、弱点だった水晶が見当たらない。
魔導書が反応する。
新たな文字が浮かび上がった。
『核は剣に宿る。』
レインは目を見開く。
「剣だ!」
「騎士王の本体は剣!」
クロードが笑う。
「そういうことか!」
⸻
「剣を狙うぞ!」
全員が頷く。
レオンが正面から攻撃を引き受ける。
リリアとサラは左右へ展開。
クロードは死角へ潜り込む。
そしてレインは魔導書へ魔力を集中させた。
「《蒼海の鎖》!」
青い鎖が騎士王の腕へ巻き付く。
「今だ!」
リリアが跳ぶ。
ガキィン!
剣へ強烈な一撃を叩き込む。
しかし剣はびくともしない。
「まだだ!」
サラも短剣で斬りつける。
火花が散る。
クロードが最後に飛び上がり、柄の部分へ短剣を突き立てた。
ピシッ。
小さな亀裂が入る。
「割れた!」
その瞬間だった。
騎士王が怒りの咆哮を上げる。
ゴォォォォッ!!
黒い魔力が爆発し、全員が吹き飛ばされた。
「ぐあっ!」
レインは床へ転がる。
魔導書も手から離れそうになる。
⸻
その時、ルナが震える声で叫んだ。
「早く……!」
「神殿が限界!」
天井から水晶が次々と崩れ落ちる。
黒い亀裂は神殿全体へ広がっていた。
アレスはそれを見て笑う。
「もう終わりだ。」
「幻影神殿は私のものになる。」
レオンはゆっくり立ち上がる。
「まだ終わってない。」
アレスは首を傾げた。
「何?」
レオンは剣を構える。
「俺は一人じゃない。」
レインも立ち上がる。
リリアも。
クロードも。
サラも。
全員が再び武器を握った。
「最後まで諦めない。」
レインは静かに言う。
その瞬間、胸元の三つの紋章――風・雷・水――が同時に輝き始めた。
魔導書のページが激しくめくられる。
そこに、これまで見たことのない文字が浮かび上がる。
『継承条件を確認。』
『新たなる古代魔法、解放可能。』
レインは驚きながら魔導書を見つめた。
青い光が神殿中を包み込んでいく。
「これは……新しい力?」
その輝きを見たルナは、小さく微笑んだ。
「継承者。」
「あなたは、また一歩前へ進んだ。」
そして、神殿を揺るがす光の中で、レインは新たな力を手にしようとしていた。
第55話 覚醒する継承者 へ続く。




