第53話 兄弟の剣
第53話 兄弟の剣
キィン――。
二本の剣が激しくぶつかり合う。
レオンとアレス。
兄弟の戦いが、幻影神殿の中央で始まった。
「はあっ!」
レオンが鋭い一撃を繰り出す。
しかしアレスは余裕の表情で受け流した。
「剣は速くなった。」
「だが、迷いがある。」
ガキィン!
反撃の一閃。
レオンは後方へ弾き飛ばされる。
床を滑りながらも、すぐに立ち上がった。
「迷いなんて……ない!」
「本当にそうか?」
アレスは静かに笑う。
「お前は今でも、私を斬る覚悟ができていない。」
その言葉にレオンの表情が揺らぐ。
⸻
一方、レインたちは幻影騎士たちとの戦いを続けていた。
「右から来る!」
クロードの声と同時に、三体の騎士が飛び込んでくる。
リリアが前へ出る。
「任せろ!」
鋭い剣閃。
一体目の水晶が砕ける。
続いてクロードが背後へ回り込み、二体目を撃破。
「最後は!」
レインが魔導書を掲げた。
「《蒼海の槍》!」
青い水槍が一直線に飛び、最後の騎士の胸を貫く。
パリン!
紫色の水晶が砕け、騎士は光となって消えた。
「あと少しだ!」
⸻
その時だった。
ルナが突然苦しそうに胸を押さえる。
「うっ……。」
「ルナ!」
レインが駆け寄る。
彼女の身体が少しずつ透け始めていた。
「神殿が……限界。」
「アレスが侵食を続けている。」
神殿の壁には黒い亀裂が広がり、水晶は次々と黒く染まっていく。
「このままじゃ、神殿ごと崩れる。」
レインは魔導書を強く握った。
「何か方法は!」
ルナは震える手で神殿の最上階を指差す。
「あそこに……《幻影の核》がある。」
「あれを守れれば、神殿は持ちこたえられる。」
しかし、その道を塞ぐように巨大な魔法陣が現れた。
ゴォォォ……。
黒い霧が集まり、一体の巨人が姿を現す。
高さは五メートル以上。
漆黒の鎧をまとった巨大な騎士だった。
魔導書が激しく光る。
『幻影騎士王 バルディオン』
「騎士王……!」
リリアが息をのむ。
巨大な剣がゆっくりと持ち上げられる。
次の瞬間。
ドォォォン!!
床が砕けるほどの一撃が振り下ろされた。
「散れ!」
レオンが叫ぶ。
全員が左右へ飛び退く。
巨大な衝撃で神殿が大きく揺れた。
⸻
アレスは兄との戦いを止め、騎士王を見上げる。
「よくやった。」
「そこで継承者を止めろ。」
騎士王は低く唸り、再びレインたちへ向き直る。
レインは仲間を見回した。
「ここで時間をかけられない。」
「俺が騎士王を引きつける!」
「無茶だ!」
リリアが叫ぶ。
「一人じゃ勝てない!」
レインは首を横に振る。
「勝つ必要はない。」
「時間を稼げればいい。」
クロードがニヤリと笑う。
「なら俺も残る。」
「俺もだ。」
リリアも剣を構える。
サラは短剣を抜き、レオンの隣へ立った。
「みんなで来たんだから。」
「みんなで帰る。」
レオンは静かに頷く。
「ありがとう。」
⸻
その瞬間、騎士王バルディオンが雄叫びを上げる。
ゴォォォォォッ!!
神殿中の黒い霧が騎士王へ集まり、その身体はさらに巨大化していく。
魔導書には新たな文字が浮かび上がった。
『第二の試練、開始。』
レインは深く息を吸い、魔導書を掲げる。
「みんな。」
「絶対に乗り越えよう。」
仲間たちは力強く頷いた。
そして、幻影神殿最大の試練との戦いが幕を開けた。
第54話 幻影騎士王バルディオン へ続く。




