表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された雑用係、実は最強の古代魔法使いでした  作者: ラーラーリールー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/68

第49話 霧に包まれた森

王都を出発して三日。


街道を抜けた先に、一面を白い霧に包まれた森が姿を現した。


「ここが……。」


レインは立ち止まり、森を見上げる。


木々は空を覆い隠すほど高く、枝葉の隙間から差し込む光さえ紫色に染まっていた。


「幻影の森。」


レオンが静かに呟く。


「王国でも最も危険な禁域です。」


サラは腰の短剣に手を添える。


「なんだか嫌な空気ね。」


クロードは苦笑した。


「砂漠の次はお化け屋敷かよ。」


「笑えない。」


リリアは真剣な表情のまま森を見つめていた。



森へ一歩足を踏み入れた瞬間だった。


霧がゆっくりと五人を包み込む。


シン……。


鳥の声も風の音も消えた。


静寂だけが広がる。


「全員、離れるな。」


レオンが声を掛ける。


全員が頷き、一定の距離を保ちながら進み始めた。


しかし数分後。


「……あれ?」


クロードが辺りを見回す。


「サラは?」


レインが振り返る。


そこには四人しかいなかった。


「さっきまで後ろにいたはずだ!」


「サラ!」


リリアが叫ぶ。


返事はない。


霧だけが静かに揺れていた。



一方その頃。


サラは一人、見知らぬ場所へ立っていた。


「ここは……?」


そこは幼い頃に暮らしていた砂漠の村だった。


市場には人々が笑顔で歩いている。


「お父さん?」


亡くなったはずの父親が目の前に立っていた。


「サラ。」


「帰ってきたんだな。」


優しい笑顔。


温かい声。


「そんな……。」


サラの目から涙がこぼれる。


「会いたかった……。」


父親は静かに手を差し伸べた。


「もう旅なんてやめよう。」


「ここで暮らそう。」


サラはその手を見つめた。


本物だと思った。


だが胸の奥に、何かが引っ掛かる。


「違う……。」


父親の笑顔が少しだけ歪んだ。


「どうした?」


サラは首を横に振る。


「あなたはもう……いない。」


その瞬間。


目の前の景色がガラスのように砕け散った。



「サラ!」


レインたちの声が聞こえる。


気がつくと、彼女は森の中へ戻っていた。


「みんな!」


サラは駆け寄る。


レオンは真剣な表情で言う。


「幻を見せられましたか。」


サラは静かに頷く。


「大切な人だった。」


「でも、本物じゃなかった。」


レオンは小さく息を吐く。


「この森は心の弱さを利用します。」


「油断しないでください。」



さらに奥へ進む。


霧はますます濃くなっていく。


その時だった。


レインの視界が突然揺らぐ。


気が付くと、一人で草原に立っていた。


「ここは……。」


見覚えがある。


元の世界。


通っていた高校の近くの公園だった。


遠くから聞こえる笑い声。


制服姿の友人たち。


そして――。


「レイン。」


振り返ると、母親が立っていた。


「帰っておいで。」


「もう危ない旅なんて終わり。」


「みんな待ってるよ。」


優しい声だった。


レインは思わず一歩踏み出す。


だが、その時。


胸元の魔導書が淡く光った。


『これは現実ではない。』


頭の中へ直接声が響く。


レインは目を閉じ、ゆっくり深呼吸した。


「帰りたい。」


「でも……。」


目を開く。


「今は帰れない。」


「俺には守りたい世界がある。」


母親の姿が静かに微笑む。


そして光となって消えていった。



レインが目を覚ますと、仲間たちが心配そうに見つめていた。


「大丈夫?」


リリアが声を掛ける。


「ああ。」


レインは静かに頷く。


「この森は、本当に危険だ。」


その直後。


森の奥から鈴の音が聞こえた。


リン……。


リン……。


霧の向こうに、小さな人影が見える。


銀色の長い髪。


紫色の瞳。


白いワンピースを着た少女だった。


少女は五人を見つめ、優しく微笑む。


「ようこそ。」


「継承者。」


その声と同時に、森の霧が大きく渦を巻き始めた。


第四の遺産への試練が、いよいよ始まろうとしていた。


第50話 幻を司る少女 へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ