第48話 幻影の森への道
灼熱砂漠を後にしてから一週間。
レインたちはようやく王都へ戻ってきた。
門をくぐると、見慣れた街並みが広がる。
だが四人の表情は明るくなかった。
イグニスとの圧倒的な実力差。
その現実が、今も心に重くのしかかっている。
「とりあえず研究院へ行こう。」
レインがそう言うと、三人は静かに頷いた。
⸻
魔術研究院。
エルドとノアは四人の姿を見るなり、驚いた表情を浮かべた。
「無事だったか!」
「よかった……。」
しかし、レインたちの表情を見ると、すぐに何があったのか察した。
「……会ったんだな。」
エルドの言葉に、レインは静かに頷く。
「炎の使徒イグニス。」
「戦いました。」
「でも、全く歯が立ちませんでした。」
研究室に沈黙が流れる。
ノアは深く息をつき、机の上に一冊の古い本を置いた。
「予想より早かった。」
「四使徒が目覚め始めています。」
リリアが尋ねる。
「どうすれば勝てるんですか。」
ノアは首を横に振った。
「今のままでは勝てない。」
「ですが、方法は一つだけあります。」
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ノアは部屋の奥から古びた地図を取り出した。
そこには王国北東部の深い森が描かれている。
地図の中央には紫色の印。
「ここが《幻影の森》。」
クロードが首を傾げる。
「森?」
「第四の遺産がある場所です。」
レインは魔導書を開いた。
するとページがひとりでにめくれ、地図と同じ場所が青く光る。
「反応してる。」
エルドは真剣な表情で話し始めた。
「幻影の森は特殊な結界に包まれている。」
「入った者は幻を見せられ、ほとんどが二度と戻れない。」
サラが腕を組む。
「幻覚ってこと?」
「ただの幻覚ではありません。」
ノアは静かに答えた。
「心の弱さそのものを映し出す森です。」
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その時だった。
コンコン。
研究室の扉が叩かれる。
「失礼します。」
入ってきたのは王国騎士団の青年だった。
銀色の鎧に身を包み、腰には一本の長剣。
青い髪と落ち着いた瞳が印象的だった。
「紹介しよう。」
エルドが言う。
「王国騎士団副隊長、レオン・ヴァイス。」
レオンは四人へ軽く頭を下げる。
「話は聞いています。」
「炎の使徒と戦ったそうですね。」
クロードが驚く。
「副隊長?」
「そんな偉い人が?」
レオンは少し笑った。
「肩書きは気にしないでください。」
「今回は皆さんと同行するよう命じられました。」
リリアが小さく呟く。
「また仲間が増えた。」
サラも興味深そうにレオンを見つめる。
「腕は立つの?」
レオンは腰の剣を軽く叩いた。
「それなりには。」
その一言だけだったが、不思議な自信が感じられた。
⸻
翌朝。
王都東門。
レイン、リリア、クロード、サラ、そしてレオン。
五人は新たな旅へ出発する。
門の前でエルドが声をかけた。
「気をつけろ。」
「幻影の森では、自分自身との戦いになる。」
ノアも続ける。
「第四の遺産は、おそらく精神に関わる力を持っています。」
レインは静かに頷く。
「必ず見つけます。」
「そしてもっと強くなって、イグニスを救います。」
その決意に仲間たちも頷いた。
五人は王都をあとにし、北東へ続く街道を歩き始める。
その頃――。
深い霧に包まれた幻影の森。
森の中心では、一人の少女が静かに目を閉じていた。
銀色の長い髪。
紫色の瞳。
彼女の周囲には無数の光の蝶が舞っている。
少女はゆっくりと目を開き、小さく呟いた。
「……継承者が来る。」
その声と同時に、森全体が淡く紫色に輝き始めた。
第四の遺産は、彼らを待っていた。
第49話 霧に包まれた森 へ続く。




