第43話 砂漠に消えた仲間
ゴォォォォッ――。
激しい砂嵐が灼熱砂漠を飲み込んでいた。
風に巻き上げられた砂が肌を打ち、目を開けることすら難しい。
レインは腕で顔をかばいながら叫ぶ。
「サラ!」
返事はない。
「リリア!」
「ここ!」
少し離れた場所から声が返ってくる。
「クロード!」
「無事だ!」
二人の姿は確認できた。
しかし、サラだけが見当たらない。
「くそ……!」
レインは砂嵐の中へ踏み出そうとする。
その腕をリリアが掴んだ。
「待って!」
「今出たら、お前まで迷う!」
「でも!」
「焦るな。」
クロードも真剣な表情だった。
「嵐が止んでから探そう。」
レインは拳を強く握る。
悔しかった。
目の前で仲間を見失ってしまったのだから。
⸻
数十分後。
砂嵐は少しずつ勢いを弱めていった。
視界が開け始める。
だが、周囲の景色は一変していた。
砂丘の形が変わり、目印だった岩場も半分ほど砂に埋まっている。
「地形まで変わった……。」
クロードが息をのむ。
サラが言っていた意味をようやく理解した。
砂嵐は道そのものを消してしまうのだ。
レインは辺りを見回す。
「サラ!」
何度呼んでも返事はない。
その代わり、砂の上に何かが落ちていた。
赤い布。
サラが頭に巻いていたスカーフだった。
「これ……。」
リリアが拾い上げる。
破れてはいない。
血も付いていない。
「連れ去られた?」
クロードが呟く。
レインは首を振った。
「分からない。」
「でも無事だと信じよう。」
⸻
三人は足跡を探し始めた。
砂の上には、かすかに誰かが引きずられたような跡が残っている。
「こっちだ。」
レインが先頭に立つ。
跡をたどると、小さな岩山へたどり着いた。
その裏側には、大きな洞窟が口を開けていた。
「こんな場所があったのか。」
クロードが短剣を抜く。
入口からは熱い風が吹き出している。
「中が熱い。」
リリアも剣を構えた。
レインが魔導書を開く。
するとページが勝手にめくられ、新しい文字が浮かび上がる。
『炎獣の巣』
「炎獣?」
その瞬間。
洞窟の奥から低いうなり声が響いた。
グルルル……。
三人は身構える。
暗闇の中で二つの赤い瞳が光った。
さらに四つ。
六つ。
八つ。
無数の赤い瞳がこちらを見つめている。
「囲まれてる……。」
クロードが息をのむ。
次の瞬間。
巨大な狼のような魔物が炎をまといながら飛び出してきた。
「フレイムウルフ!」
リリアが叫ぶ。
一体ではない。
十体以上の群れが、三人へ一斉に襲いかかる。
「迎え撃つぞ!」
レインは魔導書を掲げる。
海神の宝珠が青く輝き、水の魔力が渦を巻く。
砂漠の洞窟で、新たな戦いの火蓋が切って落とされた。
その頃――。
洞窟のさらに奥。
サラは両手を縛られたまま目を覚ます。
「……ここは。」
目の前には黒いローブをまとった男が立っていた。
男の胸には、黒い翼の紋章。
黒翼教団。
男は静かに笑う。
「目覚めたか。」
「砂漠の案内人。」
サラは鋭く睨み返した。
「あなたたちの目的は何?」
男は答えず、奥にある巨大な扉へ目を向ける。
その扉の隙間からは、赤黒い炎が漏れ出していた。
「もうすぐだ。」
「炎の使徒イグニスが完全に目覚める。」
サラの表情が凍りつく。
レインたちに、その事実を伝える術はなかった。
第44話 炎獣の巣 へ続く。




