第24話 天空神殿
神長い石階段を登り始めてから、およそ一時間。
三人はようやく頂上へたどり着いた。
「はぁ……」
クロードが膝に手をつく。
「こんな階段があるなんて聞いてないぞ。」
「誰も来たことがない場所だからな。」
リリアも息を整えながら苦笑した。
レインは目の前の景色に言葉を失う。
天空神殿。
それは山頂に建てられた巨大な神殿だった。
青白い大理石で造られた柱が何十本も並び、天井のない回廊が空へと続いている。
雲が足元を流れ、まるで空の上に立っているような感覚だった。
「……綺麗だ。」
レインは思わず呟く。
千年前の建物とは思えないほど、美しい姿を保っていた。
⸻
神殿の正面には、高さ五メートルほどの石の扉がある。
中央には古代文字が刻まれていた。
レインが近づくと、《始原の魔導書》が再び光を放つ。
すると。
ギギギギ……。
重い音を立てながら扉がゆっくりと開いた。
「開いた!」
クロードが目を丸くする。
リリアは剣を抜いた。
「警戒しながら進もう。」
三人は慎重に神殿の中へ足を踏み入れる。
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内部は想像以上に広かった。
天井は高く、壁には無数の壁画が描かれている。
レインは足を止めた。
「これ……。」
壁画には七人の魔導士が描かれていた。
中央には魔導書を持つ青年。
その周囲には剣士、槍使い、弓使いなど六人の仲間。
そして、その前には巨大な黒い影。
「魔王……。」
レインが小さく呟く。
壁画の一番下には古代文字が刻まれていた。
魔導書が淡く光る。
自然と意味が頭へ流れ込む。
『世界を救う者は、一人ではない。』
『七つの力は、七つの絆によって完成する。』
レインはその言葉を何度も読み返した。
「七つの絆……。」
リリアが隣へ来る。
「何て書いてある?」
レインは二人へ内容を伝えた。
クロードは腕を組む。
「つまり仲間が必要ってことか。」
「たぶん。」
レインは頷く。
「古代文明の継承者も、一人じゃなかった。」
⸻
さらに奥へ進む。
広い通路を抜けると、大きな円形の部屋へ出た。
部屋の中央には台座があり、その上に青い結晶が浮かんでいる。
《始原の魔導書》が強く輝き始めた。
「これが……。」
レインが一歩近づく。
すると結晶から光が溢れ、一人の女性が姿を現した。
透き通るような青い髪。
白いローブ。
身体は半透明だった。
「ようこそ。」
優しい声が響く。
「継承者。」
クロードは思わず後ずさる。
「ゆ、幽霊?」
女性は少し笑った。
「違います。」
「私は古代文明が残した記憶。」
「この神殿を管理する魔導人格です。」
レインはゆっくり頭を下げた。
「あなたは、この神殿を守っているんですか?」
「はい。」
セレスは静かに頷いた。
「千年もの間、継承者を待ち続けていました。」
その言葉に、レインは胸が熱くなる。
千年。
想像もできない時間だった。
「あなたに渡すものがあります。」
セレスが右手をかざす。
青い結晶が砕け、一つの腕輪が現れた。
銀色に輝く、美しい腕輪だった。
「これは?」
「《天空の腕輪》。」
「七つの遺産の一つです。」
レインが腕輪へ触れた瞬間。
光が身体を包み込む。
頭の中へ新しい知識が流れ込んできた。
風の古代魔法。
空中移動。
魔力感知。
新たな術式が次々と刻まれていく。
「これが……。」
レインは驚きながら腕を見る。
右腕には腕輪が自然とはめられていた。
その時だった。
ドォォン!!
神殿全体が大きく揺れる。
天井から石片が落ちる。
「何だ!?」
リリアが剣を構える。
セレスの表情が初めて曇った。
「侵入者です。」
「黒翼教団……。」
部屋の入口から拍手が聞こえる。
「素晴らしい。」
聞き覚えのある声だった。
ゼノス。
その後ろには十数人の教団員が並んでいる。
「継承者のおかげで、神殿の封印は解かれた。」
ゼノスは静かに笑った。
「感謝するよ。」
レインは一歩前へ出る。
「最初から、それが目的だったのか。」
「もちろん。」
ゼノスは肩をすくめる。
「我々だけでは神殿へ入れなかった。」
「だから君を利用した。」
神殿の空気が一変する。
遺産を巡る戦いが、ついに天空神殿の中で始まろうとしていた。
第25話 天空神殿の決戦 へ続く。




