第23話 三人の連携
白銀の谷に冷たい風が吹き抜ける。
シルヴァが生み出した光の竜は、ゆっくりと翼を広げた。
その姿は本物とほとんど変わらない。
だが、身体は白い光でできており、周囲に淡い粒子を散らしている。
「来るぞ!」
リリアが叫んだ。
次の瞬間、光の竜が空へ舞い上がる。
大きく旋回すると、その口から無数の氷の礫を放った。
「散開!」
レインの声と同時に三人は左右へ飛ぶ。
氷が雪原へ突き刺さり、小さな爆発を起こした。
「威力まで本物かよ!」
クロードが苦笑しながら岩陰へ転がり込む。
「笑ってる場合じゃない!」
リリアはすぐに竜へ向かって駆け出した。
⸻
「俺が前に出る!」
リリアは雪を蹴り、一気に距離を詰める。
竜の前脚が振り下ろされる。
ガァン!
剣で受け止めるが、あまりの重さに膝が沈む。
「くっ……!」
押し返せない。
すると横からクロードが飛び込んだ。
「隙あり!」
短剣を竜の脚へ突き立てる。
だが光の身体はすぐに再生してしまう。
「再生した!?」
「普通の攻撃じゃ意味がない!」
レインは魔導書を開きながら叫んだ。
頭の中に新しい知識が流れ込む。
光で作られた存在。
核を破壊しなければ消えない。
「胸だ!」
「胸の中央に核がある!」
リリアが頷く。
「分かった!」
⸻
光の竜は再び空へ飛び上がる。
今度は急降下。
狙いはレインだった。
「レイン!」
クロードが叫ぶ。
レインは魔力を集中させる。
「《蒼雷の壁》!」
青い障壁が展開される。
ドォン!
竜の突進を受け止める。
しかし障壁には大きな亀裂が入った。
「長くは持たない……!」
レインは歯を食いしばる。
その時。
リリアが竜の背中へ飛び乗った。
「クロード!」
「任せろ!」
クロードは地面を蹴り、リリアへ向かって跳ぶ。
「行け!」
リリアが剣を足場代わりに差し出す。
クロードはそこを踏み切り、さらに高く舞い上がった。
「こんなの初めてだぞ!」
叫びながらも笑っている。
レインは思わず苦笑した。
「あの人らしいな。」
クロードは竜の真正面へ到達する。
「今だ!」
その声に合わせ、リリアも同時に跳んだ。
左右からの挟み撃ち。
しかし。
二人の攻撃は囮だった。
「レイン!」
「決めろ!」
レインは静かに頷く。
魔導書が眩しく輝く。
「《雷穿》!」
一本の細い雷が放たれる。
派手な魔法ではない。
だが、圧縮された雷は一直線に飛び、竜の胸へ吸い込まれた。
パキッ。
小さな音が響く。
次の瞬間。
胸の核にひびが入る。
「今だ!」
リリアの剣が振り下ろされる。
クロードの短剣も同時に突き刺さった。
パリン――。
核が砕け散る。
光の竜は静かに粒子となり、雪空へ溶けていった。
⸻
谷に静寂が戻る。
三人は肩で息をしていた。
「終わった……」
クロードがその場へ座り込む。
「疲れた……。」
リリアも剣を鞘へ納めた。
「でも勝ったな。」
レインは二人を見て笑った。
「一人じゃ無理だった。」
「ありがとう。」
クロードは照れくさそうに頭をかく。
「礼なら神殿を見つけてからにしてくれ。」
リリアも小さく笑う。
「まだ終わりじゃない。」
その時。
シルヴァがゆっくり近づいてきた。
黄金の瞳には、先ほどまでの厳しさはなかった。
「見事だった。」
静かな声が谷に響く。
「力だけではなく、仲間を信じる心も備えている。」
シルヴァは大きく翼を広げる。
すると谷の奥で雪崩のような音が響いた。
ゴゴゴゴ……。
雪が左右へ割れていく。
その先には、長い石造りの階段が現れた。
階段の先には、雲に包まれた巨大な神殿が姿を現す。
青白い柱。
空へ伸びる尖塔。
千年以上もの時を経てもなお、その神秘的な姿は失われていなかった。
「天空神殿……。」
レインは思わず息を呑む。
ついに第二の遺跡が姿を現したのだ。
シルヴァは静かに道を譲る。
「行くがいい、継承者。」
「神殿は、お前たちを待っている。」
レインは仲間たちと顔を見合わせ、小さく頷いた。
三人はゆっくりと石階段を登り始める。
だが神殿の最上部では、誰にも気づかれないように黒いローブの人影が三人を見下ろしていた。
その人物は静かに口元を緩める。
「やはり来たか……。」
黒翼教団は、すでに天空神殿へ先回りしていた。
第24話 天空神殿 へ続く。




