第19話 天空神殿への旅路
王都襲撃から五日後。
壊れた街並みは少しずつ修復され、普段の活気を取り戻し始めていた。
しかし、研究院だけは慌ただしいままだった。
黒翼教団。
七つの遺跡。
魔王復活の可能性。
どれも王国にとって見過ごせない問題だった。
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研究院の会議室。
レイン、リリア、ノア、そして院長エルドが円卓を囲んでいた。
机の上には王国東部の地図が広げられている。
「第二の遺跡、《天空神殿》。」
エルドが地図の一点を指差した。
そこは王国最東端にある「ラグナ山脈」の奥深く。
一年中雪に覆われ、人がほとんど立ち入らない場所だった。
「古代文明の神殿が眠っていると伝えられています。」
ノアが説明を続ける。
「ただし、実際に到達した記録はありません。」
「どうしてですか?」
レインが尋ねる。
「神殿へ続く道が見つからないからです。」
ノアは苦笑した。
「山脈には強力な魔物も多く、途中で引き返した冒険者ばかりでした。」
リリアは地図を眺めながら口を開く。
「つまり、道を探すところから始めるのか。」
「その通りです。」
「黒翼教団より先に到着する必要があります。」
部屋に静かな緊張が流れた。
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会議が終わると、レインは研究院の中庭を歩いていた。
出発は明日の朝。
必要な装備はすでに揃えてある。
あとは気持ちを整理するだけだった。
「ここにいたか。」
振り返ると、ノアだった。
「少し話をしてもいいですか。」
「もちろん。」
二人は庭のベンチに腰を下ろす。
「正直に言います。」
ノアは少し考えてから話し始めた。
「最初、私はあなたを疑っていました。」
レインは苦笑する。
「そうでしょうね。」
「突然、未知の魔力を持つ少年が現れたんですから。」
ノアも少し笑った。
「ですが、王都での戦いを見て考えが変わりました。」
「あなたは力を振りかざす人ではない。」
「守るために使う人です。」
その言葉にレインは少し照れくさくなる。
「そんな立派なものじゃありません。」
「目の前の人を助けたいだけです。」
ノアは立ち上がる。
「それが一番大切なんですよ。」
そう言って、一枚の封筒を差し出した。
「これは?」
「紹介状です。」
「山脈の入口にある町には研究院の協力者がいます。」
「困ったことがあれば、その人を頼ってください。」
レインは丁寧に受け取った。
「ありがとうございます。」
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翌朝。
王都東門。
荷馬車や旅人が行き交う中、レインとリリアは旅支度を終えていた。
エルドとノアも見送りに来ている。
「無理はしないように。」
エルドが穏やかに言う。
「遺跡は逃げません。」
「焦る必要はありませんよ。」
「はい。」
レインは頭を下げた。
ノアも静かに微笑む。
「ですが、黒翼教団より早く着いてください。」
「そこは期待しています。」
「努力します。」
その時だった。
「おーい!」
聞き覚えのある声が響く。
振り向くと、一人の青年が大きく手を振りながら走ってきた。
赤茶色の短髪。
軽装の革鎧。
腰には二本の短剣。
年齢は二十歳くらいだ。
「間に合った!」
息を切らしながら笑う青年に、ノアが驚く。
「君は……。」
「ギルドから来ました!」
青年は胸を張った。
「Bランク冒険者、クロードです!」
レインとリリアは顔を見合わせる。
「えっと……。」
クロードは笑顔のまま続けた。
「院長から話を聞きました。」
「天空神殿の調査、俺も同行します!」
リリアが小声でレインに囁く。
「ずいぶん元気なやつだな。」
「そうだね。」
レインも思わず笑ってしまう。
クロードは人懐っこく手を差し出した。
「これからよろしく!」
レインもその手を握る。
「よろしく。」
こうして三人目の仲間が加わった。
人見知りだったレインの旅は、少しずつ賑やかになっていく。
そして三人は王都を後にした。
誰も知らない天空神殿を目指して。
その旅路の先には、新たな試練と、新たな出会いが待ち受けていた。
第20話 山岳都市エルミナ へ続く。




