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十三の陸と一つの海 ~竜脈争奪戦を終わらせた英雄たちの旅について~  作者: 十方歩
第二章 第十二大陸編 下・地下迷宮の死闘
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戦いの後

 エマーヴァの所在を翼水晶で辿った時と同様、イルアンは誓約の宝珠を通じて黄金竜の方角を知ることができた。五日ほどでその動きが止まったから、どうやら中央大陸の故郷に戻りついたのだろうと想像が着く。


「つまり、呼びかけに応じて駆けつけてくるのにも同じだけ掛かるわけだ。」


 暦の上で誓約の宝珠を転がしながら、イルアンは天井を見上げた。


「エルドー達を見送ってから、もう二十日か。」


 大水晶の山脈から鉱山都市に戻った一行は、新たな鉱脈をもたらした功労者として盛大な歓待を受けた。


(竜脈を辿ったことが知られたら、また面倒に巻き込まれると思ったけど。)


 そんなイルアンの危惧も、シェマーニが機転を利かせてくれたおかげで事なきを得ている。なんでも、自由都市(シンバ)の水流に魔水晶の粒子が混ざっていたのに気づいて、川を遡ったら大水晶に辿り着いた、とかなんとか。


自由都市(シンバ)鉱山都市(ギース)が大水晶を活かす協定を結んだことで、三都市連合は解消。白の森を封鎖していた軍も、撤収を始めています……商業都市(テンナーバ)の面々は、しばらく首が回らないでしょうね。ウィルロ様は、賠償金のほとんどを彼らに求めましたから。」


 久しぶりに顔を出したロメに情勢を教えてもらって、イルアンは第十二大陸に平和が戻ったことを知った。


「セテは、どうしていますか?」

「まだ大水晶のところさ。もう防備は万全だろうが、あそこが気に入ってしまったらしい。」


 工作員はエルドーだけとは限らないからと、セテはもう十日も大水晶の横で警戒の思念を伝え続けている。


『大水晶が警戒態勢にあれば、魔導師を何百人揃えても竜脈を曲げるなんて出来っこないわ。そうなると工作員はその警戒を解くしかない。でも、それには私が掛けたのと同じだけ時間が必要になるのよ。』


 セテは、竜の鱗を持つ者への警戒を解く過程で、大水晶が敵意を剥く際の機序について理解を深めたらしい。二度と竜脈に手を出させまいというその執念には、付き合いの長いイルアンも呆れ顔だ。


「魔草を使えば黒の森とも通話できるから、まったく寂しく無いんだと。そんなわけで、俺とリアネスは二人で留守番ってわけさ。」


 鼻を向けられたリアネスは、軽く肩をすくめた。


「私、ずっと海を越える方法について調べ回っているのよ?一日中、実家で天井を見つめている人と一緒にされたくないわ。」


 イルアンは苦笑しつつ、意地悪く目を細めた。


「で、海を渡る方法は見つかったのかい?」

「う…」


 護衛仲介所の支配人に協力してもらって自由都市(シンバ)をつぶさに調べてみたが、第十一大陸から渡ってきた五番護衛士(ジンラッド)の言葉を解する者は見つからなかった。海を越える者は、数年、いや、数十年に一度も現れないと見て良いだろう。


「すごぉくたまに連絡鳥は行き来しているみたいなんだけど、両側からお金持ちが道楽で飛ばしているだけなのよね。五番さんに読んでもらったけど、内容も日記みたいなのばっか。あっちの大陸がどんな状況かなんて、全然わからないわ。」

「行き来が出来なければ、儲け話も無いし、連絡する理由も無い。道理だな。」


 北方に比べて南方の海は荒い。例え晴天であったとしても、漁船すら沖へ向かわないのだ。

 となると。

 イルアンは机上に転がった宝珠を見つめて眉根を寄せた。


「唯一の希望はこれなんだけど…ウィルロとレミアスは、果たしてこれを割らせてくれるかな。文字通り、大陸の総力をあげて確保した戦利品だ。」

「あの、それについてなのですが、こんなものを預かっていまして。」


 ロメは荷物を掻き分けて書状を取り出すと、二人の前に広げて読み上げ始めた。

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