蠢く企み
「それで、リンツの返答は?」
「はい、それが・・・領民の規制はこちらでやっていただきたい、とのことです。」
「フン、そうか。知らぬ存ぜぬを通すつもりか。」
「では、領民の移動禁止を指示いたしましょうか。」
「まあ待て、それでは儂が恨みを買う。それで、リンツ領で何が起こっている。」
「はい、かの領地では税率を下げ、関所の通行料も引き下げております。また、我が領民が移り住んだことにより、街に活気が出ている様子にございます。」
「待て、税率を下げたと。あの貧乏貴族が、自殺行為ではないか。」
「しかし、領民が多く移住したこともまた、事実であります。」
「あやつら、儂を貶めてどうするつもりだ。」
「分かりません。ただ、私の知っているリンツ領ではない模様。」
「こちらも対抗して税率を、いや、そんなことをすれば・・・クソッ!」
バルタザ-ルは、思わず持っていたカップを壁に投げつける。
「いかがいたしましょう。このまま放置する訳にもいかないと思いますが。もう一度申し入れしてみますか。」
「何度申し入れてもノラリクラリ躱すだけであろう。ここは力の差を見せつける他はあるまい。」
「と、いいますと。」
「武力をもって威嚇するのよ。幸い、兵力も装備もあの貧乏貴族より遙かに上だ。」
「しかし、あそこは血風将軍の、」
「あやつがおればさすがにそんなことは出来ん。しかし、今はおらんだろう?」
「今の当主代行は若いそうです。しかし、私闘はいささか不味いのでは。」
「心配するな。儂と内務卿の仲を知っておろう。何があろうとこちらに不利な裁定が下ることはない。まずは、お心付けからだな。おい、エンリコ、金を準備しろ。帝都に赴く。」
「畏まりました。しかし、大丈夫でしょうか。」
「ああ、最初は示威行動を行い揺さぶりを掛ける。それでも動かんようなら戦を仕掛ける。確かに私闘は禁じられておるが、罪はリンツになすりつければよい。そこは金の力でどうにでもなる。まあ、商人上がりと馬鹿にする諸侯どもも、まさか儂の方から仕掛けたと思うまいし、この際だ、ヤツらに儂の武勇を見せつけておくのも良いだろう、フフフ、フハハハ!」
「戦ですか。確かに相手が血風不在の小勢であれば、あるいは。」
「心配いたすな。勝ち目の無い戦はせぬ。儂が勝負を掛ける時は既に勝敗が決している時、それが商人の戦よ。総身筋肉の貧乏騎士どもに、儂の恐ろしさを存分に味わってもらおう。」
「しかし、それは危険な賭けではございませんでしょうか。」
「エンリコよ、ワシに任せておけば何も心配はいらん。中央との太いパイプはこのような時のためでもあるのだ。」
「畏まりました。それでは、準備の方を進めさせていただきます。」
こうして何かが動き始める。




