楽器を作る
ロスリー金属工業に仮設置している、楽器製造工房にやって来た。
取りあえずはマキシさんの腕前のほどを見てみたかったし、これから作る予定の物も、概念図だけではなく、直接説明する必要がある。
「これを叩きながら形を整えていくのですね。」
「ああ、これがトランペット、これがトロンボーンになる。そしてこれが完成形だ。」
金属工業の工房内で管楽器の製作状況を視察する。
「このトランペットの管体をこの図のように曲げて、このようなピストンを取り付けて欲しい。」
「ほう、そしたらかなりコンパクトになるな。それとこのピストンって何だい?」
「このピストンを押すと空気はこちらの管を通る、同じく真ん中のピストンを押すとこの管、両方押すとその両方に空気が通り、この組み合わせで音階が演奏できる。」
「へえ、トランペットは倍音しか出ないもんだが・・・本当にそんなことできるのか。」
「ええ、そして、ピストン内部はこのように穴が空いており、どこも押していない状態なら、従来の直管のものと管の長さは同じなんだ。」
「面白いな。トロンボーンはスライドを操って管の長さを変えることで音階を出すが、これは違う長さの管の組み合わせでスライドのような効果を生み出すのか。面白いな。それで、ピストン本体は鋳造か?」
「金属削り出しで、それぞれの管に空気を通す穴は後で開ける。」
「トロンボーンは改良しないのか?」
「スライドをそのまま使い、その独特な動きを活かして楽隊の先頭を歩かせたい。目で楽しませるというか・・・」
「そりゃいい考えだ。それで、これが新しい楽器か。」
「これらはみんな真鍮製です。これはクラリネットと同じ吹き口を使いますが、本体は真鍮です。」
「何かゴチャゴチャしてんな。何だいこりゃ。」
「上手く絵が描けなかったんですが、それそれのレバーを押せば、器具で穴が塞がるようにしたい。指で穴を塞ぐのは確実性に欠けるし、早い動きが出来ない。」
「なるほど、小さいバネを使って指を離すと元に戻るようにするんだな。これも木製か?」
「いえ、この機構は真鍮で鋳造すればいいと考えています。」
「まあ、木製の楽器は作ったこと無いけどな。」
「ええ、フルートとこのサックスという楽器を真鍮で作っていただければ、クラリネットの管体は別の木管楽器を専門とする職人にお任せしても良いと考えています。」
「フルートも金属で作るのか?」
「ええ、そうですが。」
「あんた、ホントに面白いな。それとホルンはこれか。まあ、あんまり詳しくはないがな。」
ホルンは一般的なフレンチホルンではなく、メロフォンというピストンバルブ方式ものだが。
「そんでこりゃ、また変わった形だな。でかいし。」
「これは低音楽器。トロンボーンより1オクターブ下の音域を担当する。」
「すげえじゃねえか。誰がそんなことを思いつくんだ?」
「まあ、思いつきではありますけど。それと楽器の吸い口は全て取り外し出来るようにして欲しい、それとこのレバーは唾を抜くものでここに穴が空いてます。」
「そうだな。直管なら勝手に落ちて行くもんな。あと、一体で叩く所と可動する管があるのは何でだい?」
「可動、つまり抜き差し出来る管は本管、1番ピストンで空気が通る管、同じく2番、3番ピストンの管で計四箇所。これは微妙な音程調律のために長さを変えられるようにしているんです。トロンボーンのように自由自在とはいきませんが、そこそこ正確な音程が実現できます。」
「全部、スライドにしちまえば、音程は奏者の腕次第だろうに。」
「ピストン機構を取り入れるのは、運指の早い曲を演奏させたいからです。それに、トランペットならスライド方式は可能ですが、大型楽器では移動量が大きく重くなりますし、腕の長さが足りないと思います。あくまで、行進用の楽器ですので。」
「確かにそうだな。しかし、良く考えられてるな。アンタ、天才か?」
こうして、試作が始まる。




