新商品の数々
今回、複数の工廠が同時稼働したことによって、商品ラインナップはいきなり充実した。
なお、リンツ企業団を結成したことにより、工場は全て「工廠」に呼称を統一した。
ついに、私が社長になった訳である。
ちなみに、名義も帝都で登録した。
これは、父に対抗せざるを得なくなった時に備えた措置である。
まず、化学薬品であるが、石炭からタール、トルエン、ベンゼンが、そしてベンゼンからはクロロベンゼンやフェノールを製造することができる。
また、塩酸、硫酸、アンモニアといった従来からある薬品も大量生産が出来るようになり、さらに他の物質を作ることに使用される。さらに石灰石は炭酸ナトリウムとして、他の鉱物と反応させることでストロンチウムが、生物資源からは木酢液や酢酸、樟脳、ハッカ油、ワックスなどが、鉱物からは化粧品の材料となるマイカや酸化チタン、ドロマイトなどを生産する。
そして瞬く間に綿火薬の製作に成功した。
これを加工すればダイナマイトの完成である。
こうして、石けん、重曹、シャンプー、コンディショナー、口紅やUVカット効果のある化粧品、アロマ製品、ワックス、シンナー、酸素系漂白剤、エーテル、蚊取り線香、防虫剤、化学肥料、オブラートを開発した。
金属精錬工廠では鉄、銅のほか、化学工廠で生産されるセレンとバリウムも管理する。
金属加工工廠では、各種部品、製造ライン、大型機械類、楽器を生産する。
既にボイラーと動力伝達用のシャフトは完成し、ただ今、発電機を製作中である。
そして、現在建設中の精密機械工廠では、オルゴール、時計、測量・製図用器具、羅針盤、測距儀、温度計、望遠鏡、顕微鏡、メトロノームを製造する。
また、兵器工廠、食品加工工廠、製紙工廠は伯爵邸にほど近い、市内北側に建設することが決まった。
まさに企業グループの誕生である。
「しかし、これほどの商品が一度に並ぶと壮観ですな。」
「もちろん、これからもっと凄くなるけどね。」
「生産設備が充実すると、生産量も増え、収益が桁違いとなりますな。」
「うん。まだこれに医薬品や食品が加わると、もう全ラインナップなんて把握できなくなる」
「これがまだ一部とは、お坊ちゃんは世界一の富豪を目指すおつもりで?」
「いや、そこそこでいいんだよ。」
「しかし、これを販売するロスリー商会は大変ですな。」
「まあその分、儲けは莫大なものになるけどね。」
「帝都の店舗への納期も何とかなりそうですしね。」
「そうだね。ダンケルクまで海路、そこから帝都までは陸路だから、エネル商会にも頑張ってもらわないとね。」
「しかし、何で海路なのです?」
「これから取引量が増えると、大量輸送が必要になるからね。その場合は船が有利だし、エネルも陸より海が得意なようだし・・・」
「そうですか。陸は競合相手も多いでしょうからな。いずれにしても、帝都民の驚く顔が目に浮かびますな。」
オーパーツをたくさん生み出してしまったからねえ・・・




