疲れ果てて帰途に着く
まあ、何かいろいろありました。
各採用者にはロスリーまでの旅費を支給し、来た際には市役所か隣の政庁を訪ねるよう伝え、帰路についた。
また、ロスリー商会帝都支店の場所も決まった。
一番の目抜き通りではないが、南大通り沿いのなかなか綺麗な3階建ての物件である。
「帝都なのに、支店なんですね。」
「帝都ですら支店、と言ってもらいたいですね。そういう気概を持っております。」
「なるほど、矜持というものですね。」
「ええ、私共も、ただ馬鹿にされるだけで終わりたくありませんし。でも、よろしかったのですか?もう何日か滞在して伯爵様や奥方様にお会いしても、こちらは一向に構わなかったのですが。」
「いや、特に用はないし。でも伯爵邸は一度見ておいても良かったかもなあ。」
「なんなら、今からでも寄りますか?」
「いや、そんなに興味はないよ。それより、疲れた~。」
「連日の激務、お疲れ様でした。あの後、教科書印刷の契約やアインツホーフェン子爵夫人のお茶会など、いろいろ忙しかったですものね。普通の貴族家令息でこれほど毎日働いている者などおりません。」
「それは、本当に思うよ。だからこそ、豊かにならないといけない。」
「そこは是非、当商会にも一枚噛ませていただきとう存じます。」
「お主も悪よのう。」
「いえいえ、ご領主様ほどでは。」
疲れてんだろうなあ・・・
この後、斬られるんだよなあ。
そして、馬車は帝国東部地方へ
「行きは気づかなかったけど、やはり、帝都周辺と比べると貧しいのが分かるね。」
「ええ、それはやむを得ないと思います。特に北部と東部は帝国内でも後進地として位置づけられておりますので。」
「人はそこそこ住んでいる。作物の実りもさして変わらない。でも何だろう。民の姿がみすぼらしいというか、元気が無い。」
「まあ、帝都周辺は帝室直轄地や公爵領ですから、領主の財力が格段に違いますし、やはり、帝都という大消費地に近い方が、農産物の鮮度や輸送で有利ですからね。保存に向かない商品には高い付加価値も付きますし。これは永遠の課題ですね。」
「これを何とかしないといけないんですね。」
「名代様なら必ずできますよ。そして、そこにはいつもロスリー商会!」
「分かってますよ。」
そして更に東に・・・
「特にこの町、寂れてない?」
「えっ!ご領主様、ここは西隣のシュバイツァー男爵領都、ロプスドールですよ。」
「そうなの?じゃあ、もうすぐロスリーだね。」
「そ、そうですね。」
気にしない、気にしない。




