エルハバード、教育論に熱くなる
ここは帝都の貴族街にあるアインツホーフェン子爵邸。
子爵夫人に教科書を監修いただいた事に対するお礼に参った次第でございます。
「では、こちらに。」
とても丁重に、中へ案内される。こういうの、とても緊張する。
だってほら、マナーとか自信ないし・・・
「初めまして、アインツホーフェン子爵夫人、お会いできて光栄です。私、リンツ伯爵家のエルハバードと申します。本日は突然の訪問にも関わらず、また、先般は不躾な依頼であったにも関わらず快くお引き受けいただき、誠にありがとうございました。本日はお礼方々参った次第でございます。」
「これはご丁寧に。しかし、失礼ですが大変お若いとお見受けいたしますが。」
「はい、今月9才になりました。」
「まあ・・・それは・・・私も殿下の教育係をしておりましたが、失礼ながら殿下と同い年とはとても思えず、驚いております。」
「それは面はゆい、いや、それほどでもございません。」
「いえ、しかもこのような若き御仁が教科書を作り、平民に無料で教育を施すというのは、にわかに信じがたいと思っておりました。でも、こうしてお会いすると・・・納得いたしましたわ。」
「はい、領地の発展には領民の質向上が欠かせません。文字の読解、算術は最低限習得しておかないと、これからの貨幣経済、契約社会の時代に対応できませんので。」
「そう!そうなのです。日常何気ない行動にも、教育の有無は影響しております。人の上に立つ者はもちろん、名も無き民に至るまで、教養は社会を豊かにすることを知るべきなのです。なのに、将来国をしょって立つお立場である殿下が、あのような幼稚なお考えでは!何とも嘆かわしい限りですわ!」
これ以上は、聞いてはいけないような気がする・・・
「ええ、それで読み書きと算術の教科書こそ、まず必要と考えました。」
「ええ・・・ごめんなさい。で、6才からにした理由は?」
「はい。平民の成人年齢は10才から12才が多いため、それまでに教育を施したいと。」
「そうですね。貴族学校は12才からで、まあ、貴族は家庭教師が付きますけど、教師の質に左右されます。教科書を整備して平準化に務めるとともに、遅れている子供を把握することはとても大切です。」
こ、この人プロだ!
「それで、このルールやマナーの目的は?」
「ええ、先ほど夫人が申されたとおり、教養と行動は大いに関連がございます。子供の頃からこれらを徹底することで道徳や振る舞いを教え、治安向上や犯罪抑止に役立てたいと考えます。また、教養を身につけることで中流階級の仲間入りする者だって出てくるはずです。その時に最低限のマナーは必要になって来ます。」
「素晴らしい!素晴らしいわ!あなたのような方が次代を担うなら、帝国も安泰です。それにしても、殿下のあの体たらく、返す返すも嘆かわしい・・・」
ということで、なかなか帰してもらえなかった。
ホントに何があったんだろう・・・




