バルタザ-ル・シュバイツァー
「おい、何だこの数字は!」
「はい、税収の見込みをまとめた」
「そんなことは分かっておる!どうして下がっておるのかと聞いておる!」
「は、はい。ただ今領内の景気は大変落ち込んでおります故・・・」
ご機嫌斜めなのはバルタザ-ル・シュバイツァー男爵。この地の領主である。
そして恐縮しているのが部下のエンリコ・バッセ。准男爵である。
シュバイツァー男爵とは、このバルタザ-ルが一代で築いた家であり、彼自身は商人である。
政府高官に多額の献金を行って人脈を構築し、爵位を得た。
この領地も、没落寸前であった子爵領を安値で買収したものである。
そして、領都ロプスドールは、東部においてはエルリッヒ伯爵家のティグレに次ぐ規模の街であり、この男爵邸も、その爵位に似つかわしくない煌びやかな調度品に囲まれている。
「フン!景気が悪いといえば何でも理由になると思うな!それを良くするのがそちの役目だろうが。」
「目抜き通りの商店も閉める所が相次いでおります。」
「物が売れないのか?何が原因だ。」
「詳しくは分かりませんが、空き家が増えてはいるようです。」
「こないだ帝国銀行のやつらが儂の話を断ってきたな。しかしあれだけでこうはなるまい。」
「ええ、隣のティグレに行けば銀行はある訳ですし・・・」
「伯爵様の領地で何か動きは?そんなに向こうは景気が良いのか?」
「ここを去った領民がどこに行ったかまでは・・・」
「調べろ!この無能が!」
ちなみに、シュバイツァー男爵領の西はエルリッヒ伯爵領、東はリンツ伯爵領である。
彼が伯爵様と呼ぶのは、もちろん寄親であるエルリッヒ伯のことである。
そして、シュバイツァー男爵は国内有数の商会長でもある。
「しかし、伯爵様のご領地で何かあれば、商会ですぐに把握できたはずです。」
「なら帝都に向かったというのか?遠すぎるだろ。」
「では東でしょうか・・・」
「あの未開の地にか?行ってどうする。」
「そうですな、あそこは人より獣の多い土地でした。」
「人に似た何かがたくさんおるようだな。そんなことはどうでも良い、原因をすぐに調べてまいれ。それと何じゃ、何故大麦がこれほど少ない!ライ麦はほどほどで良いとあれほど言ったであろう!百姓への指導はどうなっとる!」
「はっ!すぐ調べ、改めてご報告します。」
「全くどいつもこいつも役に立たん・・・さて、どうしようかのう。領民が訳もなく減るというのはおかしいが・・・何が起きておるのか、どうすれば対抗できるか、それをどう儲けにつなげるか、ピンチはチャンスとも言うからなあ。」
この時代でもそんなことを言うのか。
それはさておき、原因が分かった時、どう転ぶか。




