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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第96話 誰が倒したのか

美月がギルドを出てから――


 しばらくの間。


 冒険者ギルドの一室では、数人の職員が一つの魔石を囲んでいた。


「…………」


 机の上に置かれているのは、先ほど美月が持ってきた魔石。


 通常の魔石と比べても明らかに大きい。その大きさだけでも、普通の魔石ではないことが分かる。


 さらに――


 魔石の内部には、濃密な魔力が凝縮されているように見える。専門家でなくても、違和感を覚えるほどだった。


 しかし。


 見た目以上に異常だったのは――


 その魔石を、誰一人として正確に鑑定できないことだった。


「……もう一度、お願いします」


「はい」


 鑑定担当の職員が魔石へ手をかざす。


「《鑑定》」


 しばらく待つ。


 けれど――


「…………」


 結果は表示されない。


「……駄目です」


「こちらも試してみます」


 別の職員が魔石を鑑定する。


 その職員の鑑定スキルは――


 レベル4。


 ギルド内でも、かなり高い鑑定能力を持つ職員だった。


「《鑑定》」


「…………」


 やはり。


「……何も見えません」


 職員たちは顔を見合わせる。


「……鑑定レベル4でも、やっぱり駄目か」


「はい」


「支部長のレベル5でも駄目だったからな……」


「…………」


 誰も何も言えなかった。


「魔力含有量は?」


「表示されません」


「魔力純度は?」


「それもです」


「品質は?」


「……同じです」


 誰も、魔石の情報を読み取れない。


 それどころか――


 何が原因なのかすら分からない。


「こんな魔石……」


 一人の職員が小さく呟く。


「今まで見たことがありません」


「私もです」


 別の職員も頷く。


 ギルドには、これまで数え切れないほどの魔石が持ち込まれてきた。


 FランクからSランクまで。様々なダンジョン。様々な魔物。


 その中には、非常に高品質な魔石もあった。


 しかし――


 鑑定そのものができない魔石など、存在しなかった。


「……支部長の鑑定でも、見えなかったんですよね?」


「ああ」


 職員の一人が答える。


「鑑定Lv.5でも、何も表示されなかった」


「…………」


 その言葉に、部屋が静かになる。


 鑑定スキルLv.5。それは、この支部長が持つ最高クラスの鑑定能力だった。


 Lv.4ですら、かなり優秀な鑑定能力。それを上回るLv.5。


 通常の魔石なら、かなり細かな情報まで読み取ることができる。


 それでも――


 この魔石には通用しなかった。


「……本当に、何なんだ?」


 誰かが呟く。答える者はいなかった。


     ◇


 その後。


 支部長は、過去の魔石データを集めさせた。


「Aランクダンジョンの高品質魔石を持ってこい」


「はい」


「Sランク級の魔石も」


「分かりました」


 いくつもの魔石が運ばれてくる。机の上に並べられた魔石と、今回の魔石を比較する。


 大きさ。魔力含有量。魔力純度。品質。


 通常なら、鑑定結果を比較すれば違いは明確に分かる。


 しかし――


「…………」


 今回の魔石だけは、数値が出ない。比較すらできなかった。


「……基準がない」


 支部長が呟く。


「はい」


「通常の魔石と同じ基準で扱うこと自体が難しいな」


 職員も答えられない。


 これまで積み重ねてきた魔石のデータ。それらは全て、鑑定できることを前提に作られている。


 けれど。目の前の魔石には、その前提が通用しない。


     ◇


 その日のうちに。


 支部長は上層部へ報告を送った。内容は簡潔だった。


 ――鑑定スキルLv.5でも鑑定不能。


 ――魔力含有量、魔力純度ともに測定不能。


 ――通常の査定基準では価値を判断できない。


 ――入手経路については、持ち込んだ冒険者から詳細を確認できず。


 報告を受けた上層部も、すぐには判断できなかった。


「鑑定Lv.5でも?」


「はい」


「本当に?」


「間違いありません」


「……そんな魔石が存在するのか」


「現時点では、判断できません」


 しばらく沈黙が続く。


「……さらに調査が必要だな」


「はい」


「より高い鑑定能力を持つ者を探せ」


「分かりました」


 こうして――


 一つの魔石を巡る調査が始まった。


     ◇


 夜。


 支部長は、一人で保管室にいた。


 目の前には、厳重に保管された魔石。


「…………」


 手を伸ばし、ゆっくりと持ち上げる。鑑定する。


「《鑑定》」


 ――何も見えない。


 支部長は静かに息を吐いた。


「…………」


 この魔石が何なのか。どこで生まれたのか。どれほどの魔物から取れたものなのか。


 何一つ分からない。


 ただ一つだけ、確かなことがある。


 これほどの魔石を生み出す魔物が――


 どこかに存在していた。


 そして。


 その魔物は――


 誰かに倒された。


 支部長は魔石を見つめる。


「……一体、誰がこの魔石の魔物を倒したのか?」


 その答えを知る者は――


 まだ、誰もいなかった。

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