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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第93話 スマホデビュー

魔石の話が一段落したあと。


 美月は、ふと蓮を見る。


「……そういえば」


「……?」


「蓮って、スマホ持ってないよね?」


「……スマホ?」


 蓮が首を傾げる。その反応を見て、美月は少しだけ目を見開いた。


「……そっか」


「……?」


「蓮は知らないんだ」


「……何を?」


「スマホ」


 美月は自分のスマホを手に取る。


「スマートフォン。今はこれが携帯電話みたいなものなの」


 蓮は、美月の手元をじっと見る。


「……携帯電話?」


「うん」


「……それなら知ってる」


 美月は少し笑った。


「でも、蓮が知ってる携帯電話とは、かなり違うよ」


「……そうなのか?」


「うん」


 美月は画面を操作する。


「電話もできるし、メッセージも送れる。写真も撮れるし、インターネットも見られる」


「…………」


 蓮は黙って画面を見つめていた。


「……これが、今の携帯電話なのか」


「そう」


 そこで美月は気づいた。


 蓮がいなくなったのは、十年前。当時は携帯電話こそあった。


 けれど――


 今のようなスマートフォンは、まだ一般的ではなかった。


「……そりゃ、知らないよね」


「……?」


「蓮がいなくなった頃は、まだスマホなんてなかったから」


「……そうなのか」


「うん」


 美月は少し考えてから言った。


「じゃあ、蓮も持ったほうがいいね」


「……俺が?」


「うん」


 美月はスマホを見せる。


「これから私と連絡するために」


「…………」


 蓮は少しだけスマホを見る。


「……必要なのか?」


「必要だよ」


 美月は笑う。


「私が出かけてるときも連絡できるし、何かあったときにも連絡できるから」


「……分かった」


 蓮は素直に頷いた。


「じゃあ、買いに行こうか」


「……うん」


 二人は携帯ショップへ向かった。


 店内。店員がいくつかの機種を並べて説明する。


「こちらは最新機種で、カメラの性能が――」


「…………」


「こちらは大容量のストレージを搭載していて――」


「…………」


「料金プランはこちらが――」


「…………」


 蓮は黙って説明を聞いていた。


 けれど――


 ほとんど理解できていない。


 十年前。蓮が知っていた携帯電話とは、電話やメールをするためのものだった。


 それが今では、できることが多すぎる。


「……蓮、大丈夫?」


「……分からない」


 美月は思わず笑ってしまう。


「だよね」


 美月は店員にいくつか質問する。


 そして――


「じゃあ、この機種にしよう」


「こちらですね」


「うん。蓮にはこれくらいで十分だと思う」


「……そうなのか?」


「うん」


 必要な機能があり、操作も比較的分かりやすい。美月は、蓮が使いやすそうなシンプルな機種を選んだ。


「では、契約のお手続きを進めますね」


 店員が確認事項を説明していく。


「ご本人様確認のできるものはございますか?」


「はい」


 美月がすぐに答え、自分の身分証を取り出す。


「こちらでお願いします」


「ありがとうございます」


 店員が身分証を確認する。蓮は、その様子を黙って見ていた。


 今回の契約は、美月が自分で手続きをする。


「では、こちらにご記入をお願いします」


「はい」


 美月が必要な書類に記入していく。蓮は隣で、その様子を見ていた。


「……悪い」


「気にしなくていいよ」


 美月は笑う。


「蓮と連絡するために必要なんだから」


「……うん」


 そして――


 手続きが終わった。


 店員からスマホを受け取る。


「こちらになります」


 蓮は両手でスマホを受け取った。


 薄い。軽い。昔の携帯電話とは、まるで違う。


「……これが」


 蓮は手の中の端末を見る。


「……スマホ」


「そうだよ」


 美月が笑う。


「蓮のスマホ」


 家へ戻ると、美月が初期設定を始める。


「まずは電源を入れて……」


「……うん」


「ここを押して」


「……これ?」


「そう」


 画面が明るくなる。


「……」


 蓮は少し驚いたように目を見開く。


「……すごい」


「ふふっ」


 美月は笑う。


「そんなに?」


「……うん」


 美月は基本的な操作を一つずつ教えていく。


「電話はここ」


「……うん」


「メッセージはこっち」


「……分かった」


「それから――」


 美月は連絡先を開く。


「まず私を登録しよう」


「……美月?」


「うん」


 美月の名前を登録する。蓮のスマホに、初めて入った連絡先だった。


「これで、いつでも私に連絡できるよ」


「……いつでも?」


「うん」


 蓮は画面を見る。


 そこに表示された――


 神崎美月


 その名前を、しばらく眺めていた。


「……分かった」


 小さく頷く。美月は、その様子を見て微笑んだ。


「じゃあ、次はこれ」


「……?」


 美月がアプリを開く。


「ゲーム」


「……ゲーム?」


「うん。スマホにはゲームも入れられるんだよ」


 美月はいくつかのゲームを見せる。


「これなんか、簡単だし面白いと思う」


「…………」


「入れてみる?」


「……うん」


 美月がゲームをインストールする。


 しばらくして――


 画面にゲームの映像が映し出された。


「…………」


 蓮は動きを止めた。


「……これ」


「うん?」


「……ゲームなのか?」


「そうだよ」


 画面の中では、まるで本物のようなキャラクターが動いている。


 背景も。光も。建物も。


 細かな動きまで、現実と見間違えそうなほど綺麗だった。


「……綺麗だな」


「最近のゲームはすごいでしょ」


「……本物みたいだ」


 蓮は画面から目を離さない。


「じゃあ、操作してみようか」


「……どうする?」


「ここを触るの」


「……ここ?」


「そう」


 美月が横から教える。蓮は言われた通りに画面を操作した。


 キャラクターが動く。


「……動いた」


「ふふっ」


「……もう一回」


「いいよ」


 蓮は再び操作する。


 最初はぎこちなかった。


 けれど――


 少しずつ慣れていく。


「……こうか」


「そうそう」


「……できた」


「上手じゃん」


「……もう一回」


「蓮、さっきからずっとやってるよ?」


「……あと一回」


「ふふっ」


 美月は笑った。


 蓮は真剣な表情で画面を見つめている。まるでダンジョンで戦っているときのような集中力だった。


 ただし――


 今、蓮が戦っている相手はモンスターではない。


 スマホのゲームだった。


 十年間。蓮はゲームで遊ぶことなんてなかった。誰かと笑いながら過ごすこともなかった。


 それが今は――


 小さな画面を見ながら、夢中になっている。


「……あと少し」


 蓮が呟く。その横で、美月は笑っていた。


 そんな蓮を見るのが――


 少し嬉しかった。


 十年ぶりに帰ってきた蓮の毎日に。


 また一つ。


 普通の時間が増えていた。

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― 新着の感想 ―
スマフォは2008から売られてるし、ガラケー時代にもインタネットは見れたし、メールできたよ。 ゲームもクオリティ低いけど、モバゲーあったし、私は2008年はなネット小説をモバゲー投稿開始してますからね…
淡々と話が進むけど、 スマホよりやることあんでしょ、と思ったり。 戸籍どーなってるとかさ、やることあんでしょと大人的には思っちゃう 笑 AIのなせる技ですかね、しょうがないのかな
iPhone3GSが2009年だしなあ
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