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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第一部 10年ぶりの帰還

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第83話 帰還への道

蓮は、ゆっくりと扉を開いた。


 ――ゴゴゴゴゴゴッ。


 重い音を響かせながら、巨大な扉が左右へ開いていく。


 その先には――


 広い部屋が広がっていた。


「……」


 蓮は慎重に中へ入る。


 今までの階層とは、明らかに違う。


 壁も床も、見たことのない素材で造られている。


 魔物の気配はない。


 静かだった。


 あまりにも静かすぎる。


「……何なんだ、ここ」


 蓮は周囲を見渡す。


 すると――


 部屋の中央に、一つの宝箱が置かれていることに気づいた。


「……宝箱?」


 蓮は警戒しながら近づいていく。


 念のため、《鑑定》を使う。


『名称:宝箱』


『種別:宝箱』


『状態:良好』


『罠:なし』


「……罠はないか」


 蓮は宝箱へ手を伸ばす。


 そして、ゆっくりと蓋を開いた。


 中に入っていたのは――


 一つの小さな瓶だった。


 透明な瓶の中に、淡い光を放つ液体が入っている。


「……薬?」


 蓮は瓶を手に取る。


 そして《鑑定》を使った。


『名称:霊薬』


『種別:ポーション』


『状態:良好』


『効果:あらゆる傷・状態異常を完全に治癒する』


『蘇生効果:死亡から10分以内の人間を蘇生する』


「……蘇生?」


 蓮の表情が変わった。


 表示をもう一度確認する。


「死んだ人間を……生き返らせる?」


 そんなものが存在するとは思わなかった。


 蓮は瓶を見つめる。


 これまで見つけてきた薬とは、根本的に違う。


 傷を治すだけではない。


 死者すら、生き返らせる。


「……凄いな」


 蓮は霊薬を《アイテムボックス》へ収納した。


『霊薬を収納しました』


「……これで終わりか?」


 蓮は部屋の中を見回した。


 宝箱は一つ。


 中に入っていたのも、霊薬一つだけ。


 他には何もない。


「…………」


 百階層。


 古龍を倒した先にあった部屋。


 そこで手に入れたのが、この霊薬。


 なら――


 これで、このダンジョンは終わりなのだろうか。


 蓮がそう考えた、そのときだった。


 ――キィィィン……。


「……?」


 小さな音が部屋に響いた。


 蓮はすぐに周囲を見渡す。


 魔物の気配はない。


 だが。


 部屋の奥で、何かが光り始めていた。


「……光?」


 何もなかった空間に。


 淡い光が集まっていく。


 最初は小さかった。


 けれど。


 少しずつ。


 少しずつ。


 光は大きくなっていく。


「…………」


 やがて。


 人一人が通れるほどの大きさになった。


 白い光。


 その向こう側は見えない。


 蓮は警戒しながら近づいていく。


「《鑑定》」


 視界に情報が現れた。


『名称:ダンジョン出口』


『種別:出口』


『状態:正常』


『出現条件:100階層守護者の討伐』


『詳細:ダンジョン外部へ接続された出口』


「…………」


 蓮の足が止まった。


 もう一度。


 表示された文字を見る。


『ダンジョン外部へ接続された出口』


「……外?」


 思わず。


 声が漏れた。


 蓮は光を見つめる。


 外。


 その言葉を。


 何度考えただろう。


 このダンジョンへ入ってから。


 何度も。


 何度も。


 外へ出たいと思った。


 けれど。


 どれだけ歩いても。


 どれだけ階層を進んでも。


 出口は見つからなかった。


 やがて。


 生きることだけで精一杯になった。


 次の階層へ進む。


 魔物を倒す。


 食料を確保する。


 眠る。


 また戦う。


 それを。


 十年間。


 繰り返してきた。


「……本当に」


 蓮はゆっくりと光へ近づいた。


「外に……出られるのか」


 光は何も答えない。


 ただ。


 静かに揺らめいている。


 手を伸ばせば届く距離。


 あと数歩進めば。


 その中へ入れる。


「…………」


 それなのに。


 蓮の足は止まっていた。


 十年。


 あまりにも長かった。


 十五歳だった自分が。


 二十五歳になるまで。


 ずっと。


 このダンジョンで生きてきた。


 何度も傷ついた。


 何度も死にかけた。


 それでも。


 ここまで来た。


「……終わったんだ」


 蓮は小さく呟いた。


 もう。


 次の階層はない。


 もう。


 先へ進む必要もない。


 この光を抜ければ。


 外へ帰れる。


 蓮はゆっくりと一歩を踏み出した。


 光へ近づく。


 あと少し。


 その先にあるのは――


 十年間。


 一度も見ることのできなかった世界。


 蓮は光の前で立ち止まった。


「…………」


 そして。


 ゆっくりと手を伸ばした。


 指先が。


 白い光へ触れた。

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