第82話 守護者の先
100階層に、静寂が戻っていた。
蓮の目の前には、古龍の巨体が横たわっている。
先ほどまで激しい戦いを繰り広げていたとは思えないほど、辺りは静まり返っていた。
「……本当に、倒したんだな」
蓮は魔剣を下ろした。
少し前まで、古龍は自分より強かった。
《龍鱗》。
《飛行》。
《身体強化》。
《魔力操作》。
《火魔法》。
《風魔法》。
《雷魔法》。
《自己再生》。
《竜の咆哮》。
《龍の威圧》。
そして――
《ブレス》。
数多くの強力なスキルを持つ古龍。
実際、蓮は一度敗れた。
致命傷を受け、指輪に命を肩代わりしてもらった。
その死の淵で――
《無限成長》と《生存適応》が融合した。
そして生まれたのが――
《超越者》。
「……」
蓮は自分の手を見る。
身体の奥から、今までとは明らかに違う力を感じる。
「鑑定」
視界に表示が浮かんだ。
『名前:黒瀬 蓮』
『年齢:25歳』
『種族:人間』
『レベル:650』
『HP:500,000/500,000』
『MP:450,000/450,000』
『筋力:600,000』
『防御:550,000』
『敏捷:750,000』
『魔力:700,000』
『スキル』
『《超越者》』
『《鑑定》EX』
『《身体強化》EX』
『《魔力操作》EX』
『《魔力感知》EX』
『《アイテムボックス》EX』
『《剣術》EX』
『《気配察知》EX』
『《危機察知》EX』
『《状態異常耐性》EX』
『《火魔法》EX』
『《水魔法》EX』
『《風魔法》EX』
『《木魔法》EX』
『《土魔法》EX』
『《雷魔法》EX』
『《光魔法》EX』
『《高速自己再生》EX』
「……Lv.650」
戦う前は、Lv.550だった。
それが今は650。
蓮はさらにステータスへ目を向ける。
戦う前の数値を思い出す。
HPは180,000。
MPは150,000。
筋力は220,000。
防御は200,000。
敏捷は260,000。
魔力は240,000。
それが今は――
HP、500,000。
MP、450,000。
筋力、600,000。
防御、550,000。
敏捷、750,000。
魔力、700,000。
「……凄いな」
レベルが100上がった。
だが、それだけではない。
すべての能力が、戦う前とは比べものにならないほど上昇している。
そして、スキルにも変化があった。
これまでLv.10だった魔法。
そして、もともと持っていた《高速自己再生》。
それらも今は、すべてEXへ到達している。
「……これが、《超越者》の力か」
蓮は新たなスキルへ意識を向ける。
「鑑定」
表示が切り替わった。
『名称:《超越者》』
『種別:固有スキル』
『効果:自身の成長・能力・適応に存在するあらゆる限界を超越する』
『《無限成長》と《生存適応》の融合によって発現』
『成長限界を持たない』
『極限状態において、対象に必要な能力・適応・成長を自動的に獲得する』
蓮は表示を見つめる。
《無限成長》。
《生存適応》。
これまで自分を支えてきた二つのスキル。
それが一つになった。
限界を超えて成長し、生き残るために必要な力を身につける。
それが――
《超越者》だった。
「……これなら、もっと強くなれる」
蓮は魔剣を握る。
刀身へ魔力を流す。
魔力は、蓮の意思に応えるように滑らかに流れていく。
以前とは比べものにならない。
魔力を操る感覚そのものが変わっていた。
蓮は魔剣を収める。
「……これも持っていくか」
蓮は古龍の巨体へ手を向ける。
「《アイテムボックス》」
次の瞬間――
古龍の巨体が淡い光に包まれ、そのまま消えていった。
蓮は《アイテムボックス》の中を確認する。
収納された古龍の身体は、すでに素材ごとに解体され、種類別に整理されていた。
『収納物を確認』
『対象:古龍』
『素材の自動判別を開始します』
『素材の自動解体を開始します』
『素材の自動分類を開始します』
そして――
『解体・分類完了』
『古龍の鱗:312枚』
『古龍の爪:18本』
『古龍の牙:24本』
『古龍の角:2本』
『古龍の皮:1体分』
『古龍の肉:1体分』
『古龍の血:大量』
『古龍の骨:1体分』
『古龍の魔石:1個』
蓮は表示を確認する。
「これだけあれば十分だな」
《アイテムボックス》EXの効果によって、古龍の身体は自動的に解体され、素材ごとに分類されている。
「後で、ゆっくり確認するか」
蓮は《アイテムボックス》を閉じた。
そして――
100階層を見渡す。
古龍が倒れていた場所。
そこには、何もなかった。
そのとき――
――ゴゴゴゴゴゴッ。
「……?」
地面が大きく揺れた。
蓮はすぐに身構える。
すると、古龍が倒れていた場所の奥。
何もなかったはずの岩壁に、亀裂が走った。
――バキッ。
亀裂が広がっていく。
岩壁がゆっくりと左右へ開いていく。
その奥から――
一つの巨大な扉が姿を現した。
「……扉?」
蓮は目を細める。
まるで、古龍が倒されたことをきっかけに、隠されていたものが現れたようだった。
蓮は扉へ近づく。
そして《鑑定》を使った。
『名称:扉』
『種別:扉』
『状態:良好』
『材質:特殊金属』
『魔力耐性:極高』
『詳細:100階層の守護者討伐により出現』
「……」
蓮は表示を見つめる。
古龍を倒したことで、この扉が現れた。
それだけは間違いない。
「……この先に、何があるんだ?」
蓮は扉を見上げる。
《鑑定》EXでも、扉の先までは確認できない。
だが――
ここまで来た以上、確かめるしかない。
蓮は魔剣を握り直す。
「……行ってみるか」
そして、巨大な扉へ手を伸ばした。




